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2012年7月 2日 (月)

予想外の改善を見せた6月調査の日銀短観から何を読み取るか?

本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは▲1と3月調査の▲4より3ポイント改善しました。輸出増を背景に3四半期ぶりの改善です。大企業の設備投資計画は製造業・非製造業ともプラスを見込んでいます。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業、3期ぶりに景況感改善 輸出の改善傾向を背景に
日銀が2日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス1と、3月の前回調査(マイナス4)から3ポイント改善した。改善は3期ぶり。欧州債務問題などで世界経済の減速懸念はあるものの、輸出の改善傾向を背景に景況感が上向いている。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。回答の基準日は6月12日で、基準日までに7割弱が回答した。同日の日経平均株価が8500円前後、円相場は1ドル=79円台半ばだった。
業種別の業況判断DIをみると、大企業製造業では自動車やはん用機械、電気機械など16業種中7業種が改善した。自動車は前回から4ポイント改善してプラス32だった。紙・パルプや化学、非鉄金属も改善幅が大きかった。
エコカー補助金による政策効果に加え、中国、タイなどアジア向けの輸出も持ち直しの動きがみられ、景況感が悪いと感じる企業の数が減った。
大企業非製造業の業況判断DIは3ポイント改善してプラス8。4期連続の改善となった。東日本大震災後の復興需要を背景に建設、不動産がともに改善したほか、対個人サービス、宿泊・飲食サービスがともに2ケタの改善幅となった。高齢者を中心としたサービス消費が活発になっており、足元の内需の底堅さが裏づけられた。
ただ、業況判断DIの3カ月先の見通しをみると、製造業と非製造業で明暗が分かれる。大企業製造業が足元から2ポイント改善し4期ぶりにプラスに転じる一方で、大企業非製造業では2ポイント悪化のプラス6となる見通しだ。個人消費などの内需の持続力にはやや不安を残した。
2012年度の設備投資計画は大企業の製造業が前年度比12.4%増、非製造業が3.0%増だった。背景には企業収益の回復がある。経常利益は加工業種を中心に伸びそうで、大企業製造業全体で前年度比10.1%増を見込む。先行きの設備過剰感は和らぐ見通しだ。
雇用の過剰感も薄れつつある。足元では「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断DIが大企業製造業で前回比で横ばいのプラス8となったが、先行きは過剰感が2ポイント低下する見通し。新卒採用計画も12年度、13年度ともプラスとなっており、雇用環境は緩やかに改善しているようだ。
大企業製造業の12年度の想定為替レートは78円95銭と前回調査時より81銭円安になった。ただ、過去の実績と比べると依然として調査開始以来最高の円高水準となっており、円高への警戒感はなお根強い。

いつもの産業別・規模別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

足元の業況判断DIは大企業では製造業・非製造業とも3ポイント改善しました。それだけでなく、先行きの業況判断DIも大企業製造業ではさらに2ポイント改善すると見込まれています。ただ、大企業非製造業は逆に▲2ポイントの悪化となっています。もっとも、製造業の中でも当然に濃淡はあり、大企業自動車の先行きは▲17ポイント悪化すると見ていますから、エコカー補助金・減税の終了による影響が織り込まれていると考えるべきです。なお、製造業を中心に予想外の改善を見た要因は資源価格にありそうです。すなわち、大企業の石油・石炭製品の業況判断DIは3月調査の0から6月調査では▲33と大きく悪化しています。逆に、大企業の非鉄金属の業況判断DIは3月の▲11から+11と大きくジャンプしています。また、製造業と非製造業の差を生じている要因は堅調に回復している米国経済に起因する輸出に見出せると私は受け止めています。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

業況判断が堅調に推移する中で、設備や雇用に対する要素需要もそれなりの盛り上がりを見せています。上のグラフは上のパネルが設備判断DI、下が雇用判断DIを、それぞれ企業規模別にプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。設備の過剰感はやや改善テンポが緩やかになっているのが読み取れますが、雇用判断は引き続き順調に改善を続け、中堅・中小企業ではとうとう6月調査からマイナスに入りました。雇用は過剰感よりも不足感を持つ企業の方が多くなったということです。先週発表されたハードデータの雇用統計とも整合的であると受け止めています。

日銀短観設備投資計画の推移

上のグラフは2007年度以降の大企業全産業の設備投資計画をプロットしています。業況マインドの改善に伴って、設備投資計画も6月としては伸び率が高くなっています。昨年度や一昨年度と似たグラフに見えますが、やや上回っているかもしれません。このブログではお示ししませんが、利益水準がかなり高い業務計画になっており、大企業の利益計画は2年振りの黒字転換が示唆され、特に製造業の上方修正が目立っていることから、利益計画にけん引される形で設備も堅調に推移する可能性が高いと私は予想しています。

日銀短観新卒採用計画の推移

最後のグラフは6月調査と12月調査だけの質問項目である新卒採用計画です。リーマン証券の破綻のショックで大きく落ち込んだ新卒採用も徐々に回復しつつあり、中小企業がリードしていた昨年までの新卒採用計画も大企業や中堅企業に波及しつつあるようです。私は一昨年まで2年間の大学教員生活を送っていましたが、こういうのを見ると大学生の就職も運の要素がかなり含まれる、と感じてしまいました。

総じて見れば、今回の日銀短観6月調査の結果は驚くほど日銀の景気判断をサポートする内容になっています。日銀の金融政策はしばらくの間、様子見の現状維持を続けることでしょう。

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