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2012年8月 8日 (水)

本日発表された国際収支と景気ウォッチャーを振り返る

本日、財務省から経常収支を含む国際収支が、また、内閣府から景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。経常収支は6月、景気ウォッチャーは7月の統計です。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

経常黒字、1-6月で最少 貿易赤字が影響
財務省が8日発表した2012年1-6月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は3兆366億円の黒字となった。黒字額は前年同期比で45%減り、上半期としては比較可能な1985年以来で最も少ない。燃料輸入の増加で貿易赤字が半期で最大になったことが影響した。
貿易収支は2兆4957億円の赤字で、赤字幅は前年同期(4957億円)を上回った。原子力発電所の相次ぐ停止に伴い、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)、原油など燃料の輸入が増えた。燃料価格の上昇も響いた。輸出は、東日本大震災でサプライチェーン(供給網)が寸断した昨年からは回復しているが、欧州債務危機の影響で欧州向け輸出が依然低調だった。
企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字は、金利低下の影響で1.8%減の7兆1467億円。歴史的な円高を背景に拡大する海外企業のM&A(合併・買収)が、国内への利益環流をもたらす構図は続いている。旅行や運送などのサービス収支は9271億円の赤字で、赤字幅は前年同期から拡大した。
同時に発表した6月の国際収支速報は、経常収支が前年同月比19.6%減の4333億円の黒字だった。IT(情報技術)関連の部品輸出が減少したことで、貿易収支の黒字幅が縮小したことが影響した。
7月の街角景気、4カ月ぶり改善 夏物商品の売れ行き好調で内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は44.2と前月から0.4ポイント上昇した。改善は4カ月ぶり。気温上昇に伴う夏物商品の売れ行きが良く、消費者心理の改善につながった。
現状は指数を構成する家計、企業の2部門で改善。エアコンや扇風機、飲料など「夏物の動きは例年以上に活発となっている」(近畿・スーパー)とのコメントが並び、7月に入ってからの気温上昇が消費意欲をかき立てた。また、企業部門では引き続き、復興に向けた動きが消費マインドを支えている。
一方で、近く終了が見込まれているエコカー補助金に関して「希望する車種が補助金申請に間に合わないため、購買意欲は低下している」(東海・乗用車販売店)など駆け込み需要の弱さを指摘する声が増えた。「受注残が積み上がっている影響で販売は伸びているが、足元での受注は少なくなってきている」(内閣府)とみられ、政策効果による一段の消費押し上げは期待しにくくなっている。
内閣府は景気の現状に対する基調判断に関して「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、弱い動きがみられる」に表現を変更し、判断は維持した。
先行き判断指数は0.8ポイント低下の44.9と3カ月連続で悪化した。エコカー補助金の期限切れに伴う自動車販売の急速な反動減を懸念する声が相次いだほか、「業界から秋以降は生産調整を行うとの声が聞こえてくる」(近畿・金属製品製造業)と生産面での悪影響を指摘する声があった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は7月25日から月末まで。

次に、いつもの経常収支のグラフは以下の通りです。経常収支を青い折れ線グラフでプロットしており、その内訳を積上げ棒グラフで示しています。色分けは凡例の通りです。季節調整済みの月次系列を取っていますので、先に引用した記事で主に取り上げられている半期の計数と少し印象が異なるかもしれません。

経常収支の推移

経常収支はここ数か月でほとんど傾向は変わらず、投資収益収支の黒字が貿易収支・サービス収支・移転収支の赤字を補って、経常収支全体としては黒字をキープしています。貿易収支への影響としては輸出もさることながら、輸入、特に燃料輸入がウェイト大きく、燃料輸入でも数量というよりも価格の影響が大きくなっている印象を私は持っています。6月の貿易赤字が縮小したのは最近の原油価格低下を反映している可能性が高いと受け止めています。投資収益収支は引用した報道の通り、金利低下に伴って黒字幅を縮小させていることは事実ですが、原油価格の変動ほど経常収支への影響は大きくないと考えるべきです。

景気ウォッチャー推移

景気ウォッチャー調査は微妙に、現状判断DIが4か月ぶりに上げた一方で、先行き判断DIは下げ続けています。現状判断DIの3つのコンポーネントのうち、家計動向と企業動向は上昇しましたが、雇用動向は大きく下げています。家計動向のうちでも小売関連は下げましたが、気温の上昇に伴って飲食関連が伸びています。企業動向では製造業は下げましたが、非製造業は上げました。なお、基調判断は「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、弱い動きがみられる」に修正され「このところ」が取れていますが、基調判断は維持しつつ、単に期間の表現の変更ということらしいです。なお、注意すべきポイントとして、雇用関連が悪いのは量ではなく雇用の質であり、典型的にはリポートの p.17 南関東の職業安定所の判断理由「求人数は前年を上回ってはいるものの、正社員の求人は求人全体の半数に満たない。パート、アルバイト、契約社員等、非正規の求人が相変わらず多い」に典型的に表れているような気がします。先週7月31日付けの雇用統計を取り上げたエントリーで指摘した通りです。

経常収支や景気ウォッチャーと直接の関係はありませんが、米国連邦準備制度理事会のバーナンキ議長が8月6日の会合でビデオ発言した際に、幸福度指標を政策の最終目標 the ultimate objective of our policy decisions とする選択肢について示唆しています。以下のリンクの通りですが、雇用については消費の原資となる収入をもたらすだけでなく、幸福度にも大きな影響を及ぼします。私は雇用を最重要視するエコノミストのひとりであると自負しています。

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