東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文芸春秋) を読む
東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文芸春秋) を読みました。さすがに定評あるシリーズの8冊目、まずまず面白かったです。でも、このシリーズの最高傑作ではないでしょう。まず、出版社の特設サイトから「内容紹介」を引用すると以下の通りです。
内容紹介8月刊行の『虚像の道化師 ガリレオ7』を読まれた東野圭吾ファン、ガリレオシリーズファンのみなさん。驚かれることと思いますが、早くも次なるガリレオ新作をお届けすることとなりました。"誰も知らなかったガリレオ" の登場です。『虚像の道化師』を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはない、とまで思っていた東野さんが、「小説の神様というやつの気まぐれをたっぷり思い知らされた」という作品。絶対のおすすめです。
次に、同じく出版社の特設サイトから章別構成を引用すると以下の通りです。読み方は上から順に、「みとおす」、「まがる」、「おくる」、「うつ」です。最後の第4章だけが中編と呼べる長さで、本書のクライマックス、「湯川が殺人を…」を含む内容です。その前3章は短編といえます。全編が書下しだそうです。
- 透視す
- トリックは単純なほど騙されやすい。科学の世界でも同じだ。
- 曲球る
- あなたがいう抵抗は立派な努力に見えます。努力することに無駄はない。
- 念波る
- 運命なんてものは信じない。サンタクロース以上に。
- 猛射つ
- 私は君にそんなことをさせたくて科学を教えたんじゃない。
最初に「このシリーズの最高傑作ではない」と控えめに書きましたが、誠に申し訳ないながら、最初の短編3作は凡庸です。「透視す」の赤外線カメラを用いた透視トリック、「曲球る」のバドミントンのシャトルの動きを野球の変化球に例える流体力学、まではいいとしても、「念波る」のテレバシーにいたっては科学は何の関係もなく、いわばカギカッコ付きの「粉飾」に用いられているだけです。しかし、本書のクライマックスとなる中編「猛射つ」の出来栄えはさすがです。これを読むだけでも本書を買う値打ちがあるとい考えるガリレオ・ファンもいそうな気がします。最終話の最後で、湯川がレールガンを発射していたかどうかはさて置いても、もしも、私であれば殺人になるとしても確実に打ったと思います。第3話「念波る」が殺人直前の殺人未遂であるほかは、すべて殺人事件であるというのも本書のひとつの特徴なら、最後の中編「猛射つ」以外は科学ネタが小粒であるようにも見受けられます。さらに、科学よりは人情話にとても近い気がして、そのうちに加賀恭一郎と湯川学の共演が実現するんではないかと期待しています。
このところ何冊か買っておきながら子供達に先に回した上に、期末試験のシーズンに入ってしまい、私のところに届くのがとても遅くなっています。この後、湊かなえ『母性』、有川浩『空飛ぶ広報室』、池井戸潤『七つの会議』などなど、年末年始休みも含めてせっせと読書にいそしみたいと思います。
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