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2012年7月24日 (火)

厚生労働省の雇用政策研究会の報告書案から若年雇用を考える

昨日、厚生労働省の雇用政策研究会が開催され、報告書案が審議されています。メディアの論調では労働力受給推計が注目されているようですが、ほかにもいろいろと盛りだくさんな内容を含んでいますので、1日遅れながら、今夜のエントリーで図表を中心に簡単に取り上げておきたいと思います。といいつつ、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

雇用「つくる」に軸を 厚労省政策研究会が報告書を公表
厚生労働省の雇用政策研究会(座長・樋口美雄慶大教授)は23日、日本がゼロ成長で労働市場改革が進まない場合、2030年の就業者数が10年に比べて約850万人減るとの推計を正式に示した。同日とりまとめた報告書では、日本の成長を実現するための雇用政策として(1)成長を担う産業の育成と一体となった政策の推進(2)地域雇用の創出(3)若年層の就労支援が重要だと指摘した。
報告書では、雇用を「まもる」から「つくる」「そだてる」「つなぐ」に軸足を移すことが重要だと指摘した。地域雇用の創出には、製造業への過度な依存を改め、観光や医療・介護など不況期にも雇用機会が確保されるような産業構造の多様化が必要だとした。そのうえで、地域の大学とも連携して、企業の求めに応じた人材を育てる訓練制度や育成支援が必要だとまとめた。
厚労省は報告をもとに、今後の具体的な政策を検討する。

まずは、何はともあれ、もっとも注目度の高い就業者数のシミュレーション結果は以下のグラフの通りです。「報告書案概要」から引用しています。

2030年までの就業者数のシミュレーション

見れば明らかですが、一番左の棒グラフで示された2010年の実績の就業者数6298万人に比較して、一番右の2つの棒グラフにある2030年のケースは経済成長と労働参加が適切に進まなければ5453万人と▲845万人の減少と試算される一方で、経済成長と労働参加が適切であれば6085万人と▲213万にの減少で済み、その差は632万人となります。シミュレーションの詳細は「労働力需給推計の概要」で明らかにされていますが、需要サイドのポイントは成長率と物価上昇率です。すなわち、内閣府の「経済財政の中長期試算」に基づいており、成長戦略シナリオでは平均成長率は名目3%程度、実質2%程度、消費者物価上昇率は中長期的に2%近傍と前提しているのに対して、慎重シナリオでは平均成長率はで名目1%台半ば、実質1%強、消費者物価上昇率は中長期的に1%近傍と設定しているほか、2016年以降の成長率も物価上昇率もゼロと置いたゼロ成長シナリオも含んでいます。

初職における正規比率

他方、供給サイドのポイントは若年対策とワーク・ライフ・バランス関連施策だと私は考えています。もちろん、女性のM字カーブ対策、高齢対策なども重要なのでしょうが、特に私が注目したのは、若年には非正規雇用しか生み出さない現在の高齢者超優遇雇用システムをいかに変えて行くかです。例えば、上のグラフは同じく「報告書案概要」から引用していますが、大卒男性の場合、ここ20年で初職の正規比率が一貫して低下し20%ポイントも下がりました。上のグラフの他に高卒男女のグラフもあるんですが、高卒男性の場合は20年間で26%ポイントの著しい低下を示しています。そうでなくても、年金などの社会保障で大きな世代間格差を生じている現行の経済社会システムでは、affirmative で逆差別的な若年対策を採用することが必要だと私は考えています。それも、シルバー・デモクラシーに阻まれて、政治の目は一向に若年に向こうとはしません。ジョブサポーターやジョブカフェはどこまで効果的なんでしょうか。まさか、天下り役人の受入れ先になっているだけ、なんてことはないと思いますが、ジョブサポーターの支援により大卒内定率が3.9%ポイントの押上げ効果があった、との試算は疑わしいと私は受け止めています。なお、供給サイドで私が重要と考えるワーク・ライフ・バランスに関する記述は「報告書案」にほとんど見当たりません。どうなっているんでしょうか。私が見落としているだけなんでしょうか。

最後に、広く報じられている通り、ムーディーズのアナウンスメントによれば、ドイツのソブリン・レートの見通しをネガティブに引き下げました。世界経済は若年雇用に厳しい方向に向かっているのかもしれません。

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