道尾秀介『光』(光文社) を読む
道尾秀介『光』(光文社) を読みました。私が最も注目する若手作家のひとりです。みずみずしい感性が手に取るように理解でき、とてもよかったです。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。
光 道尾秀介/著
仲間とともに経験した、わくわくするような謎。
逃げ出したくなる恐怖と、わすれがたい奇跡。
真っ赤に染まった小川の水。
湖から魚がいなくなった本当の理由と、人魚伝説。
洞窟の中、不意に襲いかかる怪異。
ホタルを、大切な人にもう一度見せること。
去っていく友人に、どうしても贈り物がしたかったこと。
誰にも言っていない将来の夢と、決死の大冒険──
小学四年生。
世界は果てしなかったが、私たちは無謀だった。
どこまでも、歩いていけると思っていた。
上の引用にある通り、小学4年生の男の子が主人公であり、春に始まって冬まで、小学4年生の1年間を余すところなく描き切る小説です。短いミステリ仕立ての第1章から始まって、湖の人魚の伝説と教頭先生の少年時代のお話、アンモナイトの化石にまつわる話題と同級生の引越し、6年生になるクラスメートの姉へのほのかな恋心、1年下の3年生を巻き込んだアブナい大冒険、そして、誘拐事件へと、ノンストップで一気に読ませます。作者の持つ素晴らしい構成力や表現力を駆使して、少年時代の純粋な思考や行動、何事も前向きに取り組む姿勢、といった少年生活をとても活き活きと描写しています。一気に読ませる割には読みごたえも十分で、読後感もかなり爽やかさに満ち溢れています。決して、昭和ノスタルジーのような懐古趣味ではないんですが、純粋に少年少女時代の懐かしさがよみがえります。従って、川上弘美『七夜物語』のように小学4年生を主人公にして小学4年生に読ませる本ではありません。当然ながら、小学4年生を経験した大人が読む物語です。
私はハルキストであり、村上春樹の小説をこよなく愛しているんですが、我が家の子供達とともに流行作家である東野圭吾や伊坂幸太郎も大好きです。そして、若手作家ではこの道尾秀介とともに川上未映子に注目しています。この『光』も多くの方が手に取って読むことを願っています。
| 固定リンク
コメント