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2012年11月19日 (月)

来年度の経済見通しやいかに?

先週月曜日11月12日に今年7-9月期のGDP統計1次QEが発表され、その後、シンクタンクなどからいっせいに経済見通しが発表されています。来月の2次QEの後にも改定見通しが発表されるんでしょうが、現時点で利用可能な情報に的を絞って、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。表に盛り込んだ年度のGDP成長率だけでなく、シンクタンクによっては四半期別の計数や成長率以外の物価上昇率や失業率なども発表している場合もあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名201220132014ヘッドライン
日本総研+0.7+1.1+0.52013年前半は自動車の反動減の影響が薄れるほか、海外景気も回復に向かうとみられるため、+1%台半ばの成長に復帰する見通し。このことから、わが国は今年の春以降に景気後退期に入った可能性が高いものの、比較的短期で後退局面を脱する見通し。さらに2013年度後半は、消費税率の引き上げを控え、耐久財消費や住宅投資などが増加する見込み。
ニッセイ基礎研+0.7+1.7▲0.5中国をはじめとした海外経済の持ち直しによって輸出が底入れする2013年1-3月期にはプラス成長に転じ、景気後退は比較的短期間で終了する可能性が高い。2013年度に入ると、個人消費、住宅投資で消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生し、高めの成長が続くだろう。駆け込み需要によって2013年度の実質GDPは0.7%押し上げられると試算される。ただし、2014年度は駆け込み需要の反動減に物価上昇に伴う実質所得低下の影響が加わるため、マイナス成長は避けられないだろう。
大和総研+0.7+0.9n.a.今後の日本経済のリスク要因としては、①「欧州ソブリン危機」の深刻化、②日中関係の悪化、③米国の「財政の崖」、④地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、⑤円高の進行、の5点に留意が必要である。
みずほ総研+0.8+1.1n.a.中国向けを中心とした輸出持ち直し、エコカー補助金の反動一巡で年明け後の景気は回復に向かうが、復興需要のピークアウトが予想される中で、2013年度前半は浮揚感の乏しい展開に。年度後半は消費税率引き上げ前の駆け込み需要により成長率ペースが加速。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.8+2.3+1.1世界経済の持ち直しに加え、13年初には、12年度補正予算の編成も想定しており、これらが景気を押し上げると予想している。13年度についても、復興事業が景気を下支えするほか、年度下期を中心に14年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の発生も見込まれる。また、設備投資の中期循環が上昇局面に転じるとみられることもあり、景気は堅調に推移しよう。一方、14年4-6月期には、駆け込みの反動に消費税増税の影響もあり、景気は一時的に弱含むものの、反動減の一巡後は、世界経済の堅調な推移、設備投資の中期循環の上昇などに支えられ、勢いを取り戻すことになろう。
三菱総研+1.0+1.5n.a.年内は海外経済の低迷や政策効果の剥落などを背景に内外需とも弱い状態が続くが、13年入り後は海外情勢の改善から輸出が持ち直し、さらに春以降は生産や内需にも波及するかたちで徐々に回復軌道に戻っていくと予想する。したがって、調整局面は比較的短期に止まるであろう。
第一生命経済研+0.8+1.3▲0.1足元の景気下振れを背景に成長率見通しを下方修正したものの、先行きについては悲観的な見方はしていない。12年3月をピークとして始まったとみられる景気後退局面は長期化せず、13年1-3月期以降には中国向け輸出の回復等を背景として景気は緩やかに持ち直すと想定している。その後、消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴って13年度後半にかけて成長率が高まるだろう(駆け込み需要によって13年度の成長率は0.5%ポイント程度押し上げられると想定)。一方、14年度には駆け込み需要の反動から景気は一時的に落ち込むことが予想され、年度全体でもマイナス成長になると予想する(再度の景気後退局面入りは予想していない)。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5+1.0n.a.2013年度は、景気回復の動きが次第に確かなものになってくると予想される。年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要が加わるため、勢いに弾みがつくことになろう。公共投資のマイナス寄与が続くものの、輸出の持ち直しが続くことに加え、民需も底堅さを維持すると考えられる。ただし、回復力は弱く、期待される輸出の回復が遅れると、景気の底打ちのタイミングが後ずれする懸念がある。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+0.7+1.1n.a.日本経済は足元にかけて悪化しているが、海外経済の持ち直しに支えられて輸出が持ち直すとともに、自動車販売・生産の反動減も一巡してくるなかで、日本経済も持ち直しに転じていく可能性が高い。2013年度後半にかけては、消費税率の引き上げを控えた駆け込み需要が一時的に日本経済を押し上げることになろう。ただし、復旧・復興需要による下支えが次第に薄れていくとみられるなか、海外経済の回復が力強さには欠けると見込まれるとともに、民間需要の回復も緩慢なものに留まるとみられるため、基調として、回復ペースは緩やかなものに留まる可能性が高いと考えている。
伊藤忠商事経済研+0.9+1.6▲0.82012年後半の日本経済は民需と外需の低迷で極めて厳しい状況に陥り、景気後退局面。海外経済は2012年10~12月期から持ち直しも、日中間のトラブルが響き、その恩恵が日本に及ぶのは2013年以降に。2013年度の日本経済は、輸出の回復と消費税率引き上げ前の駆け込み需要により成長ペースが加速。しかし、2014年度は駆け込み需要の反動減でマイナス成長への転落を余儀なくされる見込み。
農林中金総研+0.8+1.3+0.7国内景気は2012年春ごろに「山」を通過、既に後退局面にある。復興に向けた公共事業は高水準で推移しているが、欧州債務危機や中国経済の減速、さらには日中関係の悪化などによる輸出の落ち込みやエコカー購入補助金制度終了後の乗用車販売の反動減などを相殺するには力不足であった。12年10-12月期もマイナス成長が続くと見られる。しかし、13年に入れば、徐々に世界経済の底入れの影響が出てくるものと思われ、国内景気も緩やかに持ち直し始めるだろう。さらに、13年度下期には消費税増税前の駆け込み需要も発生し、景気は一時的に押し上げられるが、14年度にはその反動減が出て景気は再び低調になると予想する。

極めて大雑把に、本年度2012年度の成長率見通しは大幅に下方修正されるものの、ギリギリでプラス成長を確保し、来年度2013年度は▲0.3-▲0.5%くらいのかなり大きなマイナスのゲタを持ちつつも、世界経済の持直しに伴う輸出増や消費税率引上げ前の駆込み需要に支えられて潜在成長率をやや上回る成長を示す、というのがエコノミストのコンセンサスであろうと私は受け止めています。問題は2014年度で、上のテーブルに取り上げた機関がすべて2014年度まで見通しを発表しているわけではないので何ともいえませんが、少なくとも、エコノミストであればほぼ全員が2014年4月から消費税率が引き上げられると考えているように私には見え、景気条項で先送りされるとの説を取るのはエコノミストの中では超少数派と考えています。余りお付き合いがないのでエコノミスト以外についてはよく分かりません。その上で、消費税率が引き上げられるんですから、直前の駆込み需要の反動もありますし、2014年度は2013年度よりも大幅に成長率がダウンすることは明らかですが、プラス成長を維持するのか、マイナス成長に転ずるのか、また、マイナス成長に転ずるとすれば景気後退まで達するのかどうか、がポイントになります。結論として、私は2014年度はマイナス成長に転ずるものの景気後退には至らない、と考えています。そう思って見るせいか、エコノミストの中でも同様の見方が多いような気がしないでもありません。もっとも、上のテーブルでは2014年度見通しを明らかにしている6機関のうち、プラスとマイナスは半々だったりします。基本的には、消費税率引上げ直前の駆込み需要の大きさに依存し、駆込み需要が大きいと反動減も大きく、逆は逆ということになります。ただし、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は観点が異なり、設備投資の中期循環が上向きに転じることにより日本経済は力強い成長経路に乗る、との見方です。誠についでながら、先週、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中所長のお話を伺う機会があり、長期のコンドラチェフ・サイクルから始まって、クズネッツ・サイクル、ジュグラー・サイクル、キチン・サイクルまで4つの景気循環のサイクルがすべて上向きになる「ゴールデン・サイクル」に日本経済が入るとの見通しを明らかにされていました。何ら、ご参考まで。
見通しに対するリスクもいくつかあり、主として海外経済に起因します。多くのリポートで指摘されている3点を私の見方でショックが大きい順に並べると、第1に欧州ソブリン危機です。エコノミストの間でもギリシア財政の破綻はかなり「あり得る」likely と見なされている一方で、私はギリシアよりもさらに規模の大きなスペインを懸念しています。第2に中国経済のバブル崩壊です。市場経済的な見方を当てはめれば、中国経済は景気後退にあるような気もするんですが、マルクス主義経済学というのは景気循環をコントロールする目的で形成されていますから、それほど落ち込みは大きくないものの、先行きは不透明です。しかし、多くのエコノミストは中国経済については短期楽観・長期悲観なんだろうと私は考えています。第3の米国の財政の崖はほとんどのエコノミストが回避されると見込んでいるんですが、実際の議会と大統領府というか、政治レベルの進展がマーケットから見て遅いという不安は残り、無用のジグザグした動きが引き起こされる可能性は否定できません。しかし、私が従来からもっとも強く指摘しているポイントですが、日本経済の最大のリスクは為替だと私は長らく考えています。設備投資循環の先行きについてはブログというメディアですので詳しく取り上げませんが、たとえ企業のキャッシュフローが投資に向かうと仮定しても、為替次第で国内で投資されるか、海外で投資されるか、により国内経済には大きな違いをもたらすことは認識すべきです。我が国の企業は多国籍企業なんだということをもう一度思い出す必要があるのかもしれません。為替は輸出というGDP需要項目に影響をもたらすだけでなく、投資に対しても国内で投資するか、海外に漏れるか、という違いをもたらす可能性を忘れるべきではありません。

実質GDP成長率の推移(四半期)

最後に、上のテーブルに上げた中では、ニッセイ基礎研、第一生命経済研、伊藤忠経済研の結果が私の意見にかなり近いんですが、一例として、ニッセイ基礎研のリポートの p.7 の実質GDP成長率の推移 (四半期) のグラフを引用すると上の通りです。四半期別の見通しですから、消費税率引上げ前後の駆込みと反動もよく見て取れます。少し前まで実施されていた家電エコポイントやエコカー補助金などにより耐久消費財の買換えサイクルが変化したとか、2015年度の2段階目の消費税率引上げを見越してとか、駆込みと反動は大きくないとの意見もチラホラ見なくもないんですが、これだけ情報化が進展するとともに、デフレ下で消費者が価格に敏感になっていますから、消費税率引上げに伴う駆込みと反動はかなり大きいと私は考えています。

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