基調判断が下方修正された機械受注と消費者態度指数を振り返る
本日、内閣府から6月の機械受注統計と7月の消費者態度指数が発表されました。機械受注統計のヘッドラインとなる電力と船舶を除く民需は季節調整済みの前月比で+5.6%増の7097億円となり、消費者態度指数は季節調整済みの系列で39.7と前月から▲0.7ポイント低下し、ともに基調判断が下方修正されました。まず、これらの統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
6月の機械受注、5.6%増 内閣府、判断「一進一退」に下方修正
内閣府が9日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比5.6%増の7097億円だった。プラスは2カ月ぶり。前月に14.8%減と大きく落ち込んだことを考慮すると、低い伸びにとどまった。QUICKが8日時点で集計した民間の予測中央値は11.0%だった。
内閣府は機械受注の基調判断を「一進一退で推移している」とし、前月までの「緩やかな増加傾向がみられる」から下方修正した。下方修正は2011年9月以来、9カ月ぶり。内閣府は修正理由を「5月からの戻りが鈍く、7-9月期の見通しも慎重なため」としている。
6月の受注を業種別にみると非製造業は2.6%増だった。リースで電子計算機や建設機械などの受注が大幅に増えた。運輸・郵便や農林漁業なども貢献した。一方、通信、卸売り・小売りなどの落ち込みが目立った。
製造業は2.9%減少した。航空機関係やエンジンの受注が減った造船のほか、化学、食品製造が足を引っ張った。一方、半導体製造装置でまとまった受注があった情報通信機械や石油製品などは伸びた。
4-6月期の受注額は前期比4.1%減の2兆1701億円にとどまった。5月時点の機械メーカーの見通し(2.5%増)を下回った。今回発表の7-9月期の見通しは1.2%減だった。
船舶・電力や官公需などを含む6月の受注総額は1兆9477億円で前月比7.4%増えた。増加は3カ月ぶり。官公需が19.2%増えたことも全体を押し上げた。
消費者態度指数、2カ月連続で悪化 判断「弱含み」に下方修正
内閣府が9日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.7と前月から0.7ポイント低下した。悪化が2カ月続いたことを受けて、内閣府は消費者心理の基調判断を「ほぼ横ばいとなっている」から「弱含みとなっている」に2カ月連続で下方修正した。
指数を構成する「暮らし向き」など全4項目で悪化した。大手電機メーカーなどの大規模な人員削減報道が相次ぎ、「雇用環境」22カ月連続で前月を下回った。「収入の増え方」も2カ月連続で悪化。夏のボーナスが前年割れとなったほか、現金給与総額も減ったことが影響した。
雇用環境の悪化に加え、電力供給に対する懸念などを背景に「暮らし向き」は3カ月ぶりのマイナス。エコカー補助金の終了が近いとの見方が広がり、「耐久消費財の買い時判断」は3カ月ぶりに悪化した。
内閣府は先行きの「懸念要因がある」と指摘し、電力供給不安やエコカー補助金の終了、消費増税を巡って混迷する政治情勢などを挙げた。
1年後の物価見通しについて、ガソリン価格の下落などを背景に「上昇する」と答えた割合は60.6%と3カ月連続で減った。一方、「低下する」と答えた割合は7.4%と減少し、「変わらない」と答えた割合が増えた。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は7月15日で、有効回答数は5032世帯(回答率74.9%)だった。
次に、機械受注のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整済みのコア機械受注、すなわち、電力と船舶を除く民需とその後方移動6か月平均をプロットしており、下のパネルは需要者別の機械受注です。色分けは凡例の通りです。いずれも影をつけた部分は景気後退期です。

コア機械受注は季節調整済みの前月比で+5.6%増を記録しましたが、市場の事前コンセンサスは先月の▲14.8%減の反動もあって軽く2ケタ増を予想していたんですが、その割には物足りない結果と見なされています。上のグラフを見れば明らかです。6か月後方移動平均でも下がり続けています。基調判断でも「緩やかな増加傾向」から「一進一退」に下方修正されました。需要者別では非製造業が堅調な一方で、製造業と外需は明らかに減少に転じています。外需は機械受注の先行指標と見なされています。加えて、7-9月期見通しも季節調整済みの前期比が▲1.2%減で、1-3月期の▲4.1%減に続いて2四半期連続して減少する予想ですから、現時点では確たることは言えませんが、輸出企業を中心に製造業で設備投資の先送りが生じつつある可能性が懸念されます。エコカー補助金の財源が終了する自動車についてもまったく同じです。従って、2四半期から3四半期遅れて、すなわち、年後半から来年年初くらいまでにかけて設備投資が低調に推移する可能性は否定できません。

6月の統計が出ましたので、4-6月期の達成率が利用可能になりました。上のグラフの通りで、4-6月期の機械受注達成率は季節調整済みの系列で大きく低下して88.2%となりました。このブログで何度か取り上げていますが、経験則により90%の達成率が景気の山と谷になる場合があります。現時点の景気局面は回復初期のいわゆる「若い段階」ではないと、何度かこのブログでも主張してきましたが、これまた何度も繰返しになるものの、景気の腰折れを懸念する段階ではない一方で、マクロ経済政策が無策のままにやり過ごすべき段階かどうかも疑問が残ります。

機械受注に続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。影をつけた部分は景気後退期です。2か月連続の低下を記録し、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「横ばい」から「弱含み」に下方修正しました。先々月まで「持ち直し傾向」でしたから、2か月連続での下方修正ということになります。需要サイドの消費者マインドは急速に悪化している可能性があります。暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断の4項目ですべて低下を記録していますが、起点は雇用や賃金をはじめとする収入だと私は受け止めています。なお、どうでもいいことながら、私は記者会見には出席していないので、報道を見る限りなんですが、引用にもある通り、先行きの懸念要因として「消費増税を巡って混迷する政治情勢」が上げられています。マインド調査ながら、先行き懸念要因に政治情勢を堂々と発表する役所があったとは驚きです。
景気ウォッチャーと消費者態度指数は反対の目が出ました。景気判断の難しい局面に差しかかりつつあるという気がします。
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