毎月勤労統計に見られる我が国の雇用情勢やいかに?
本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で見て▲0.8%減となりましたが、所定内給与は+0.4%増でした。景気に敏感な所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で見て前月からリバウンドしました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
5月の現金給与総額、0.8%減 4カ月ぶりマイナス
厚生労働省が3日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.8%減の26万8301円で、4カ月ぶりのマイナスとなった。ボーナスなどの「特別に支払われた給与」が大幅に減ったことが響いた。
特別に支払われた給与は39.9%減の6606円。昨年5月に60.6%増と建設業、金融業や保険業を中心に急増した反動が出た。一方、基本給や家族手当などの所定内給与は0.4%増の24万3290円と2カ月ぶりのプラスだった。残業代などの所定外給与は6.4%増の1万8405円。東日本大震災後の生産の持ち直しなどを背景に製造業の所定外給与は14.8%増えた。
総労働時間は3.3%増の144.1時間と4カ月連続で増加。製造業の所定外労働時間は12.8%増の13.9時間と、12カ月連続のプラスだった。
次に、いつもの毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の現金給与総額指数の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの所定外労働時間指数を、それぞれプロットしています。いずれも5人以上事業所の統計であり、下のパネルの影をつけた部分は景気後退期です。

引用した報道にある通り、賃金が3か月振りに前年同月比で減少したのは特殊要因に起因し、昨年5月に急増した建設業などの反動ですから、それほど懸念すべき結果ではないと私も受け止めています。所定内給与は着実に増加しており、恒常所得仮説的な見地からは消費への影響は大きくない可能性が高いと考えるべきです。しかし、問題は夏季ボーナスです。4月20日付けのエントリーで取り上げたように、多くのエコノミストは今夏のボーナスは減少すると見込んでいます。特に公務員は大幅減少が確実です。ボーナスは一般のサラリーマン生活の支払い計画に深く組み込まれている場合も少なくありませんから、ボーナスが減少するのであれば、何らかの消費にマイナスのインパクトが出る可能性は否定できません。なお、所定外労働時間はジグザグした動きながら、景気回復を反映して着実に増加基調にあります。徐々にタイムラグを伴いつつ給与に反映されることが期待されます。
毎月勤労統計では公務員給与は対象から外されており、この統計を見る上で大きな留保は必要ですが、特定の財に補助金を支給する政策ではなく、賃金が消費をサポートするようになれば景気回復はホンモノです。何度か書きましたが、賃金上昇はデフレ脱却の十分条件と私は考えています。
| 固定リンク
コメント