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2012年3月 1日 (木)

我が国の企業部門は円高でいかにダメージを受けたか?

本日、財務省から昨年10-12月期の法人企業統計が発表されました。注目の設備投資は被災した生産設備の復旧を中心に増加しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資7.6%増 震災復旧で3期ぶりプラス
10-12月法人企業統計

財務省が1日発表した2011年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比7.6%増の9兆9442億円となり、3四半期ぶりに増えた。東日本大震災で被災した生産設備の復旧が中心。全産業の売上高は1.3%、経常利益は10.3%それぞれ減少し、3期連続の減収減益となった。
資本金1000万円以上の企業の仮決算をまとめた。設備投資はほぼすべて国内向けで、新興国向けを中心に好調な海外投資は含まない。
産業別に投資動向をみると、製造業の設備投資は5.7%増。輸送用機械は自動車製造設備の復旧などで3期ぶりに増えた。化学もインフルエンザワクチン工場などの投資を拡大した。鉄鋼は円高などの不透明感から投資を抑えた。
非製造業は8.6%増。コンビニエンスストアが出店を増やしたほか、建設業による工事用船舶の購入が増えた。
設備投資(ソフトウエアを除く)は前期比では季節調整済みで11.9%増。5期ぶりのプラスで、財務省は「企業の設備投資に明るい兆しがみられる」と判断した。
今回の結果は内閣府が8日に発表する10-12月期の国内総生産(GDP)改定値に反映される。

続いて、法人企業統計のヘッドラインとなる売上高、経常利益、設備投資のグラフは以下の通りです。上のパネルが売上高と経常利益、下が設備投資で、いずれも縦軸の単位は兆円、影をつけた部分は景気後退期です。季節調整済みの系列をプロットしていますので、上に引用した報道と少し印象が異なる可能性があります。

法人企業統計の推移

統計のヘッドラインについての評価は難しいところなんですが、私は少しネガティブに受け止めています。設備投資は季節調整していない原系列の前年同期比も、季節調整済みの系列の前期比もともにプラスなんですが、引用した記事にもある通り、震災復旧の要素が大きいのであれば、そのまま受け取るのも少し抵抗があります。いずれにせよ、製造業を中心に円高がジワジワと企業部門にダメージを与えている可能性を憂慮しています。昨夜のエントリーでも強調しましたが、非製造業も含めて、我が国の企業収益への円高のダメージは無視できない水準に達しつつあると私は考えています。

労働分配率と損益分岐点の推移

法人企業統計のヘッドラインとは別に、インプリシットに計算できる指標を2点ほどグラフにプロットすると上の通りです。労働分配率と損益分岐点です。労働分配率は人件費を分子に置き、経常利益と減価償却と人件費の和で除して比率を出しており、他方、損益分岐点比率は人件費、減価償却費、支払利息等を固定費としてカウントし、大雑把に、売上から固定費を除いた比率として算出しています。いずれも、コンポーネントが季節調整していない系列ばかりですので、後方4四半期移動平均でならしています。昨年中は震災が1-3月期の終わりころに発生し、かなりイレギュラーな動きを示しているのは確かですが、損益分岐点はかなり明瞭に下げ止まりそうな動きを示している一方で、労働分配率もかすかに低下の兆しを見せています。

2009年度1人当たり県民所得

法人企業統計を離れて、昨日、内閣府から2009年度の県民経済計算が発表されています。いつも注目されるのは1人当たりの県民所得なんですが、上のグラフの通り、リーマン・ショック直後の景気の大きな落ち込みの中で、東京都が大幅に減少しつつもダントツの首位はキープし、目を下位県に転じると、沖縄が最下位を脱して高知と入れ代わっています。全国平均は279万円くらいですから、京都府と三重県の間あたりに位置します。

最後に、再び法人企業統計に戻ると、来週発表のGDP10-12月期2次QEの設備投資は1次QEの前期比+1.9%増から大幅に上方修正される可能性が高いと私は考えています。1次QEの際のGDP成長率は前期比▲0.6%のマイナス成長でしたが、このマイナス幅はかなり大きく縮小され、場合によってはゼロ近傍まで引き上げられると予想しています。なお、シンクタンクなどの2次QE予想については来週にでも日を改めて取り上げる予定です。

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