米国民は中国をどう見ているか?
昨日、米国の世論調査機関ピュー・リサーチ・センターから「米国民と専門家の中国に関する異なる見方」 U.S. Public, Experts Differ on China Policies と題する世論調査結果のリポートが公表されています。我が国政府による尖閣諸島の国有化に対して、中国国内で大きな反発が生まれて昨日までデモが猛威をふるっていたところ、中国に関する米国世論について知っておくのも参考となるように思いますので、簡単に取り上げることとします。特に、リポートではいくつかの論点では国民一般と専門家で見方が異なる点に注目しています。まず、リポートの構成は Overview を別にして、以下の4章立てとなっています。
- Chapter 1
- How Americans View China
- Chapter 2
- Threats and Concerns
- Chapter 3
- U.S. Policy Toward China
- Chapter 4
- U.S. Leadership and the Global Balance of Power
まず、グラフや表は引用せずに結果の数字だけですが、米中関係は Good が65%を占め、Bad の29%を圧倒しています。ただし、その関係は Partner でも Enemy でもなく、Competitor であると大多数の一般国民及び専門家が見なしています。そして、米国民や専門家から見て信用の置ける国として日本は英国に次いで2番目を占めている結果が示されています。以下の表の通りです。"Trust" や "Trustworthy" という英語を使っていますが、どこやらの国の総理大臣がオバマ米国大統領に "Trust me." なんぞといいながら、結局は辞職してしまったのを思い出します。
ただし、中国を信頼が置ける Trustworthy と見なしているのは30歳以上よりも30歳未満の若い年齢層でより比率が高くなっています。また、共和党支持者よりも民主党支持者の間でより中国への信頼感が高い結果が示されています。そして、中国の何に着目するかといえば、当然ながら、軍事面よりも圧倒的に経済面に関心が高いとの結果が示されています。下のグラフの通りです。
ですから、米国に対する脅威として捉えた場合、中国の台頭はイランの核問題やイスラム原理主義グループの動向、北朝鮮の核問題などより深刻度が低く、経済問題としても国際金融の不安定よりも驚異のリストとしては下に位置すると見なされています。そして、中国との経済問題として一般国民からもっとも深刻視されているのは米国債の保有だったりしますが、専門家には大きな問題とはみなされていません。また、米国でかつて関心の高かった人権問題などはかなり後景に退いています。下の表の通りです。
最後に、G2時代ともいわれる世界秩序について、世界のリーダーシップは米国1国単独で執るべきか、米中2国でシェアすべきかの質問は圧倒的に米中2国で世界のリーダーシップをシェアとの結果が出ています。専門家グループのうち退役軍人でやや米国の単独リーダーシップの比率が高くなっていますが、それでも無視できるほどです。現実的な対応が中心となっており、経済大国だけでなく覇権国としての立場が垣間見える気がします。
最後に、この世論調査結果を離れて、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合において、景気判断を下方修正するとともに、資産買入れ基金の総額を10兆円増やして80兆円としたり、買入れの終了時期も2013年6月から12月に延長したりと、一定の追加緩和措置が決定されました。米国の連邦準備制度理事会、欧州中央銀行の追加金融緩和に追随した形になっています。為替の動向に注目したいと私は考えています。
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