月末の政府統計の集中発表日に景気動向を見極める!
今日は、月末の閣議日で政府統計がいろいろと発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されています。いずれも10月の統計です。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比+1.8%の増産となり、失業率は4.2%で前月と変わらず、有効求人倍率は0.80と前月からやや悪化し、消費者物価上昇率は生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率がゼロに達しました。まず、とても長くなりますが、各統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
10月鉱工業生産、4カ月ぶりプラス スマホけん引
低下判断は維持
政府が30日発表した10月の鉱工業生産指数は前月比1.8%上昇し、4カ月ぶりにプラスに転じた。各社の計画に基づく年末までの生産予測も増産を見込む。ただ消費支出は弱い動きが続き、有効求人倍率も0.80倍と2カ月連続で悪化した。景気は4月から後退局面に入ったとの見方が多いが、年末から年明けにかけて底入れを探る展開となりそうだ。衆院選後の新政権は景気の後押しも課題となる。
経済産業省が発表した10月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は88.1となり、事前の市場予測(2.2%低下)を大きく上回った。中国などアジアで生産するスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けの部品が好調。電子部品・デバイスは14.7%増となり、比較可能な1998年1月以降で最大の伸びだった。
10月実績は事前に各業界に実施する予測調査を27カ月ぶりに上回った。経産省は「エコカー補助金の終了による反動減が一服するなど、低水準ながら底堅さが見えてきた」としている。ただこれまでの低下が続いた反動という面もあり、基調判断は「低下傾向にある」と前月から据え置いた。
生産指数は全16業種のうち8業種で上昇した。輸送機械も1.1%増と6カ月ぶりにプラスに転じた。新型車が投入された効果で軽自動車が増え、北米向けの普通自動車も堅調だった。
製造工業生産予測調査は11月が0.1%のマイナスだが、12月が7.5%の大幅プラス。12月は電子部品・デバイスと輸送機械がともに2ケタの増産を見込む。予測通りになれば、10-12月期の生産は前期比0.8%増と3四半期ぶりのプラスになる。生産は底入れを探る動きが出てきた。
減速が続いていた中国経済も、在庫調整の進展などで回復を示唆する指標がある。ただ電子部品は需要や生産の振れが大きく、スマホ頼みの生産回復にはやや危うさも残る。
消費と雇用の先行きは見えない。総務省が同日発表した10月の家計調査では、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり28万4238円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.1%減少した。減少は2カ月連続。消費の基調判断を前月に続き「弱含みとなっている」としている。
厚生労働省が発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント低い0.80倍となり、2カ月連続で悪化した。製造業では新規求人が5カ月連続で前年同月を下回った。
総務省が発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月比横ばいの4.2%だったが、求人減が失業率に波及する懸念もあり、厚労省は雇用の基調判断を「持ち直しの動きが弱まっている」と19カ月ぶりに下方修正した。
民主党や自民党は衆院選後に景気対策のため大型の補正予算を編成する考えを表明している。日銀を含めた政策対応も今後の景気動向のカギを握る。
10月の消費者物価、前年同月比で横ばい ガソリン高が押し上げ
総務省が30日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は生鮮食品を除く総合が99.8と前年同月と比べて横ばいだった。エネルギー価格の上昇にけん引され、下落率は前月から0.1ポイント縮小。5カ月続いたマイナスが一服した。
項目別にみると、高止まりが続くガソリンは4.2%上昇し、灯油も4.9%上がるなどエネルギー全体では4.6%上昇した。テレビなど教養娯楽用耐久財は6.6%下がったが、前月からは下落率が縮小。食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)でみても0.5%下落の98.5と、前月から下落率が0.1ポイント改善した。
一方で、生鮮食品を含む総合は0.4%下落の99.6と、下落率は前月から0.1ポイント拡大。豊作の影響で値下がりしている白菜など生鮮野菜が押し下げた。
総務省は足元の物価動向について、ガソリン価格に左右される動きが続いているため、「横ばい」との見方を維持した。
先行指標とされる東京都区部の11月のCPI(中旬の速報値、10年=100)は生鮮食品を除く総合が99.1と0.5%下落し、下落率は10月から0.1ポイント広がった。電気代や都市ガス代などの上昇幅が縮小した。テレビやルームエアコンなど耐久財も値下がりが続くなど、依然としてデフレ基調は根強い。
続いて、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。この点については、昨夜の商業販売統計を取り上げたエントリーのグラフと同じです。
引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスは前月比で▲2%を超えるマイナスでしたので、プラスの増産は驚きをもって受け止められています。主たる要因はスマートフォン関連の生産増です。エコカー補助金の終了に伴って減産が続いていた輸送機械も10月はわずかながらプラスに転じています。予測指数は11月はマイナスですが、12月には大きなリバウンドの可能性を示唆しており、中国経済の回復とともに我が国経済も景気後退期を脱する動きが始まりそうな気もします。ただし、出荷については資本財や耐久消費財は10月も引き続き減少を続けており、本格的な生産の回復は年明けになる可能性が十分あると考えるべきです。統計作成官庁による基調判断は据え置かれましたが、もう少し時間がたって生産動向の上向きがハッキリすれば、基調判断も上方修正されるものと私は予想しています。
雇用については、遅行指標である失業率こそ上がらないものの、先行指標である新規求人数はもちろん、一致指標の有効求人倍率も、いずれも雇用指標は景気後退期入りにふさわしい動きを示しています。失業率についても新規求人が減少しており、電機などの製造業のリストラが本格化する年明け以降は上昇の可能性が排除できません。一昨年の震災の影響もありましたが、雇用についてはリーマン・ショック後に本格回復に至らず腰折れしていた可能性があります。
消費者物価 (CPI) はエネルギー価格にけん引されて下落幅を縮小し、生鮮食品を除く総合のコア消費者物価の上昇率はゼロに達しました。しかし、食料とエネルギーを除くコアコアCPIは依然としてマイナスのままであり、エネルギー価格に左右されつつデフレが続く状態は変わりありません。来年で任期を迎える白川総裁が失敗した本格的なデフレ脱却は次期の日銀総裁に託されることになりそうです。
今日発表された政府統計は押し並べて現下の景気後退局面と年明けくらいの底入れを示唆しているように見受けられます。もっとも大きなリスクは為替ですが、総選挙後の政府の経済政策も今後の議論に上るものと考えています。
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