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2012年11月22日 (木)

ジェームズ・リカーズ『通貨戦争』(朝日新聞出版社) を読む

ジェームズ・リカーズ『通貨戦争』(朝日新聞出版社)

ジェームズ・リカーズ『通貨戦争』(朝日新聞出版社) を読みました。米国ではベストセラーになっているようで、なかなかにユニークな主張を展開していますが、私には少し奇異に感じられました。まず、出版社のサイトから本書の内容を引用すると以下の通りです。

通貨戦争
拡大する通貨戦争が世界経済を崩壊させようとしている。このままいけば、為替市場で始まった新しい危機がまたたく間に株式や債券、商品市場に波及し、パニックは世界中に広がるだろう。ドルは崩壊するのか。IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)が解決策となるのか。金本位制に復帰するのか。大混乱に陥り、悲惨な事態が続くのか。金融リスク管理の専門家が精緻なシナリオを描く。「ウォールストリート・ジャーナル」ベストセラー!

上の引用がよくまとめているんですが、一言で表現すれば、リーマン・ショック後の世界経済の低迷から近隣窮乏化政策的な「通貨戦争」が始まっており、このままでは米ドルが暴落して国際通貨体制が崩壊し、市場がパニックに陥るので金本位制に戻るべきである、という主張を展開しています。最後の「金本位制に戻るべきである」という部分は引用にないのでネタバレかもしれません。ご容赦ください。パニックを避けるべく、混乱の少ない順で、米ドル以外も含む複数通貨制、SDR、金本位制について国際通貨制の候補として考察が加えられますが、金本位制以外は私には理解が出来ない理由により却下され、最後に金本位制が残り、金本位制でなければという意味で、「混沌」も選択肢になっていたりします。パニック・シナリオとして示されている p.313 からのストーリーで数ページに渡って、日本政府や日銀に割り振られた役割はまったく何もなく、最近の世界経済における我が国の地位の低下が伺い知れたりして、とても興味深いものがあります。
シンクタンクなどの経済見通しを取りまとめた月曜日のエントリーでも、私は日本経済の最大のリスクは為替であるとの従来の主張を繰り返しています。日本の「ものつくり」が為替で犠牲になったのは、主力のテレビをはじめとする電機産業を見ていても明らかです。その意味で、衆議院解散後にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長の "We Want Abe!" と題する11月16日付けの以下のリポートが注目を集めたのも当然といえます。リポートでは "They have a very overvalued exchange rate, a collapsing export sector, an unreformed domestic economy, a debt challenge that makes Greece's seem easy to solve, a central bank that doesn't try too hard - currently - to reach its inflation target and, once again, a very weak economy." と分析されています。"They have ..." で始まっていますが、日本のことを指しており、為替が日本経済の低迷の起点のひとつに見なされているのが読み取れます。

最後に、本書の中の p.260 においてナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワン』について、「一つのパラダイムを破壊はしたけれど、それに代わる新しいパラダイムを生み出しはしなかった」と批判していますが、同じような批判が本書にも当てはまるかもしれません。

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