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2012年4月 2日 (月)

物足りない結果に終わった3月調査の日銀短観から何を読み取るか?

本日、3月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月調査時と変わらず▲4で、先行きは▲3と少し改善するとの結果でした。ゼロ近くまでマイナス幅を縮小して企業マインドは改善するとの事前の市場コンセンサスでしたから、やや物足りない印象を持つ向きもあったかもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

製造業の景況感横ばい、大企業2期連続マイナス 日銀3月短観
日銀が2日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)で、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業で2期連続でマイナス4となった。前回昨年12月調査から横ばいだった。欧州不安の一服、円高修正や復興需要などプラス材料もあるが、原油高で化学、鉄鋼など素材産業を中心に景況感が悪化した。先行きは改善を見込むなど緩やかな景気回復基調を裏付けつつも、企業は原油高の業績への影響を注視し始めている。
業況判断DIは景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を差し引いた値。大企業製造業の景況感は事前の市場予想(マイナス1)からは下回った。
業種別にみると自動車はプラス28で、前回調査から8ポイント改善した。震災で減少した在庫を補うための生産体制の拡大が続いている。昨年12月にエコカー補助金が復活したことも追い風になった。電気機械はマイナス17と4ポイント改善。部品調達網が一時寸断したタイの洪水被害が一服したことに加え、IT(情報技術)関連での世界的な在庫調整が一巡しつつあることなどを反映した。
一方、原材料価格の高騰を背景に、素材業種が落ち込んでいる。鉄鋼はマイナス17と7ポイント悪化。化学もマイナス14と8ポイント悪化した。
金融資本市場では欧州危機がいったん収束。円高修正や株高が進んでいることなどを背景に、先行きの見通しは改善を見込んでいる。3カ月先の先行きDIは大企業製造業でマイナス3と、3期ぶりの改善を見込む。
一方、震災からの復興需要を受け、非製造業の回復が続いている。大企業非製造業の景況感はプラス5で、08年6月以来のプラス幅で、リーマン・ショックによる落ち込みを取り戻した格好になった。業種別では建設はマイナス7で、前回から1ポイントの改善だった。
これまで非製造業の回復は大企業が中心だったが、中小企業にも波及し始めている。中小の小売はマイナス4と前回より14ポイント改善。物品賃貸もプラス5と6ポイント改善した。
足元で円高修正の流れになっているが、企業は事業計画では慎重姿勢を崩さない。大企業製造業の2012年度の想定為替レートは1ドル=78円14銭と年度ベースでは過去最高値になった。
設備投資計画は大企業製造業で前年度より3.6%増え、11年度計画(2.7%)を上回るペースを見込む。

日銀短観に関して、いくつかグラフを示したいと思いますが、まず、下のグラフは業種別規模別の業況判断DIです。上のパネルは製造業の大企業・中堅企業・中小企業で、下のパネルは非製造業です。色分けは凡例の通りで、影を付けた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

多くのエコノミストにとって、大企業製造業の業況判断DIの足踏みはやや意外感を持って受け止められていますが、その要因については諸説さまざまです。石油・石炭の大幅改善と鉄鋼や化学などの素材産業の悪化に注目して、原油高を上げるエコノミストが多そうな気がします。他方、電気機械や自動車が改善を示していますから、円高修正は一定の効果があったと受け止めています。非製造業に目を転じると、大雑把に多くの業種で改善を示していますが、改善幅は小さく、建設が悪化しているなど、復興需要によるものとは考えられません。引用した記事にもある通り、想定為替レートが1ドル78円そこそこに高まりましたので、現在の為替水準、もしくはこれをもたらした金融政策スタンスに対して製造業が懐疑的に受け止めている可能性があり、非製造業にも復興需要が見られないとなれば、原油高も相まって企業マインドが改善しないのは当然かもしれません。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

続いて、上のグラフは日銀短観設備・雇用判断DIの推移を規模別に示しています。業況に対する企業マインドが足踏みですから雇用や設備などの要素需要も盛上りに欠ける結果が示されています。設備判断DIはほぼ足踏み状態に入ったように見受けられますが、それでも中堅企業と中小企業の人員判断DIはゼロ近傍に達しました。3月21日付けのエントリーで取り上げた雇用戦略対話の資料のように、大卒と中小企業との求職・求人に関する規模のミスマッチが本格的に生じ始める可能性があります。

日銀短観設備投資計画の推移

最後のグラフは盛上りに欠ける設備投資計画です。大企業の設備投資計画の前年度比を調査時期別にプロットしています。今年度の最初の調査では前年度比ゼロで始まりました。リーマン・ショック後の2009年度のような例外を除いて、日銀短観の統計としてのクセにより、今回の3月調査が控え目で次回の6月調査では上方修正される可能性が高く、昨年3月調査の▲0.4%減を上回っていることを評価しつつ、設備投資計画は今後に期待としておきたいと思います。

最初に書いた通り、今回の3月短観は少し物足りない結果でしたが、逆に、収益計画などは増収増益の結果となっており、基本的に、緩やかな景気回復という現状認識を変更するには至らないと私は受け止めています。すなわち、金融政策運営にはニュートラルと考えるべきです。

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