本日発表の機械受注と景気ウォッチャーと国際収支を振り返る
本日、内閣府から機械受注と景気ウォッチャーが、また、財務省から経常収支などの国際収支が、それぞれ発表されています。機械受注と経常収支は9月の、景気ウォッチャーは10月の統計です。いずれも、少しびっくりするくらいに弱い数字が出ています。景気後退はいよいよ確定なのかもしれません。まず、長くなってしまいますが、いつもの日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。
9月機械受注、2カ月連続減少 10-12月は3期ぶり増加見通し
内閣府が8日に発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比4.3%減の6862億円だった。電気機械など製造業からの受注が少なく、2カ月連続でマイナスとなった。
機械受注統計では製造業や非製造業(船舶・電力を除く)を別々に季節調整しているため、単純合計が全体の受注額と合わないケースがある。このため製造業が2.8%増、船舶・電力を除いた非製造業は1.3%増と、ともにプラスとなった。
2カ月ぶりにプラスとなった製造業では、その他輸送用機械業からは航空機などの受注が増えた。一方、電気機械業から半導体製造装置の受注が減少。一般機械や自動車及び付属品業からは工作機械の受注が減った。非製造業では、運輸業から鉄道車両が受注されるなど100億円を超える大型案件が押し上げた。
7-9月期の実績は前期比1.1%減の2兆1456億円だった。内閣府が8月にまとめた見通し(1.2%減)を上回ったものの、2四半期続けてマイナスとなり、受注が活発とは言えない。
10-12月期は5.0%増と3四半期ぶりのプラスを見込む。製造業が6.9%減と落ち込む一方で、電子通信機械や鉄道車両の受注が見込まれる非製造業では14.3%増と比較可能な2005年以降で最大の伸び率が見込まれている。
内閣府は機械受注について「足元は弱い動きもみられるものの」との文言を加えたが、10-12月期が好調を維持される見通しから「基調としては一進一退で推移している」と判断は据え置いた。
船舶・電力や官公需を含む9月の受注総額は前月比9.6%増の1兆8160億円と3カ月ぶりのプラスだった。電力業からボイラーや原子炉設備の受注が増えたこともあって民需は15.4%増。海外経済の減速を受けている外需もほぼ横ばいだった。外需の10-12月期の見通しは前期比1.8%増と3四半期ぶりのプラスが見込まれている。
街角景気、3カ月連続で悪化 判断「さらに弱まっている」に修正
内閣府が8日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.2ポイント低下の39.0と、3カ月連続で悪化した。指数が40を下回るのは2011年5月(36.0)以来、1年5カ月ぶり。内閣府は基調判断を前月の「このところ弱まっている」から「さらに弱まっている」へ下方修正した。判断を引き下げるのは2カ月連続。
沖縄県・尖閣諸島の国有化を巡る日中関係の悪化懸念が一段と強まった。中国や尖閣問題に関連するコメント数は83と、9月調査の59から増えた。「海外旅行は急激に落ち込んでいる」(近畿の都市型ホテル)、「中国への販売が厳しくなっている」(北陸の精密機械器具製造業)など声が相次いだ。
エコカー補助金終了に関しては「来店客数・販売台数とも激減している」(四国の乗用車販売店)といい、反動減の影響がみられ始めた。世界経済の減速を背景に「製造業の求人意欲が相変わらず鈍い」(中国の人材派遣会社)と指摘があった。
先行き判断指数は1.8ポイント低下の41.7と6カ月連続で悪化。現状・先行きとも好不況の分かれ目となる50を6カ月連続で下回った。全国的に景況感が悪化するなか、近畿の先行き判断指数は改善した。阪急百貨店うめだ本店の増床開業などで「年末にかけて徐々に活気を取り戻す感じがする。年賀状印刷の受注も昨年を上回っている」(コピーサービス業)という。調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象と、3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
9月経常収支、5036億円黒字 黒字額は7割減、所得黒字も縮小
財務省が8日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5036億円の黒字だった。貿易収支が赤字に転落したほか、所得収支が3カ月ぶりに黒字幅が縮小したため経常黒字幅は前年同月比68.7%減と大幅に減った。8カ月連続で黒字だったが、季節調整済みでみると経常収支は1420億円の赤字。統計として連続性のある1996年以降で初の赤字に陥った。
財務省によれば9月は輸出額が多い特徴があり、季節調整済みは月ごとに出やすい特色によるずれを一定の計算式で修正して算出している。連続性を考慮せずデータをさかのぼると81年3月に記録して以来の赤字になった。
貿易収支は輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで4713億円の赤字。赤字は6カ月連続。欧州連合(EU)や中国向けの輸出が減少した。輸出額は5兆1045億円で10.5%減。4カ月連続の減少だった。さらに原油や液化天然ガス(LNG)の輸入が増加し、輸入額は2カ月ぶりに増加。4.5%増の5兆5758億円だった。
旅行や輸送動向を示すサービス収支は2801億円の赤字。輸送収支の赤字幅拡大が響き、赤字幅は1897億円拡大した。
所得収支は6%減の1兆3098億円の黒字。債券利子の受取額が減ったため黒字幅が3カ月ぶりに縮小した。
併せて発表した4-9月期の経常収支は2兆7214億円の黒字。経常黒字は前年同期比41.3%減で、4期連続で黒字額が縮小した。上半期としては85年以降で過去最小の黒字額で、半期ベースでみると90年度下半期(90年10月-91年3月)の2兆1932億円に次ぐ小ささだった。所得収支は直接投資による再投資収益の受取額増加が寄与し、4期連続で拡大したが貿易収支の赤字幅拡大が響いた。
貿易収支は2兆6191億円の赤字で、比較可能な85年以降で貿易赤字は過去最大だった。米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)に対して輸出額を伸ばしたが、欧州連合(EU)や中国向けが落ち込んだ。商品別では自動車や自動車部品の輸出が好調だったが、半導体電子部品や船舶が不振だった。一方、輸入はLNGや原油などが増えた。
続いて、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

9月のコア機械受注は2か月連続の前月比マイナスを記録し、横ばい圏内から下降線をたどり始めた雰囲気も見えます。基調判断も「一進一退」とはいいつつも、「足元は弱い動きもみられる」との文言を加えて、半ノッチ下方修正されたと受け止めています。ただし、先行きについては、四半期別のコア機械受注は4-6月期▲4.1%減の後、7-9月期も▲1.1%減を記録したものの、10-12月期は+5.0%増が見込まれています。私は機械受注の先行きが増加に転じる要素はほとんどないと考えていますが、この10-12月期の受注増見込みを受けて、グローバルPMIの回復とともに我が国の機械受注も緩やかに復活するシナリオを描くエコノミストも少なくありません。ということで、以下に機械受注に対する悲観論と楽観論をそれぞれサポートするグラフを取り上げます。

まず、悲観論を代表して、官公需のピークアウトの可能性を示唆するグラフです。官公需は「電力と船舶を除く民需」で定義されるコア機械受注の外数であり、GDPベースの民間設備投資につながるわけではありませんが、上のグラフに見る通り、復興需要に伴う官公需はピークアウトした可能性があります。今後は、被災地とは関係なく機械受注の増加にもつながらない復興予算の消化が増加する可能性があると覚悟すべきです。

楽観論としては達成率の向上が上げられます。上のグラフの通りです。ジワジワと低下傾向を示して、景気後退期入りの経験則である90%ラインを4-6月期は割ったんですが、7-9月期は再び上昇して92.1%となりました。基本的には、7-9月期のコア機械受注の前期比の実績が▲1.1%減ながら、見込まれていた▲1.2%を上回ったことに起因しますが、少なくとも力強い増勢とはとてもいえません。

景気ウォッチャーの推移は上のグラフの通りです。現状判断DIは3月をピークに、先行き判断DIは4月をピークに、下降傾向にあります。基調判断は「さらに弱まっている」へ明確に1ノッチ下方修正されました。景気ウォッチャーは家計・企業・雇用の3指標から構成されていますが、10月の現状判断DIでは特に雇用の悪化が大きくなっています。現状判断DIのうちの雇用関連DIは、昨年半ばから1年半余りにわたって50を超えていたんですが、9月の50.8から10月は一気に44.3まで低下しました。企業関連において、エコカー補助金の終了に伴う自動車販売の反動減に加え、海外景気の減速や尖閣諸島問題の影響による輸出の減少があり、雇用関連も製造業を中心に雇用調整の動きが見られたと報告されています。

経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線で経常収支の収支尻をプロットした上で、その内訳を積上げ棒グラフで示しています。色分けは凡例の通りです。最初に引用した記事にもある通り、「超々」がつくくらい久し振りに単月で季節調整済みの経常収支が赤字に転落しました。貿易・サービス収支が大きくマイナスに落ち込んでいるのがグラフから見て取れると思います。貿易収支の輸出は世界経済の停滞とともに欧州や中国向けが2ケタ減となった一方で、輸入は発電向けなどの原油やLNGが増加し、季節調整値で見て、輸出入の差額の貿易収支は1兆円近い赤字を記録しました。経常収支の赤字は一時的なものであり、何か月も連続するとは考えていませんが、現下の日本経済の象徴的な受止めがなされる可能性がありますし、何よりも長期的には我が国の高齢化のいっそうの進展に伴う貯蓄率の低下とともに経常収支が赤字化するのは確実ですので、例外的な出来事で済ませるには抵抗があります。

最後に、我が国の経済指標から離れて、米国大統領選挙の出口調査の結果がピュー・リサーチ・センターのサイトで公表されています。上の表を見れば明らかですが、オバマ大統領の再選をサポートしたのは、男性よりも女性、白人よりも黒人やヒスパニック、年齢層では引退世代よりも若い勤労世代ということになります。最後の年齢層だけを取り出すと、日本の年齢構成ではロムニー候補が当選していたかもしれないと勝手に想像しています。
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