池田新介『自滅する選択』(東洋経済) を読む
誠に遅まきながら、ようやく池田新介『自滅する選択』(東洋経済) を読みました。図書館の予約の順番が回って来た次第です。ということで、まず、出版社のサイトからサマリーを引用すると以下の通りです。
Summary
「ダイエットは明日から」「大事な仕事なのに後回し」……。なぜ私たちは先延ばしグセから抜け出せないのか。最新の行動経済学・心理学から選択の背景にあるメカニズムを解き明かす。
話題の双極割引を含めて、サマリーにあるように新古典派経済学が前提した合理的人間ホモ・エコノミックスというようなものではない人間の選択行動について解き明かした書籍です。正しくも、副題は「先延ばしで後悔しないための新しい経済学」となっています。アチコチで書評が取り上げられていて絶賛発売中なもので、私から特に内容紹介付け加えることはありません。消費税論議と関連して取り上げた書評やシンクタンクのリポートなども拝見しました。
内容紹介では付け加えることはないんですが、この本のアカデミックでない面について一言だけ触れると、先送りしがちな人間の不合理な選択行動については、経済学と言うよりもマーケティングなどの経営学でかなり応用されているのではないか、というのが私の疑問です。消費者金融などは典型的ですし、ほかにもありそうです。すなわち、多くの事業者が新製品などの売込みを行う際に経験的に採用している販売戦略がすでにアカデミックでない分野でかなり蓄積されており、それらのバックグラウンドにある人間心理を行動経済学的に、あるいは、解析的に解き明かした本なのではないか、という気がしています。適切な例かどうか自信がありませんが、「夕焼けになると翌日はお天気に恵まれる」という経験則を地球物理学的に解明する、といった作業を記述した本のような気がします。
だからどうだというわけではないんですが、もう一歩進めて、合理的でない、あるいは限定合理的な人間行動を基本とする経済学の体系がそのうちに出来上がるんだろうと期待しています。
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