« 厚生労働省の雇用政策研究会の報告書案から若年雇用を考える | トップページ | いつもの選手がいつもの采配で中日にボロ負けしてまだまだ連敗が続く! »

2012年7月25日 (水)

本日発表された貿易統計から何を読み取るか?

本日、財務省から6月の貿易統計が発表されました。輸出も輸入もともに前年同月比で減少し、差引き貿易収支は季節調整していない原系列で見て616億円の黒字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用するんですが、私は1-6月の半期は興味がありませんので、最後の3パラだけ引用すると以下の通りです。

1-6月の貿易赤字、過去最大 6月は黒字に
財務省が同日発表した6月の貿易収支は616億円の黒字に転じた。原油価格の下落が主因で、円建ての通関単価は前年同月比で19カ月ぶりにマイナスになった。全体の輸入額は2.2%減の5兆5821億円と30カ月ぶりに減少した。
輸出も海外経済の減速感が強まり、2.3%減の5兆6438億円と4カ月ぶりに減った。鉱物性燃料や半導体などの電子部品の輸出が減った。自動車は8.6%増えたが、伸び率は前月に比べて鈍化した。
先行きについては「海外経済の減速による輸出の鈍化と輸入水準の高止まりで、明確な黒字基調に戻るまでにはまだ時間がかかる」(大和総研の熊谷亮丸氏)との見方が多い。

次に、いつもの貿易統計の推移のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列を、下は季節調整済みの系列をそれぞれ取っています。

貿易統計の推移

上の原系列のグラフでは、6月の貿易統計では、輸出が増加して輸入が減少し、結果として貿易黒字となったように見えますが、下の季節調整済みの系列では輸出入ともに減少し、貿易赤字が継続している形となっています。震災の2011年3月以降ずっと貿易赤字が続いています。6月の貿易赤字は5月から縮小したものの、赤字であることに変わりありません。私を含めて、多くのエコノミストは貿易統計の傾向として後者の印象を強く持っていると言って差し支えありません。

輸出の推移

今日のデータを見て、季節調整していない原系列ながら、前年同月比の伸び率を見るだけでなく、水準を確かめる必要を感じて、上のグラフを作成してみました。本邦初公開かもしれません。上のパネルは輸出数量指数の推移、下は主要な地域別輸出額の推移です。輸出数量は2008年のリーマン・ショックを経て、2010年からほぼ100近傍で横ばいの状態と見受けられます。毎月の変動は当然にあるものの、ならしてみれば輸出数量はここ2年ほどで増えていないわけです。数量ベースと金額ベースの違いは頭に入れておくべきですが、リーマン・ショックから回復した後の2010年以降くらいで地域別輸出金額を見ると、アジア向けがほぼ横ばい、EU向けがやや減少傾向、強引ながらも上向きに見えるのは北米向けの輸出だけという状態です。
ですから、我が国の輸出が伸びているわけではなく、6月のように貿易赤字が縮小したとすれば、輸出以上に輸入が落ちているわけです。すなわち、原油などの資源や商品価格が低下しているために輸入金額が減少した、と私は受け止めています。資源価格の低下は中国をはじめとする新興国経済の減速を反映している可能性が高く、我が国の輸出もすでにやや減少傾向にある欧州向けに続いてアジア向けも横ばいから減少に転じる可能性を否定できません。いずれにせよ、6月貿易統計の貿易収支の黒字化や赤字幅縮小は、世界経済の視点からは必ずしも好ましくない縮小均衡に向かう可能性を見落とすべきではありません。少なくとも、輸出がリーマン・ショック前の増加基調を失った点については認識すべきであり、輸出が低調な理由は円高である可能性が高いと私は受け止めています。

中央銀行の金融政策は為替を通じて貿易に影響を及ぼし、ラグはそれなりに長いものの、実物経済への何らかの効果は無視できるはずもありません。日銀政策委員に民間エコノミストから金融緩和の議論を展開していた2人が加わりました。私は大いに期待しています。

|

« 厚生労働省の雇用政策研究会の報告書案から若年雇用を考える | トップページ | いつもの選手がいつもの采配で中日にボロ負けしてまだまだ連敗が続く! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/46460605

この記事へのトラックバック一覧です: 本日発表された貿易統計から何を読み取るか?:

« 厚生労働省の雇用政策研究会の報告書案から若年雇用を考える | トップページ | いつもの選手がいつもの采配で中日にボロ負けしてまだまだ連敗が続く! »