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2012年7月31日 (火)

量的な改善を示す雇用統計から何を読み取るか?

今日は月末の閣議日だったため、総務省統計局の失業率、また、厚生労働省の有効求人倍率毎月勤労統計などの雇用統計が発表されました。すべて6月の統計です。失業率は前月から0.1%ポイント改善し、有効求人倍率も0.1ポイント上昇しており、量的に見て雇用は着実に改善を示しています。ただし、先行指標の新規求人数は減少し、所定外労働時間や賃金は低下しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

厚労相「雇用、依然厳しい」 6月の完全失業率4.3%
総務省が31日発表した6月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下し2カ月連続で改善、9カ月ぶり低水準の4.3%となった。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率(同)は0.82倍で前月を0.01ポイント上回り、2008年9月以来の高水準となった。景気の持ち直しを背景に雇用情勢が改善している。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合を示す。男性が横ばいの4.5%、女性が0.3ポイント改善し4.0%で6カ月ぶり低水準だった。
完全失業者数は281万人で、前月に比べ8万人減った。新たに仕事探しを始めた人を含む「その他の者」が10万人減った。職探しをしていた人が徐々に就業しており、「就業者が増加して失業者が減る良い形の失業率改善」(総務省)は2月以来4カ月ぶりだ。就業者数は6272万人で27万人増えた。非労働力人口は4538万人で18万人減った。
ただ、労働市場の先行きを映す新規求人倍率は1.32倍で前月を0.03ポイント下回った。円高の影響で製造業の新規求人数(原数値)が2年6カ月ぶりに前年同月比1.1%減少したため。小宮山洋子厚労相は閣議後の記者会見で「雇用は持ち直しているが依然厳しい」と指摘、被災地の雇用情勢や円高の影響を注視していく考えを示した。
6月の所定内給与0.2%減 2カ月ぶり減少
厚生労働省が31日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給や家族手当を含む労働者1人当たりの所定内給与は前年同月比0.2%減の24万4629円となった。減少は2カ月ぶり。一般労働者より賃金水準の低いパートタイム労働者が増えたことが影響した。
所定内給与に残業代などを加えた現金給与総額は43万2756円で0.6%減少だった。「特別に支払われた給与」が東日本大震災後に落ち込んだ前年度の業績を反映し、今夏のボーナスが減ったことが影響した。
残業代を含む所定外給与は4.1%増の1万8332円となり、9カ月連続で増えた。景気との連動性が高い製造業の所定外労働時間は13カ月連続で増えたものの、2カ月続けて10%を超えていた伸び率は5.3%に鈍化した。総労働時間は平日が1日少なかったため0.5%減の151.5時間だった。

次に、いつもの雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をそれぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

雇用統計の推移

先行指標の新規求人数は悪化したものの、失業率、有効求人倍率が改善し、雇用統計は全体として改善を示していると私は受け止めています。失業率の低下も雇用者数の増加にサポートされていて、いわゆる就職を諦めた層の労働市場からの退出ではありませんから、いい姿ということが出来ます。しかし、季節調整していない原系列の統計を用いて主な産業別就業者を前年同月と比べると、卸売業・小売業、運輸業・郵便業などが減少した一方で医療・福祉などが増加しており、正規雇用が増加しているようには見えません。医療や介護の現場の低賃金労働の需要が雇用をリードしているのではないかと私は想像しています。

毎月勤労統計の推移

毎月勤労統計の所定外労働時間と現金給与総額をプロットした上のグラフを見ると賃金は減少しており、引用した報道にもある通り、賃金水準の低いパートタイム労働者が増えたことが影響していることは明らかです。私が雇用を重視するのは2点の理由があり、第1は消費の原資となる収入です。賃金単価かける就業者数になりますから、雇用が増加しても賃金が低下すれば、その効果は相殺されます。第2は幸福度です。失業状態になれば幸福度が大きく減じることは既存の研究などから明らかです。何らかの収入のある職についており社会に貢献しているという自負は幸福感を高めること間違いありません。単なる収入であれば年金でも生活保護でも何でもいいのかもしれませんが、社会貢献や仲間とのつながりを考えに入れると、decent な雇用を増加させることは政府の重要な役割と考えるべきです。パートタイムなどの非正規雇用は賃金が低くて収入として不足する可能性がある上に、社会貢献などを通じた幸福感の観点からも不十分なことから、両方の観点から質が高くて decent な雇用の増加が望まれます。

繰返しになりますが、量的には雇用は着実に増加して改善を示しています。質的に decent な雇用の増加が進むような、同時に、若年層の雇用促進につながるような積極的、すなわち、affirmative な労働政策が必要です。

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