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2012年11月15日 (木)

国際エネルギー機関 (IEA) の「世界エネルギー見通し」World Energy Outlook 2012

このブログでのトピックのフォローがやや遅れ気味なんですが、今週に入って11月12日の月曜日に国際エネルギー機関 (IEA) から「世界エネルギー見通し」 World Energy Outlook 2012 が公表されています。全文資料は2年後に無料で提供されるようになるまで、現時点では有料で購入せねばなりませんので、エグゼクティブ・サマリーを参照しつつ、いくつかグラフをプレス向けのスライドから引用したいと思います。

Share of global energy demand

まず、Share of global energy demand は上のグラフの通りです。1975年から2010年、2035年にかけて、エネルギー需要が世界全体で大きく増加していることはもちろんですが、生活水準の向上に伴って、中国、インド、中東のエネルギー需要のシェアが高まっているのが見て取れます。当然のように、先進国で構成されるOECD諸国のシェアが低下しています。逆U字型を示す環境クズネッツ曲線がバックグラウンドにあるとことも推察されます。

Middle East oil export by destination

これも、新興国のエネルギー需要の増加を裏付けているグラフですが、Middle East oil export by destination ということで、原油輸出国の集中している中東からの石油輸出先の推移を2000年、2011年、2035年までの推計を示しています。Japan & Korea がいかにも環境クズネッツ曲線のようなシェイプを示していますが、特に注目すべきは米国の低下です。米国における石油・ガス生産は、軽質タイトオイル、シェールガス資源の開発・利用の進展から、2020年代半ばまでに米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の石油生産国になるとともに、2030年ころに北米は石油の純輸出国となる可能性が指摘されています。この点を明らかにしたのが下のグラフ Net oil & gas import dependency in selected countries です。2010年から2035年への変化をプロットしています。米国の輸入石油への依存度が顕著に低下するとともに、ガスについては純輸出国に転じています。

Net oil & gas import dependency in selected countries

量的なエネルギー需要とともに価格も目配りされており、下のグラフは Average household electricity prices, 2035 が示されています。我が国の震災と福島第一原発の事故に伴って、発電分野において原子力が後退し、再生可能エネルギーがシェアを伸ばすのは、このリポートでも見込まれています。十分な電力が供給されるかという量的な面とともに、気にかかるのはコストですが、欧州や日本では電力価格は OECD 平均と比べても高いと見込まれています。

Average household electricity prices, 2035

最後に引用するグラフは、下の通り、Energy expenditure in 2035 compared with 2010 です。リポートでは、エネルギー効率の高い世界を実現するためのシナリオとして、中国におけるエネルギー原単位を引き下げ、単位GDP当たりのエネルギー消費を抑えるとともに、米国の自動車への新たな燃費基準の適用、欧州や日本における省エネルギーの進展などを想定しており、このシナリオが進めば、中国やインドでもエネルギーコストの上昇が抑えられ、先進国ではコスト増はかなりゼロに近づき、日本では2035年のエネルギーコストは2010年から低下するとさえ見込まれています。

Energy expenditure in 2035 compared with 2010

エネルギーのフローは世界でかなり複雑に絡まり合っており、常に一般均衡的に考えるべき課題であるとともに、食料や水資源もそうなんですが、単に経済的な観点だけでなく、安全保障の観点からも考慮する必要のあるテーマです。IEAの見通しが正しくて、米国が中東へのエネルギー依存を大きく低下させるとすれば、政治的に不安定な中東が何らかの影響を受けることは間違いありません。我が国に関しては、昨年から原子力発電の位置づけが大きく変化しつつあります。コチラも安全保障と無関係ではありません。

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