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2012年9月18日 (火)

ニーアル・ファーガソン『文明』(勁草書房) を読む

ニーアル・ファーガソン『文明』(勁草書房)

ニーアル・ファーガソン『文明』(勁草書房) を読みました。作者は英国生まれで、現在はハーヴァード大学の歴史学部およびビジネススクールの教授であり、前作の『マネーの進化史』はそこそこ話題になった記憶があります。この本は副題が上の画像に見えるように「西洋が覇権をとれた6つの真因」とされています。テレビの特集番組を基にした出版です。副題の通り、1500年から2000年までのスコープで西洋が覇権を取れた真因、本の中では「キラーアプリケーション」と呼ばれていますが、この6つの要因を明らかにしています。実は、以下の本書の6つの章立ての通りです。

第1章
競争
第2章
科学
第3章
所有権
第4章
医学
第5章
消費
第6章
労働

第1章では中国と西洋を比較して政治制度の面から競争について論じ、第2章ではトルコを欧州と比べてさまざまな科学技術を論じ、第3章では北米と南米を対比して土地をはじめとする所有権を論じています。なお、ファーガソン教授がハーヴァード大学の同僚に中南米は西洋かどうか疑わしいという会話を交わしたエピソードも見えます。第4章ではフランスと米国を引合いに出して医学を論じ、第5章では生産技術に目が行きがちな産業革命について、爆発的な生産拡大を裏打ちしていた需要の増加を論じ、第6章ではヴェーバーの「プオテスタンティズムの精神」を基に勤労の精神を説いています。
基本的には、いかにも西欧中心主義的な観念論なんですが、私は西洋の覇権については第6章の勤労がもっとも重要な役割を果たした可能性があると受け止めています。また、第5章ではリーバイスのジーンズを引合いに出して、西洋が世界に対して魅力的な商品を提供した点をファーガソン教授は強調していますが、私はそれよりも新大陸の発見に伴う貴金属の流入に起因した購買力の向上の方がより重要ではないかと捉えています。そして、何よりも、スコープを2000年以降に延ばした時の本書における中国の扱いが少し疑問に残ります。でも、私は見ていませんが、テレビ番組なんかでハーヴァード大学教授からビジュアルにプレゼンされれば、かなり説得力ある説ではないか、という気も同時にしています。
どうでもいいことかもしれませんが、私はこの本の中で紹介されているトマス・コールの「帝国の推移」という連作の絵画に興味を持ちました。上に画像を示した日本語版の装丁に使われています。かなり方向性は違いますが、禅宗の世界に「十牛図」というのがあります。一部ながら、西洋と東洋の違いを表しているような気がしないでもありません。どちらも検索すればネットに画像がありそうな気がします。見比べてみると西洋と東洋のエッセンスが得られるかもしれません。しかし、西洋でも東洋でもない世界、典型的にはアフリカであり、ひょっとしたら、中南米もそうかもしれない世界はどう分類されるのか、という興味もあります。でも、歴史と地理は違うんでしょう。

私の専門分野ではありませんが、いわゆるリベラル・アーツを扱った書籍です。多くの図書館に所蔵されているようですので、興味ある方が手に取ることを期待しています。元がテレビ番組ですので、かなり万人受けするような気もします。

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