2010年度「社会保障費用統計」に見る我が国の高齢者優遇!
先週11月29日の木曜日に国立社会保障・人口問題研究所 (IPSS) から2010年度の「社会保障費用統計」が公表されています。昨年までは、毎年ILO基準による「社会保障給付費」を公表していましたが、今年7月に社会保障費用統計として統計法2条第4項第3号による基幹統計指定を受けたことに伴い、名称を「社会保障費用統計」と改訂し、ILO基準に加えて国際比較が可能なOECD基準の社会支出の集計結果を追加して公表することとしたそうです。当然ながら、pdf の全文リポートもアップされています。まず、リポートから2010年度の社会保障給付のポイントを3点だけ引用すると以下の通りです。
社会保障費用の総額
・2010年度の社会保障給付費の総額は103兆4,879億円である。
・2010年度の社会保障給付費の対前年度伸び率は3.6%であり、対国内総生産比は21.60%である。
・国民1人当たりの社会保障給付費は80万8,100円であり、1世帯当たりでは208万9,200円である。
次に、かなり長期のデータをプロットしたグラフとして、リポート p.11 図4 部門別社会保障給付費の推移を引用すると以下の通りです。一目瞭然で引退世代への「年金」が大きく増加しているのが見て取れます。
「福祉その他」に分類されてしまっているんですが、子ども手当はこのカテゴリーに含まれます。ですから、政権交代後の2010年度に増加しているのが見て取れます。もちろん、絶対額では引退世代向けの年金にまったく太刀打ち出来ません。世界の中でも高齢化が進んでいる我が国ですから、ある程度は割り引いて考える必要がありますが、シルバー・デモクラシーの圧倒的な政治的パワーにより、高齢者がとてつもなく優遇されていることが示唆されています。次に時系列で見た後は、子ども手当支給開始前ながら2009年の国際比較のグラフは下の通りです。
上のパネルの社会保障支出のシェアを見れば明らかですが、我が国は持てる財源の半分近くを高齢区分に注ぎ込んでおり、家族区分は米国についてシェアが低くなっています。下のパネルのGDP比を見れば身の丈にあった社会保障かどうかが分かりますが、我が国の高齢区分の社会保障支出のGDP比はフランスよりは低いものの、高福祉国として世界に名だたる北欧のスウェーデンよりも手厚く、圧倒的な財政リソースが高齢者に流れ込んでいることが明らかです。再び同じ結論ですが、シルバー・デモクラシーの投票行動に支えられて、圧倒的な高齢者優遇と世代間格差がまかり通っているのが見て取れます。
社会保障に関連して、小笠原泰・渡辺智之『2050 老人大国の現実』(東洋経済) を読みました。「団塊ジュニアのイナゴ化」とか、「社会保障の液状化」とか、決して学術書では見られない用語に戸惑いましたし、かなり観念的な論調が繰り広げられており、特に「ナショナルミニマム国家」というのも十分に理解した自信はないんですが、世代間格差について憤りを表明している点については共感しました。
昨夜の7時からのNHKニュースの選挙特集で各党党首が出演していましたが、野田総理が「現在の一番の社会的弱者は将来世代である」といった旨の発言をしていました。まったくその通りだと思います。選挙権がないゆえに政治に意見を反映することが出来ていません。12月16日の総選挙では私自身は少しでも世代間格差を縮小するような投票行動に努めたいと考えています。
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