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2012年11月21日 (水)

貿易収支は赤字が続くが、中国の反日感情はすでにピークアウトしたのか?

本日、財務省から10月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる輸出は季節調整していないベースで前年同月比▲6.5%減の5兆1499億円、輸入も▲1.6%減の5兆6989億円、差引貿易収支は▲5489億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

対中自動車輸出82%減 貿易赤字、10月では最大に
財務省が21日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、中国向け自動車輸出は前年同月から82.0%減少した。尖閣諸島の国有化をきっかけに日本製品の不買運動が広がった影響が出た。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4065億円の赤字となった。全体の貿易収支も、10月としては過去最大の5489億円の赤字となった。
中国向け自動車輸出の下げ幅は、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝で反日感情が高まった2001年10月(88.3%減)以来、11年ぶり。中国経済が減速していた影響もあって、自動車部品(28.1%減)や重機用エンジンなどの原動機(42.7%減)も大きく下げた。
中国向け輸出は全体で11.6%減の9477億円となった。一方、中国からの輸入はスマートフォン(高機能携帯電話)など通信機器(23.5%増)を中心に増え、3.6%増の1兆3542億円。赤字額は今年1月(5895億円)以来の大きさだった。
全体の貿易赤字は4カ月連続で、赤字額は市場予想(3500億円)を上回った。
輸出は6.5%減の5兆1499億円で、5カ月連続の減少となった。自動車が中国や欧州向けを中心に12.3%減った。鉄鋼も中国や韓国の景気減速が響いて9.7%減と落ちこんだ。一方で半導体など電子部品は韓国などアジア向けが伸びて4.1%増と22カ月ぶりにプラスに転じた。
輸入は1.6%減の5兆6989億円。2カ月ぶりに減少した。サウジアラビアなどからの原油が19.6%減った。10月1日に石油石炭税の引き上げがあり、9月に燃料輸入が急増した反動が出た。中国や韓国からのスマホを中心に通信機器は29.6%増と高い伸びを続けた。
地域別の貿易収支をみると、米国向けは自動車を中心に輸出が3.1%増と12カ月連続で増え、対米黒字も4164億円と7.0%増えた。増加は2カ月ぶり。景気減速が続く欧州連合(EU)向けは輸出が13カ月連続で減少し、2カ月ぶりに貿易赤字に転じた。中国向けは8カ月連続の赤字で、中国を含むアジア向けの貿易黒字も20カ月連続で減少した。
先行きは「緩やかに景気拡大が続く米国向けの輸出が底堅く推移する」(大和総研)と、年明け以降に輸出が徐々に回復するとみる専門家が多い。ただ、中国での日本製品の不買運動の影響がどれほど続くかなどは見通しづらく、依然として不透明な面は大きい。

次に、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

貿易統計の推移

季節調整していない原系列の貿易収支は4か月連続の赤字ですが、上のグラフから明らかなように、季節調整済みの系列では、震災発生の2011年3月から直近の2012年10月まで、2011年9月の例外を除いて、1年半余りに渡って貿易赤字が続いています。基調として貿易収支は赤字、というのが根付いた可能性があります。特に、10月統計で輸入が減少しましたが、引用した記事にもある通り、石油石炭税の増税前の駆込み需要の後の反動が出たものであり、特に石油価格が低下したわけでもなく、引き続き、発電向けの原油輸入は高水準にあります。

輸出の推移

上のグラフは特に輸出について詳しく見ています。いずれも季節調整していない原系列の金額ベースの輸出の前年同月比を寄与度で分解しているんですが、上のパネルは数量と価格に、下はアジア・北米・EUとその他の地域別に、それぞれ分解しています。上のグラフから、輸出の停滞は明らかに数量に起因し、地域別には北米が底堅く推移する一方で、欧州や中国をはじめとするアジア向けの輸出は減少を続けています。地域別の景気動向に合致した傾向を示しているわけで、特に、中国区向け輸出は景気動向に加えて領土問題が影を落としていると受け止めています。ただし、中国向け輸出は9月が前年同月比▲14.1%減だったのに対し、10月は▲11.6%減と減少幅を縮小していますので、貿易から読み取れる事後的な中国の反日感情は薄らいでいる可能性があります。領土問題が両国の貿易に及ぼす経済合理性がかなり小さいことは薄々気づいているんだろうと思います。

私は中国経済の専門家ではありませんが、中国の最大の輸出先は米国ではなく欧州であることくらいは知っています。ですから、ソブリン危機に伴う欧州の景気低迷は輸出を通じて日本以上に中国景気に悪影響を及ぼしている可能性があります。

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