東野圭吾『虚像の道化師 ガリレオ7』(文芸春秋) を読む
東野圭吾『虚像の道化師 ガリレオ7』(文芸春秋) を読みました。タイトルの通り、ガリレオのシリーズ第7作です。最近2作は『聖女の救済』、『真夏の方程式』と長編が続きましたが、この『虚像の道化師』は短編集で以下の4作品が収録されています。
- 第1章
- 幻惑す (まどわす)
- 第2章
- 心聴る (きこえる)
- 第3章
- 偽装う (よそおう)
- 第4章
- 演技る (えんじる)
第1章では、最新科学で宗教的な奇跡っぽいインチキを起こして金もうけに走る新興宗教を取り上げます。このシリーズにいつかは出るだろうと思っていました。警察に逮捕された後になってもなお教祖さまがインチキなしでやり直そうとする姿勢は、宮部みゆき『魔術はささやく』で恋人商法の被害者になって自殺した研究者の考え方と通ずるものがあります。第2章では、特殊な装置で幻聴を引き起こし、自殺や粗暴な行動に走らせる犯罪を暴きます。同時に警視庁の草薙と同期ながら、まだ所轄にいて本庁に取り立てられない刑事が「聞く耳を持たない」点を湯川が皮肉って指摘します。第3章では、相続が影響を受けることから、無理心中した夫婦の死ぬ順番を偽装した女性を湯川が助け船を出します。第4章では、劇団主宰者が刺殺された事件で湯川が凶器のトリックを解明します。ついでに、花火写真の謎も明らかにします。4話とも物理学的、あるいは数学的なトピックは十分理解できなかったかもしれませんが、キャラの立った登場人物の心と体の動きがとても面白かったです。湯川の一風変わった活躍もいつも通りです。
- 第1章
- 猛射つ
- 第2章
- 念波る
- 第3章
- 曲球る
- 第4章
- 透視す
なお、出版社の特設サイトでも明らかにされているように、来月10月にはシリーズ8作目となる『禁断の魔術』が出版される予定です。この『虚像の道化師』と同じ4章立ての短編集です。上の通りです。各章の読み方がクイズになっています。我が家の倅たちと私は次のガリレオ作品も大いに楽しみにしていたりします。
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