緩やかな改善の雇用統計と日銀のインフレ目標からまだ遠い消費者物価
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されました。いずれも1月の統計です。まず、日経新聞のサイトから両統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。
失業率、1月は4.6%に小幅悪化 求人倍率は改善
総務省が2日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化し、4.6%となった。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は0.73倍で、前月比0.02ポイント上昇した。東日本大震災後に雇用情勢は持ち直しの傾向が続いているが、円高や海外経済の減速の影響により製造業を中心に雇用を調整する動きも出ている。
完全失業者数は305万人で前月よりも9万人(3%)増加。うち女性が120万人で、10万人増えた。「新たに仕事を探し始めた女性が増えたことが失業率の押し上げにつながった」(総務省)という。
厚労省がまとめた1月のハローワークでの職業紹介状況によると、雇用の先行指標となる新規求人数は1.2%増の70万人。製造業では、自動車など輸送用機械で新規求人が増えたが、円高の影響などで電子部品などでは大幅に減少した。新規求人倍率は0.02ポイント増の1.20倍だった。
消費者物価、1月は0.1%下落 テレビなど値下がり続く
総務省が2日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.3となり、前年同月比0.1%下落した。マイナスは4カ月連続。テレビや冷蔵庫の値下がりが続いた。
テレビの価格は36%下落した。地上デジタル放送への移行後の販売不振が続き、値下げ競争が広がっている。電気冷蔵庫など家庭用耐久財も8%下落。このほか高速道路料金や宿泊料なども物価下落要因になった。一方、ガソリン価格は4.6%、灯油代は7.1%それぞれ上がったが、上昇幅は前月よりも縮小した。
キャベツ、ホウレンソウなど野菜の値上がりで、生鮮食品を含むベースでは0.1%上昇した。上昇は5カ月ぶり。食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)は0.9%下落した。
総務省が同日発表した2月の東京都区部のCPI(中間速報値)は生鮮食品を除くベースで0.3%下落した。テレビや冷蔵庫など耐久財の価格下落が続いた。
総務省は「このところ原油価格の上昇が続いており、3-4カ月くらい先に影響が出てくる可能性がある」としている。
次に、雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルから失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。通常、失業率は景気に対する遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と見なされています。

失業率については2011年3月から8月までは震災に伴って調査が実施できなかった影響で、被災3県を除く結果となっていて、被災3県の調査も復帰した9月の統計も少し疑問が残り、やや一貫性なくギクシャクした統計となってしまっていますが、大雑把に、雇用はゆっくりとした動きながら改善の方向にあると考えてよさそうです。もっとハッキリ言えば、現在の雇用統計で量的な動向を把握する限りは改善を示している一方で、質的に decent な職が増えているのか、decent とは見なしがたい非正規の職が増えているのかは、この統計からだけでは明瞭ではありません。雇用の質的な向上が図られるためには、量的にもっと改善が進む必要があるのかもしれません。しかし、昨夜のエントリーに書いたように、円高でダメージを受けた日本企業ですから、雇用の改善は緩慢にしか進まないような気がします。

消費者物価については上のグラフの通りです。折れ線グラフは、青が全国ベースで生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI、赤が食料とエネルギーを除く全国のコアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIのそれぞれの前年同月比上昇率をプロットしており、積上げ棒グラフは全国のコアCPIの」前年同月比上昇率に対する寄与度を示しています。なお、いつものお断りで、総務省統計局では上昇率や寄与度を計算するのに、端数を持った指数を用いていますが、一般には公表されていませんので、私の方では端数を持たない指数を基に上昇率や寄与度を算出しています。グラフを見る限り、コアCPI上昇率がゼロ近傍にまで近づいて来て、その意味でデフレ脱却も視野に入りそうな気がしますが、金融政策当局がインフレ目標を1%にしましたので、デフレ脱却のハードルである物価上昇1%までにはまだ時間がかかりそうです。その意味で金融緩和はかなり続きそうです。
今日発表された政府統計では、緩やかながら雇用の改善が進んでおり、物価もゼロに向かっている現状は確認されたと受け止めています。このまま円安が進んで生産や企業活動の復調が続けば、景気も本格的な拡大基調を取り戻すと期待できます。
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