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2012年4月16日 (月)

池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社) を読む

池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社)

池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社) を読みました。『下町ロケット』で直木賞を授賞された作者の受賞後第1作かつ最新刊です。まず、出版社のサイトから作品のあらすじを引用すると以下の通りです。

「一番おもしろい試合は、8対7だ」
野球を愛したルーズヴェルト大統領は、そう語った。

監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。
創部以来の危機に、野球部長の三上が招いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。 一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。野球部の存続をめぐって、社長の細川や幹部たちが苦悩するなか、青島製作所の開発力と技術力に目をつけたライバル企業・ミツワ電器が「合併」を提案してくる。青島製作所は、そして野球部は、この難局をどう乗り切るのか?
人生を賭した男達の戦いがここに始まる。

私はこの作者の作品は、この『ルーズヴェルト・ゲーム』と直木賞受賞の『下町ロケット』のほか、『空飛ぶタイヤ』と『鉄の骨』くらいしか読んだことがなく、基本的には同工異曲と言えば聞こえは悪いかもしれませんが、決して悪い意味ではなく、言わば「がんばる中堅・中小企業を舞台にしたハッピーエンドの爽やか物語」と言えます。残念ながら、デビュー作の『果つる底なき』や『シャイロックの子供たち』などの金融・銀行ミステリはまだ読んだことがありません。
本作『ルーズヴェルト・ゲーム』は電機部品を製造する未上場中堅企業の野球部を舞台に、世の不況に飲み込まれそうになり、リストラのため廃部寸前にある青島製作所野球部とそれを救おうと奮闘する総務部長たちを描いた企業小説です。本業でも野球部でもあらゆる意味でライバルのミツワ電器が、言わば「敵役」として配されます。底の見えない不況の中で、青島製作所の技術開発力を得るために合併を提案するミツワ電器を敵に回して、名門高校出身の投手が製造部の派遣社員をしていると知って復活する野球部、持ち前の技術開発力を背景に経営は立ち直る一方で、結局、年間3億のコストを要する野球部は廃部されるものの、予測不能な思考パターンの女傑経営者が白馬の騎士として現れて青島製作所野球部の受け皿となります。
とてもいい物語です。社業と野球部と、いずれも大きなピンチに立ち向かい、社員や部員が一丸となって解決に邁進します。敵役のミツワ電器の経営者や野球部員も個性的に配置されています。この作者のプロットに意外感はなく、次々と難題が持ち上がっても、90パーセントくらいは先が読めてしまうストーリー展開なんですが、それでも、ついつい、大いなる感情移入を持って物語に没入してしまいます。これは小説であって、もっと現実は厳しいと批判するのは自由ですが、少なくとも、フィクションでこういう小説があっていいと私は思います。私自身が野球ファンなので想像するしかないんですが、たぶん、野球に詳しくなくても楽しめそうな小説です。『マネー・ボール』的な野球とデータの関係でストーリーが進むわけではありません。
幸田真音や江上剛のような銀行や金融を中心に据えた企業小説と違って、池井戸潤の企業小説は私が読んだ範囲では比較的規模が小さく技術力の高いメーカーを舞台にしていて、技術力が企業の強みになっている展開です。私も地方大学の経済学部教授をした経験から、メーカーの強みは営業力ではなく技術力だと知りました。長らく公務員をしていて、中堅・中小メーカーの現場はまったく土地勘のない私ですが、いくつかの点では実感と合致する部分もありました。

文句なしの5ツ星で、400ページを超える作品ですが、ストーリーの展開が小気味よくて、一気に読み切る人も少なくない気がします。待ち行列は長そうですが、ほとんどの公立図書館に所蔵されていると思いますので、多くの方が手に取って読むことを願っています。

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