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2012年5月29日 (火)

雇用統計と商業販売統計から景気の現状と先行きを考える

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、経済産業省から商業販売統計が、それぞれ発表されています。いずれも4月の統計です。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

完全失業率3カ月ぶり悪化、4月4.6% 「自発的」増える
総務省が29日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇の4.6%となり、3カ月ぶりに悪化した。厚生労働省が同日発表した4月の有効求人倍率(同)は0.79倍で、前月を0.03ポイント上回った。景気の持ち直しを背景に求人が増えたことで、若年層を中心に自ら離職してより良い職場を探す動きが出ている。
完全失業者数は前月から2万人増え、299万人(季節調整値)。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は2万人増にとどまったが、「自発的な離職」は9万人増えた。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、仕事に就いていない人の割合を示す。今月の失業率の悪化は「労働市場に求職者が増えた結果」(総務省)で、今後の就業者数の増加につながる可能性もある。
就業者数は6255万人で16万人減少した。製造業や卸売・小売業で大きく減少した。一方、復興需要を背景に建設業の就業者数が増加。医療・福祉分野の大幅増加も続いており、雇用環境全体としては一進一退の動きが続いている。
小売販売額、4月5.8%増 震災の反動で
経済産業省が29日朝発表した4月の商業販売統計速報によると、小売業販売額は前年同月比5.8%増の11兆4780億円で、5カ月連続の増加だった。東日本大震災の影響で消費が落ち込んだ反動が出たことに加えて、自動車や衣料品の販売が好調だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.2%増の1兆5670億円。既存店ベースの販売額は0.5%減だった。うち百貨店は1.6%増、スーパーは1.6%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は10.3%増の7598億円。既存店ベースは6.2%増だった。

次に、雇用統計のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルから、失業率、有効求人倍率、新規求人数です。それぞれ、景気に対して、遅行指標、一致指標、先行指標と考えられています。いずれも季節調整済みの統計であり、影を付けた部分は景気後退期です。

雇用統計の推移

引用した記事にもある通り、失業率が上昇したのは「自発的辞職」が増加したことに起因し、もっといえば、よりよい職を求めて離職した人が失業状態とカウントされたためであり、会社都合の非自発的な離職ではなく、前向きの離職と考えるべきです。先行指標・一致指標の新規求人数や有効求人倍率が改善していることから、雇用についてはマクロで改善しているのではないかと私は考えています。ただし、改善のスピードが問題なんですが、現時点では賃金の上昇につながる雇用改善圧力をもたらすほどのスピードではないと受け止めています。なお、以前からの主張通り、デフレ脱却の十分条件は賃金の上昇だと私は考えています。

商業販売統計の推移

商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の前年同月比、下は季節調整指数そのものです。青が卸売業、赤が小売業です。販売統計については総務省統計局の家計調査と同じで、2月のうるう年効果でジャンプし、3-4月は昨年の震災からの反動に加えて、エコカー補助金の復活による自動車販売の激増により販売や消費支出は前年同月比で増加している一方で、季節調整済みの統計を見ると4月は前月比で減少しています。消費についてはうるう年効果や昨年の震災の反動、さらに政策によるかく乱もあり、基調が分かりにくくなっているのは事実ですが、大雑把に消費の回復基調は崩れていないものの、4月についてはやや弱い数字が出た、と私は受け止めています。ただし、うるう年はもちろん、震災の反動もエコカー補助金もサステイナブルではありませんから、年度後半の消費動向には不透明感が払拭されません。

年度前半でうまく雇用と景気のいい循環に乗ることが出来れば、景気回復はかなり力強いものとなると私は期待しているんですが、自動車販売に対する政策効果の剥落がテレビ並みに大きいとすれば、もしそう仮定すれば、景気に対する影響も無視できません。年度後半の消費に注目したいと思います。

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