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2012年6月15日 (金)

川上弘美『七夜物語』(朝日新聞出版) を読む

川上弘美『七夜物語』(朝日新聞出版)

川上弘美『七夜物語』(朝日新聞出版) を読みました。2009年9月から2011年5月までの朝日新聞の連載を加筆修正して単行本として出版されています。カバーや挿絵は酒井駒子さんです。ということで、まず、出版元の朝日新聞の書評を引用すると以下の通りです。

現実とつながる「夜の世界」へ
川上弘美の文章には風が通(かよ)っているといつも思っていた。改行や丸みを帯びた平仮名が多用されているから? ちがうちがう。言葉が呼吸している。本が生きているのだ。
実際、読書好きの小学校4年の少女さよと、その級友の仄田(ほのだ)くんとともに、本はこの物語の主人公だと言える。さよが図書館で見つけた『七夜(ななよ)物語』という、閉じると読んだ中身を忘れてしまう本が、二人をふしぎな七つの「夜の世界」へと招き入れる。
ふしぎ? だってそこには、行儀の悪い子をきらうグリクレルというエプロンを巻いた大ねずみや、濃いはちみつ色の謎のかたまりミエルがいて、ちびエンピツやコクバンなどのモノがイキモノのように動き、しゃべるのだから。
だが、私たちの誰もが覚えているように、不思議はすべての子供の友だちだ。さよも仄田くんも「夜の世界」の訪れに怯(おび)えるどころか胸躍らせる。イキモノもモノも分け隔てなく思いやり、知恵を懸命に働かせ、ときに二人の息が合わないことはあっても、手をつないで、降りかかってくる難問に勇敢に立ち向かう。
むしろ、さよの気にかかるのは、離婚した母と父のことだ。母がおらず祖母に甘やかされて育った仄田くんは、友だちのいない情けない自分に悩んでいる。この現実世界ほど不可解で矛盾に満ち、一筋縄で行かないものはない。
「夜の世界」が、物語が、かくも魅力的なのは、そこが現実逃避の場所だから? ちがうちがう。「いいところも、へんなところも、まじりあってでこぼこで。そういうものが、すてきなんだよ」と登場人物の一人が言う。「夜の世界」はさよたちの現実とつながっている。「完璧な何かなんて、うそこのもの」なのだ。
この物語では、くちぶえが大切な役割を果たす。よくわかる。くちぶえとは息吹、命だから。現実と虚構を結ぶ、光と影の揺れるでこぼこ道を命の風が行き来している。
[評者]小野正嗣 (作家・明治学院大学専任講師)

引用した書評がかなり印象派的な茫洋とした雰囲気ですので、私の方で補足すると、舞台は1977年のおそらく東京の欅野区という架空の場所で、主人公の鳴海さよと仄田鷹彦は同じ団地に住み、当然ながら、同じ小学校に通う小学4年生のクラスメートです。この2人が、読んでも読んでも中身を忘れてしまう『七夜物語』を図書館で読んで、ねずみのグリクレルなどがいる夜の世界を7夜に渡って冒険し、最後の方では世界のゆがみやさまざまな人やモノが別れるのを防ぐために、光や影と肉弾相撃つバトルまで発展してしまいます。そして、ホントの最後の最後は何年か後の同窓会の場面で終わります。
私の理解が正しければ、この作者は主張をハッキリ述べるのではなく、よくも悪くも作品の解釈を読者に任せてしまう場合があり、この物語も作者の主張がどのあたりにあり、いわゆる小中学校の国語のひとつの眼目である物語のテーマを考えると、やや輪郭がぼやけている印象があります。連載の最終盤にあった震災の影響は、少なくとも、私には感じられなかったんですが、モノを大切にすることの重要性でも、小学校におけるいじめ問題でもなく、明確に主張したい点は見えて来ません。でも、現実から離れたファンタジーとして、とても読みやすく、読み通すのに時間はかかりません。小学生くらいの読者を想定しているのかもしれません。でも、小学生が読むのであれば、最後の光や闇との肉弾相撃つバトルは勘弁して欲しかった気がしないでもありません。

朝日新聞に連載されていたこともあり、当然ながら話題の書です。私は図書館で借りましたし、多くの公立図書館で所蔵されていることと思います。必ずしも万人にオススメするわけではありませんが、この作者独自のいわゆる「空気感」が好きな人は読むべきだろうという気がします。

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