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2012年4月12日 (木)

アジア開発銀行の「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook

機械受注統計の後回しになってしまいましたが、昨日、アジア開発銀行 (ADB) から「アジア開発見通し」 Asian Development Outlook 2012 が発表されています。副題は Confronting Rising Inequality in Asia と正面から不平等の問題を取り上げています。もちろん、いつもながら、pdf の全文リポートもアップされています。リポートの章別構成を見ると以下の通りとなっています。

  • Part 1: Maintaining growth in an uncertain world
  • Part 2: Confronting rising inequality in Asia
  • Part 3: Economic trends and prospects in developing Asia

Part 3 は国別の見通しですので、今夜のエントリーでは、Part 1 と 2 を簡単に見て行きたいと思います。

Table 1 Growth rate of GDP (% per year)

まず、見通しのヘッドラインとなるアジア新興国・途上国の成長率は上のテーブルの通りです。リポートの Highlights p.xxii Table 1 Growth rate of GDP (% per year) を引用しています。画像をクリックすると、リポートから成長率とインフレ率の2ページを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようになっています。今年2012年のアジア新興国・途上国の成長率見通しは+6.9%と昨年9月時点の見通しである+7.5%から▲0.9%ポイント下方修正され、昨年2011年よりも▲0.3%ポイント下回り、成長率はやや減速するとの予想です。中国が2011年の+9.2%成長から2012年は+8.5%成長に減速するのが大きな要因です。でも、先の全人代で中国は今年+7.5%成長を掲げていますので、これは上回る見込みです。

1.2.8 Export exposure to the eurozone (% of GDP)

アジア新興国・途上国の成長が2011年から2012年にかけて減速する最大の要因は輸出先である日米欧の先進国経済の停滞です。表の引用はしませんが、リポートの p.4 1.1.1 Baseline assumptions for the international economy を見ると、日米は2011年から2012年にかけて成長が加速する一方で、特に、ユーロ圏諸国は2011年の+1.4%成長から2012年には▲0.5%のマイナス成長に陥るとの前提が置かれています。アジア新興国・途上国以外の先進国については予測ではなく、あくまで見通しの作業前提としてのベースラインという位置づけですが、大きく外れているわけではないと思います。ということで、上のグラフはリポートの p.19 1.2.8 Export exposure to the eurozone (% of GDP) を引用していますが、2005年と2010年におけるアジア各地域のユーロ圏諸国への輸出比率を直接と間接に分けてプロットしています。リーマン・ショックをはさんでいますので、2005年から2010年にかけてユーロ圏諸国への輸出比率は着実に低下しているんですが、それでも、直接・間接合わせてアジア新興国・途上国平均でGDP比5%くらいの比率に上っていることが読み取れます。無視できない比率であると考えられます。

2.1.1 GDP growth (1990-2010) and poverty reduction (1990s-2000s)

Part 2 に入って、不平等の問題を取り上げています。先進国を含めて世界的に注目されているテーマを取り上げたと言えます。まず、上のグラフはリポートの p.38 2.1.1 GDP growth (1990-2010) and poverty reduction (1990s-2000s) を引用していますが、アジア新興国・途上国の地域別に見た成長率と貧困削減率をプロットしています。中央アジアを除いて、大雑把に、成長率が高ければ、2005年価格の購買力平価で見た1日当たり1.25ドル以下で暮らす貧困層の減少が進んでいることが読み取れます。すなわち、成長は貧困削減には有効な政策であると言えます。

2.2.1 GDP growth and change in the Gini coefficient

しかし、上のグラフはリポートの p.46 2.2.1 GDP growth and change in the Gini coefficient を引用していますが、成長が不平等をもたらした可能性が示唆されています。すなわち、1990年代から2010年代にかけて、縦軸にジニ係数の変化、横軸に成長率を取っていますが、わずかながら正の相関が観察されます。すなわち、成長率が高ければジニ係数も大きくなる関係です。あくまで相関関係であって、因果関係ではありませんから、どちらがどちらの原因になっているかは不明ですが、正の相関があることは確かで、成長促進はは不平等解消に有効ではありません。貧困削減と不平等解消がどちらも成長により解決できるわけではありませんから悩ましいところです。このため、アジア開発銀行では教育や医療、あるいは、空間的な、すなわち、都市と地方の不平等の解消などに取り組む必要性を強調しています。

震災からの復興需要が顕在化する日本などの例外は別にして、今年の世界経済は先進国も新興国・途上国もやや減速するとの見込みが主流となっています。経済がやや減速する中で、特にアジアでは貧困削減や不平等是正が重要な政策課題になるとのアジア開発銀行の考えと受け止めています。

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