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2012年7月12日 (木)

政府のデフレ対策における政策割当てを考える

やや旧聞に属する話題ですが、一昨日7月10日に内閣府から「デフレ脱却等経済状況検討会議 第1次報告」が公表されています。私が各メディアのネット上の電子版などを見た限り、いつもの日経新聞はまったく無視したようでしたので、時事通信のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

住宅市場、インフラ投資を活性化=デフレ脱却策報告書 - 政府
政府は10日、経済閣僚らで構成する「デフレ脱却等経済状況検討会議」を開き、2013年度までに取り組むデフレ脱却策を報告書にまとめた。耐震化推進などによる住宅市場の活性化や、民間資金を活用したインフラ投資の促進、医療・福祉分野の需要創出などが柱。これらの施策を政府が月内に策定する「日本再生戦略」に盛り込み、来年度予算に反映させるほか、必要な規制改革や税制改正を行う。
報告書には「日銀にはデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続するよう期待する」と明記。日銀が当面の物価目標とする消費者物価上昇率1%の早期達成を求めた。

ネットでは発見できなかったんですが、私の手元に時事通信が流したファックスがあり、これには以下の6点が「第1次報告」のデフレ脱却策骨子として明記されていました。そのまま引用します。

  • 住宅の耐震化率を9割に引き上げ
  • 民間資金を活用したインフラ投資の促進
  • 医療・福祉分野の需要創出、薬事法改正による医療機器審査の迅速化
  • サービス業の海外展開促進、進出企業の支援体制構築
  • 非正規雇用と正規雇用の均等・均衡処遇
  • 雇用調整助成金の支給要件見直し

リポートでは冒頭に「我が国経済は、過去10年以上にわたり、デフレから脱却できない状況が続いている」と、いわゆる「失われた20年」の歴史的な展開を認識した上で、「需給ギャッ プの縮小等に伴い、物価の下落テンポが抑えられてきている今こそ、デフレという長年の問題と決別するチャンスであり、全力で取り組むべき時である。」と高らかに宣言しており、このあたりの現状認識は私も正しいと受け止めています。問題はデフレ脱却のための政策割当てです。もちろん、政府から独立した中央銀行を除いた政府として、需給ギャップ縮小などのデフレ脱却のための施策を取りまとめたパッケージであり、日銀については、別途の金融政策があるのかもしれませんが、政府がバッターボックスに立つ一方で、日銀はスタンドから応援するだけ、といった誤解を招きかねません。「インフレはいつでもどこでも貨幣的現象」"Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon." と喝破したのはマネタリストのフリードマン教授でしたが、この「第1次報告」ではデフレ脱却のための施策で中央銀行がいかにも後景に退いているという印象を持つエコノミストは私だけでしょうか。特に、民主党政権に政権交代してから、為替は金融政策ではなく市場介入という原始的かつ暴力的な政策を割り当てられている現状を私は憂慮しています。

深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞社)

同じことで、深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞社) を最近読んだんですが、生産性に関する極めて精緻な数量分析が展開されているものの、金融政策はまったく分析の対象とされていません。リアル・ビジネス・サイクル(RBC)的な議論のひとつのカギカッコ付きの「宗教的信仰」として、金融政策は実物経済に影響を及ぼさない、というのがありますが、ある程度は影響を受けているのかもしれません。著者の深尾教授は金融政策を取り上げない理由として、例えば、この本の p.276 などで、生産性停滞や資本収益率低迷の下で、大幅な金融緩和による投資促進策を取れば、無駄な投資を生み出して「バブル経済」を再来させる危険が高く、持続性に欠ける、といった旨を繰り返し主張しています。リフレ派の論調に対する誤解として「金融政策がすべてを決める」と解釈する向きがあって、これはこれで間違いなんですが、逆に、デフレや「失われた20年」を分析するに当って金融政策を最初からまったく考慮の埒外に置く分析姿勢にも疑問が残ります。「金融政策がすべてを決める」といったリフレ派に対する決めつけの「宗教的信仰」も、逆に、「金融政策は実物経済に影響を及ぼさない」という「宗教的信仰」も、いずれも排して、科学的でよりバランスの取れた分析が必要だと私は考えています。

最近の経済学では、一般均衡的なモデルを組んで乱数を発生した上でシミュレーションを何千回も実行するという手法が取られています。経済学などの科学はモデルを分析する学問ですが、そもそもモデルが何らかの「宗教的信仰」に基づいて組み立てられていれば、何回シミュレーションしても科学的な結果が得られるかどうかは怪しくなります。モデルの組立て方に大きな分析者の裁量が働くとすれば、科学としての未熟さのひとつの現われなのかもしれません。

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