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2012年3月30日 (金)

政府統計から緩やかな景気の回復を確認する!

今日は月末閣議日で2月の政府統計の集中発表日でした。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率と厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、総務省統計局から消費者物価が、それぞれ発表されています。全体として、日本経済が緩やかな景気の回復局面にあることを確認する内容と受け止めています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産2月は1.2%低下 3カ月ぶりマイナス
経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)速報値は94.1と、前月比1.2%低下した。マイナスは3カ月ぶり。昨秋のタイの洪水による減産を取り戻す動きが一巡した。自動車などの生産は高水準を保っており、3月からは再び増産に転じる見込みだ。同省は生産は「持ち直しの動き」との基調判断を維持した。
2月は全16業種のうち12業種がマイナスだった。普通乗用車や軽乗用車が伸び悩み、輸送機械工業は2.6%低下。携帯電話の新機種生産の反動が出た情報通信機械工業も8.9%下がった。「タイの洪水で落ち込んだ分の挽回増産の動きはほぼ収まった」(同省)という。
一方、鉄鋼業は自動車向けが伸び3.4%上昇。電子部品・デバイス工業も高機能携帯電話(スマートフォン)用の半導体などが好調で、前月を6.9%上回った。
生産指数は市場の事前予測(1.3%上昇)に反して低下した。化学工業の工場の定期修理が長引いたほか、電気機械工業で納期がずれ込んだことが響いた。また「うるう年の影響で季節調整値が低めに出やすい」(同省)という。
同日発表した3月の製造工業生産予測調査によると、3月は2.6%、4月は0.7%の上昇を見込む。主力の輸送機械工業が人気車種の生産を伸ばすほか、世界的に在庫調整が進む電子部品・デバイス工業も増産する見通しだ。
2月の完全失業率4.5% 0.1ポイント改善
総務省が30日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント改善し、4.5%となった。改善は5カ月ぶり。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は0.75倍で、前月比0.02ポイント上昇した。東日本大震災の復興需要などを背景に雇用情勢は持ち直しが続いている。ただ、一部業種では製造拠点の海外移転など雇用調整の動きもあり、先行きは不透明だ。
就業者数は前月比29万人(0.5%)増の6288万人、完全失業者数は298万人で7万人(2.3%)減少した。勤め先の都合などによる「非自発的な離職者」は5万人減の104万人だった。総務省は「増えていた求職者が職を得た可能性がある」と分析している。
厚労省がまとめた2月のハローワークでの職業紹介状況によると、雇用の先行指標となる新規求人数は前月比0.3%減の70万人だった。製造業では、自動車など輸送用機械で新規求人が増える一方、円高の影響などで電子部品などは減る傾向が続いている。新規求人倍率は0.07ポイント上昇し、1.27倍だった。
2月の消費者物価0.1%上昇 5カ月ぶりプラスに
総務省が30日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.5となり、前年同月比0.1%上昇した。プラスは5カ月ぶり。原油高などを背景にガソリン価格が上昇したほか、値下がりが続いていたテレビの価格が新製品効果で上向いたことが影響した。
テレビは0.5%上昇した。地上デジタル放送への移行後の販売不振で値下げ競争が広がっていたが、2月は価格の高い新製品の投入効果が下支えした。エネルギー価格は上昇が続いた。ガソリン価格は3.4%、灯油代は4.3%、都市ガス代は8.1%それぞれ上がった。一方、パソコンや冷蔵庫、携帯電話機などは下落した。
ハウス野菜の値上がりで、生鮮食品を含むベースでは0.3%上昇した。プラスは2カ月連続。食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)は0.6%下落した。
先行指標とされる東京都区部の3月のCPI(中間速報値)は生鮮食品を除くベースで0.3%下落した。テレビも11%下がっており、総務省は「2月のテレビ価格の上昇は新製品による一時的なもの」とみている。ガソリン価格の上昇幅は5.6%と、2月(都区部で3.9%)よりも拡大した。

次に、鉱工業生産指数のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下のパネルは財別で輸送機械を除く資本財と耐久消費財の推移です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産指数の推移

生産が減産であったのはややサプライズでしたが、報じられていないものの、私は中国の春節に伴う生産と出荷の時期的なズレによる一時的な現象と受け止めています。すなわち、1月の中国の春節の際に、生産が伸びて出荷が減少し在庫が増加した動きが見られましたが、この逆の動きが後ろ向きの在庫解消のため2月に顕在化したものと考えています。先行きの生産予測指数も順調に上昇するようですし、2月のトリッキーな生産活動の低下は懸念するに及ばないと多くのエコノミストは考えています。

雇用統計の推移

次に、雇用統計は上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。非常に緩やかながら、雇用は着実に回復を示していると私は受け止めています。来週に発表される毎月勤労統計調査で賃金の動向を確認したいと思います。

消費者物価上昇率の推移

次に、上のグラフは消費者物価上昇率の推移です。青い折れ線が生鮮食品を除く総合、いわゆるコア消費者物価の前年同月比上昇率であり、積上げ棒グラフはその寄与度の内訳です。ただし、端数を持った指数を統計局が公表していませんので、小数点以下1位の指数で計算しています。2月の全国消費者物価が上昇に転じたのは、明らかに、テレビの指数算出方法に何らかの異常があり、適正に物価水準を反映していないためであると私は考えています。引用した記事では「新製品効果」と称していますが、東京近辺の家電量販店を見る限り、疑わしいと考えるべきです。従って、灰色の折れ線グラフでプロットした東京都区部のコア消費者物価の動向が実感によりピッタリ来ると受け止めています。雇用の回復が緩慢なため、フィリップス曲線の右下の方から左上のシフトすることが出来ずにいるのが日本経済の姿であると言えます。なお、同時に、2011年の消費者物価地域差指数も公表されています。下のグラフの通りです。なお、地域差指数は政令都市がすべて公表されているんですが、下のグラフには県庁所在市のみを収録しています。全国平均が100となる指数です。横浜が3年連続で物価最高、宮崎が5年連続の最安です。

消費者物価地域差指数

最後に、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通し中間見直し」 OECD Economic Outlook Interim Assessment が公表されています。OECD のプレゼンテーション資料から引用した成長率見通しの表は以下の通りです。今年1-3月期の我が国の成長率は昨年11月時点の見通し+1.8%から+3.4%に大幅に上方修正されました。逆に、4-6月期は+1.8%から+1.4%に下方改定されています。いずれも前期比年率です。OECD の記者発表資料によれば、我が国経済の短期見通しは、"Activity in Japan is projected to rebound strongly in the first quarter, thanks in part to firmer industrial production, which was adversely affected by external shocks in late 2011, and a weaker yen. Second quarter growth is projected to be more moderate." とされています。円安の効果は絶大です。

OECD Economic Outlook Interim Assessment

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