本日発表の機械受注統計と景気ウォッチャーと経常収支から何を読み取るか?
本日、内閣府から5月の機械受注統計が、また、6月の景気ウォッチャー調査が、さらに、財務省から経常収支などの5月の国際収支が、それぞれ発表されました。機械受注は船舶と電力を除く民需のコア機械受注が前月の反動から前月比▲14.8%減の6719億円と大きく減少し、景気ウォッチャーの現状判断DIは43.8となり、前月比3.4ポイント悪化して、基調判断が下方修正されています。また、経常収支は黒字幅を大きく縮小させています。まず、とても長くなってしまうんですが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の機械受注、14.8%減 05年4月以降で最大のマイナス幅
内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比14.8%減の6719億円だった。マイナスは2カ月ぶりで、減少幅は比較可能な2005年4月以降で最大だった。
内閣府は機械受注の基調判断を「緩やかな増加傾向がみられる」で据え置いたうえで「5月の実績は、前月の反動もあり大きく減少した」との表現を加えた。大型案件が乏しかったことに加え「例年より稼働日数が多かったことが季節調整値を押し下げる要因になった」(内閣府)という。
業種別にみると製造業が8.0%減。航空機、化学機械などその他輸送機械の受注が前月伸びた反動で減少。前月にプラントの大型案件があった化学工業も大きく落ち込んだ。一方、自動車や同付属品は2カ月ぶりに大幅増だった。
非製造業は6.4%減。前月に仕分け用機械の受注が増えた卸売り・小売りが大きく落ち込み、金融・保険のマイナスも目立った。製造業・非製造業ともに減少は2カ月ぶり。
機械メーカーの4-6月期の受注額見通しは前期比2.5%増。5月の大幅減によってこの見通しを達成するには、6月が前月比で27.6%の伸びが必要となり、達成は事実上難しくなった。
船舶・電力や官公需などを含む5月の受注総額は1兆8137億円で前月比14.5%減った。マイナスは2カ月連続。官公需が21.8%減ったことも響いた。
6月の街角景気、3カ月連続悪化 判断を下方修正
内閣府が9日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は43.8と前月比3.4ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月連続。自動車の受注一服に加え、悪天候による消費意欲の減退が響いた。
内閣府は景気の現状に対する基調判断を「このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」へと2カ月連続で下方修正した。
現状判断は指数を構成する家計、企業、雇用の全部門で悪化。足元の消費を支えているエコカー補助金について「効果も薄らいで問い合わせも減少している」(北関東・乗用車販売店)と、自動車販売の増勢には一服感が出てきた。梅雨入りや台風直撃に伴う天候不順も消費者の足を鈍らせた。
「主要取引先が円高の影響によって、海外発注に切り替えた」(四国・鉄鋼業)、「得意先は海外に仕事をとられ、当社への発注も激減している」(南関東・金属製品製造業)といったコメントが並び、1ドル=80円を超えて高止まりする円相場も企業マインドの重荷となった。また、製造業からの求人も減少しているとの指摘が増えた。
先行き判断指数は2.4ポイント低下の45.7と2カ月連続で悪化した。エコカー補助金終了による自動車販売の急減を心配する声が多かったほか、消費増税関連法案の衆院採決が、先行きへの不安を呼び起こした。
先行きに関して、消費税に絡むコメントは245件と5月の91件から急増。「少なからず消費マインドに影響が出る」(北関東・百貨店)など悪影響を懸念する声が約半数を占めた。また家計、企業ともに電力不足を指摘するコメントが並び、先行き判断指数でも家計、企業、雇用の全部門で悪化した。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は6月25日から月末まで。
5月の経常黒字、62.6%減 貿易赤字拡大が影響
財務省が9日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2151億円の黒字だった。4カ月連続の黒字を確保したが、黒字額は前年同月比で62.6%減少した。液化天然ガス(LNG)や原粗油の輸入増を背景とした貿易赤字の拡大が影響した。所得収支の黒字幅縮小も重荷となった。
貿易・サービス収支は9410億円の赤字。赤字は2カ月連続。うち貿易収支は、輸送の際の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで8482億円の赤字だった。LNGや原粗油は火力発電向けを中心に輸入が引き続き増加。米国向けを中心に好調な自動車や自動車部品などの輸出の伸びで補いきれず、赤字幅は前年同月から770億円拡大した。
旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は928億円の赤字。通信や建設などの分野が落ち込み、赤字額が734億円増えた。
所得収支は1兆2737億円の黒字だった。ただ、海外企業1社が日本の支店をグループ会社に格上げし、利益を本国に送金したため、黒字額は11.7%減った。
財務省は今後について「欧州経済の低迷が輸出の本格回復の足かせになる点などが混在しており、先行きを見通すのは難しい」としている。
次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需のコア機械受注とその後方6か月移動平均、下のパネルは外需と製造魚油と船舶を除く非製造業の需要者別の機械受注です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた期間は景気後退期です。

統計作成官庁である内閣府は基調判断を据え置きましたが、ギリギリの判断ではないかと受け止めています。機械受注は先行きの設備投資に連動する部分があるわけで、弱気の材料は尽きませんが、基本的には欧州だけでなく米国や中国も含めた外需の先行きが不透明であるために設備投資に踏み切れないケースが典型的ではないかと考えています。逆に、強気の材料としては先に発表された日銀短観の設備投資計画が大きく上方修正されたことが上げられます。5月統計が大きく落ち込んでも、年度の計画に沿って今後は設備投資が盛り上がる可能性もあります。どちらの目が出るかは現時点では私にも分かりません。

上のグラフに見る景気ウォッチャーは基調判断が2か月続けて下方修正されました。特に家計部門の悪化が大きいと私は受け止めています。エコカー補助金によって水膨れした自動車販売は1-3月期がピークであり、4月に入って以降はやや下り坂だったのは明らかですが、引用した記事にもある通り、円高と消費税率引上げが国内景気に影を落としています。加えて、家計関連では梅雨入りや台風に伴う天候不順等により季節商材等の売上が低調であった影響も見られます。ただ、やや疑問に感じるのは、消費税の短期的な効果は駆込み需要ではないかと考えられるんですが、1年半ほど先の駆込み需要に備えて消費を落としているのかもしれませんし、消費税増税に伴う景気の落ち込みに身構えている可能性もあります。一般的なマインド悪化と考えるのが無難かもしれません。

最後のグラフは上の経常収支です。引用した記事は季節調整していない原系列の経常収支について記述している一方で、上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、少し印象が異なるかもしれませんが、季節調整済みの系列で傾向を見ると、貿易収支が震災後ほぼ一貫して赤字を記録しています。昨年3月の震災の後、2011年4月から今年2012年5月までの14か月で貿易黒字は赤字を記録し、足元でも昨年10月から8か月連続で貿易赤字となっています。この週末の米国雇用の低調さを見ても海外経済は極めて不透明ですので、我が国の貿易収支や経常収支の先行きは楽観できません。
このブログでは、ここ2か月ほど消費動向については "Half Full, Half Empty." と分水嶺に差しかかる可能性を示唆して来たつもりですが、ひょっとしたら、設備投資も曲がり角に達しつつあるのかもしれません。欧州経済が緩やかながら景気後退に入ることが確実視されている中、堅調と見なされて来た米国や中国などもスローダウンを示し指標が増加し、我が国経済も減速に向かう可能性が高まっているのかもしれません。
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