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2012年12月31日 (月)

よいお年をお迎え下さい!

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今年もいよいよ押し詰まって大晦日となりました。今年最後の Financial Times の社説欄の画像は上の通りです。"Raising the curtain on 2013" とタイトルされています。来年はどうなるんでしょうか。「英国は3番底の景気後退に陥るか?」から始まって、2013年に起こり得るいくつかのイベントが上げられていますが、アジアに関しては「日本と中国は戦火を交えるか?」といった物騒な蓋然性が議論されていたりします。舞台真ん中あたりで国旗を持って対峙しています。

今年最後のポケモンはツタージャです。くさへびポケモンですから、来年の干支にピッタリです。

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よいお年をお迎え下さい!

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2012年12月28日 (金)

御用納めに公表された経済指標から景気を考える!

今日は役所の御用納め、月末どころか年末最後の閣議日で、経済統計もいっせいに発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数商業販売統計、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率毎月勤労統計などの雇用統計、さらに、総務省統計局の消費者物価指数などです。特に、消費者物価指数(CPI)は安倍内閣がインフレ目標を日銀に求めていますので、従来よりも注目度が上がったかもしれません。まず、いくつかの指標のヘッドラインなど本日発表された指標を総合的に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、先行き持ち直しも 11月は2カ月ぶり低下
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は86.4となり、前月比1.7%低下した。2カ月ぶりにマイナスとなったが、各社の生産計画に基づく予測調査では12月、13年1月ともに増産を見込んでいる。景気は後退局面に入っている可能性が濃厚だが、年明けにかけて底入れを探る展開になりそうだ。
11月の生産指数は市場予測(0.5%低下)を下回った。半導体製造装置の海外向け生産が減るなど一般機械が5.3%低下。橋梁やビル向けアルミサッシなどの金属製品も5.1%下がった。
電子部品・デバイスは1.3%上昇し、3カ月連続で増産だった。台湾向けのデジタルカメラや、中国で生産するスマートフォン(スマホ)向けの部品生産が好調だった。
業種別にみると、全16業種中11業種で低下しており、経産省は「生産は低下傾向にある」との基調判断を前月から据え置いた。ただ同時に発表した製造工業生産予測調査では12月が前月比6.7%、来年1月も同2.4%の上昇を見込み、先行きには持ち直しの兆しが出ている。
予測通りになれば、エコカー補助金終了後に落ち込んでいた自動車などの輸送機械のほか、情報通信機械、鉄鋼、金属製品などが増産に転じる。
一方で個人消費と雇用の先行きは不透明だ。総務省が発表した11月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり27万3772円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.2%増えた。2カ月ぶりのプラスだが、月末にかけて寒くなり冬物衣料への支出が伸びた要因が大きく、同省は消費の基調判断を「弱含み」と据え置いた。
季節調整済みの前月比でみると実質0.1%減。総務省は消費が持ち直しつつあるかは「しばらく様子をみる必要がある」としている。
11月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の4.1%となり、3カ月ぶりに改善した。女性の失業率が3.8%と0.1ポイント改善したのに対し、男性は4.3%で横ばい。医療・介護やサービス分野での就労が進んで女性の完全失業者は5万人減ったが、男性の失業者は2万人増えた。
厚労省が同日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は0.80倍で前月と横ばいだった。11月の毎月勤労統計調査(速報)によると、製造業の所定外労働時間(残業)は1人あたり平均で前年同月比6.2%減った。製造業の減産やリストラで男性の雇用・賃金環境が厳しくなり、働きに出る女性が増えている可能性がある。

続いて、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。この点については、以下のいくつかのグラフでも同じです。

鉱工業生産指数の推移

鉱工業生産は足元の12月こそ▲1.7%の前月比減産となりましたが、製造工業生産予測指数で見て、先行きの12月は前月比+6.7%増、来年1月は+2.4%増と増産が見込まれています。足元11月の減産は先月の統計発表時点で予想されていたことであり、先月から減産幅が大きくなったのは一般機械の蒸気タービン部品の下振れによると聞き及んでいます。ですから、年末から来年初めの1月2月にかけて、生産が反転して景気が底を打つ可能性があると考えています。また、産業別の予測指数から見て、年内いっぱいはスマホ関連需要が、年明け以降はエコカー補助金終了後の調整を終えた輸送機械が生産を牽引するものと考えられます。もちろん、円安の進展による輸出増も一定のラグを伴って生産増加に寄与するものと期待してよさそうです。

商業販売統計の推移

商業販売統計のうち、個人消費に直結する小売販売のグラフは上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比、下は季節調整指数をそれぞれプロットしています。従来から消費は底堅いと考えていましたが、引用した記事にもある通り、需要サイドの統計である家計調査も11月は3か月振りに前年同月比でプラスを記録したようですし、上のグラフの季節調整指数に見る通り、そろそろ反転する兆しを見るエコノミストもいそうな気がします。

雇用統計の推移


雇用統計のうち、遅行指標の失業率、一致指標の有効求人倍率、先行指標の新規求人数は上のグラフの通りです。いずれも季節調整済みの系列です。失業率が今年に入ってから一貫して低下し、11月統計でも0.1%ポイント改善したのはかなり疑わしいと受け止めていますが、新規求人数や有効求人倍率は11月の統計で下げ止まりつつあると見ることも出来ます。

毎月勤労統計の推移

雇用統計のうちの毎月勤労統計における所定外労働時間と賃金のグラフは上の通りです。上のパネルは所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。11月の所定内給与が跳ね上がったのは給与総額が低下していることからやや疑わしい結果なんですが、景気に敏感な所定外労働時間が下げ止まった気がしないでもありません。

消費者物価上昇率の推移

最後のグラフで、上のグラフは消費者物価指数上昇率をプロットしています。青い折れ線が全国の生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率となっており、積上げ棒グラフがその寄与度を表しています。赤い折れ線グラフは食料とエネルギーを除く全国の総合であるコアコアCPIの、グレーの折れ線は東京都区部のコアCPIの、それぞれ前年同月比上昇率です。ここ数か月の特徴として、青い折れ線の全国コアCPI上昇率は黄色で示されたエネルギー価格の影響をかなり強く受けているのが読み取れます。このエネルギー価格次第ですが、景気が後退局面を脱してもデフレが今しばらく続く可能性があります。しかし、新政権の発足に伴って、日銀が大きく金融政策スタンスを変更すれば、デフレ脱却は可能であると私は理解していますし、そのような政策運営がなされることを期待しています。

いくつかの指標を見る限り、かなり希望的な観測も含めて、年明け早々には後退局面にある景気は底を打ち回復に向かうと見込んでいます。デフレ脱却に向けた強力な金融政策のサポートがあれば、さらに景気回復は確実なものとなるものと期待しています。ただし、金融政策の効果はそれなりのラグを伴うものと考えるべきです。

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2012年12月27日 (木)

阪神タイガースのカレンダーを買い求める

陽射しがあり風も昨日よりは弱まったものの、今日はこの冬一番の寒さで、かなり気温は低かったように感じました。冷え込みの厳しさとともに、景気もやや明るさが見える一方で、景気後退局面にあることは多くのエコノミストやビジネスマンの共通認識となったような気がします。役所に勤めてこの時期に景気を実感するのは、今年はカレンダーや手帳などのもらいものが少ないことです。ホントに今年は極端に少ない気がします。

阪神タイガース2013カレンダー

我が家ではかつては日本航空のカレンダーをもらっていました。国際派のエコノミストらしく、年に何回か海外出張に行きましたし、JALを使う機会も少なくありませんでした。しかし、地方大学に単身赴任したころから風向きが変わって海外には行かなくなり、他方、JALが経営再建のための経費節減などにより、カレンダーがやたらと小さくなったこともあり、単身赴任を終えて東京に戻ってから阪神タイガースのカレンダーを買い求めるようになりました。今年も買いました。新宿の京王百貨店のタイガースショップで入手しました。上の画像に見る通り、最初のページに藤川投手の姿が見えて、また、2月も藤川投手だったりして、私はドキッとしてしまったんですが、昨季の投手キャプテンだったんですから仕方ないかもしれません。鳥谷選手がいてくれるだけ有り難い気もします。藤川投手を別にすれば、いつも通り、なかなかいい出来に仕上がっています。来季こそは当たりの外国人スラッガーを引いて、久し振りの優勝をと願っています。

なぜか最後は、
がんばれタイガース!

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2012年12月26日 (水)

今年のベストセラー小説は何だったのか?

今年の、というか、正確には2011年12月から2012年11月までのベストセラーが日販とトーハンから発表されています。いろいろなジャンルがあるんですが、小説を中心とする文芸の分野では、日販は「単行本フィクション」、トーハンは「単行本-文芸」のジャンルでは以下の本が今年のベストセラーとして上がっています。

 書名著者出版社
1舟を編む三浦しをん光文社
2謎解きはディナーのあとで (1,2)東川篤哉小学館
3ナミヤ雑貨店の奇蹟東野圭吾角川書店
4恋物語西尾維新講談社
5共喰い田中慎弥集英社
6虚像の道化師 ガリレオ7
禁断の魔術 ガリレオ8
東野圭吾文藝春秋
7神様のカルテ (3)夏川草介小学館
8ジェノサイド高野和明角川書店
9憑物語西尾維新講談社
10蜩ノ記葉室麟祥伝社

出典は日販のサイトですが、トーハンも同じようなものです。並びが少し違うだけで、この10冊がベストセラーである点はまったく一致しています。

三浦しをん『舟を編む』(光文社)

特に、文芸書だけでない「総合」のジャンルで上表の10冊のうちベストテンにランクインしているのは『舟を編む』だけで、日販・トーハンとも「総合」の5位にランキングされています。文芸書というか、小説の中では圧倒的な売行きだったということが出来ます。なお、上の10冊のうち、『舟を編む』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『ガリレオ』のシリーズ、『神さまのカルテ 3』、『ジェノサイド』の5冊の単行本は私も読みました。また、『共喰い』については単行本では読みませんでしたが、芥川賞を授賞された直後の「文芸春秋」で書評とともに読みました。このブログでも読書感想文の日記を明らかにしているハズです。ちなみに、とっぷの『舟を編む』については今年の4月14日に、3位の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』については同じく4月23日に、それぞれアップしています。怠け者の私にしてはがんばってよく読んだと自分を褒めておきたいところです。

来年は誰のどういった本が売れるんでしょうか?

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2012年12月25日 (火)

年末年始の一般的な過ごし方やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、先週12月19日にネットリサーチ大手のマクロミルから「年末年始の過ごし方に関する調査」の結果が発表されています。他方、同じく先週の12月20日に発表されたJTBの「年末年始の旅行動向」では、国内・海外とも旅行人数は昨年に比べて増加する結果となっていますが、マクロミルの調査結果では、まだまだ我が家のような寝正月派が多数を占める結果となっています。まず、マクロミルのサイトから調査の概要を引用すると以下の通りです。

年末年始の過ごし方に関する調査
・2013年のお正月は「家で過ごす」人が94%。「家族と一緒に」9割弱
・年末年始にかける予算は、平均5.6万円
・年賀状を送る予定がある人77%
・雑煮の餅のタイプは「四角い焼きもち」が40%、味付けは「しょうゆ」が58%で最多

ということで、図表を引用したいと思います。まず、下のグラフは「今年の年末年始を過ごす場所」の問いに対する回答です。圧倒的に自宅が多く、親や義理の親の実家を合わせると軽く90%を超えます。我が家も多数派に入っています。逆に旅行先で年越しをするのは3%足らずなんですが、先に上げたJTBの「年末年始の旅行動向」では延べの総旅行者数が約3000万人ですから、1億人余りの日本の人口を考慮し、極めて大雑把に、ネットで300万人が年末年始に旅行して、そのうち半分が旅先で年越しをすると仮定すれば、旅行日数は5日間という計算になります。大きく丸めた桁数として正しそうな気もします。

今年の年末年始を過ごす場所

次に、下のグラフは「今年、年賀状を送る予定があるか」の問いに対する回答です。総平均だけでなく、性別と年齢階層別で年賀状を出す出さないの比率が示されています。総平均で4人に3人は年賀状を出すようなんですが、男性より女性の方が年賀状を出す比率が高く、軽く想像されるように、年齢別には高齢層ほど年賀状を出す割合が高くなっています。一昨日のエントリーで書いた通り、私は今年もお仕事向けと親戚・友人知人向けに年賀状を出す予定ですので、これも多数派に入っています。

今年、年賀状を送る予定があるか

最後に、下の表は「お雑煮の食べ方」の問いに対する回答です。サイトには具材に対する回答もあるんですが、取りあえず、餅のタイプと味付けを引用しています。焼き餅と煮餅を合わせると、お餅については角餅が多数派で、味付けはしょうゆが多いという結果になっています。本来の我が家の京風のお雑煮は丸餅に白みそなんですが、実は、女房は京女ではないので我が家のお雑煮は京風ではありません。今後の課題と受け止めています。

お雑煮の食べ方

今年も残すところ1週間となり、そろそろ来年のことを話しても鬼が笑うこともないように感じています。しかし、我々国家公務員は明日の組閣に備えてせっせと仕事をしています。年越しまでもうひと仕事あるのかもしれません。

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2012年12月24日 (月)

日本橋三越で本日まで開催の「2012年報道写真展」を見に行く

今日は3連休の最終日で都心に出て、日本橋三越の報道写真展を見て来ました。今日までの開催です。
今年は、まだ昨年の震災の影響が色濃く残る一方で、スポーツではオリンピックの年でした。個数としては史上最高のメダルを獲得した我が日本でも大いに盛り上がったのは記憶に新しいところです。また、日中韓で政権交代があり、米国でも大統領選挙の年で、その意味では政治の年でもありました。残念ながら、日韓の政権交代の写真は間に合わなかったようです。

センバツ優勝の大阪桐蔭高校藤浪投手

オリンピックに目が行きがちな今年のスポーツ界だったんですが、私が注目したのは高校野球です。上の写真は春のセンバツ高校野球で優勝した瞬間の大阪桐蔭高校の藤浪投手らです。このピッチャーが我が阪神にドラフト1位で入団してくれるとは力強い限りです。改めて感激しました。。

なぜか最後は、
がんばれタイガース!

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2012年12月23日 (日)

クリスマスのごちそうと京都の福玉

諸般の事情により、我が家のクリスマスのごちそうは今夜でした。もっとも、決して七面鳥ではなく、大衆的なケンタッキー・フライドチキンの普及版のごちそうです。

福玉

なお、今年は私が京都から東京に出て来て初めて福玉を買い求めました。上の写真は下の倅に持たせたところです。見れば分かるんでしょうが、向かって右が売られているパッケージ、左が中身の福玉です。見た目はポケモンのモンスターボールみたいです。こんな京都ローカルなものが東京で売っているとは知りませんでした。紅白の、といっても見ての通り真っ赤ではなくピンクですが、モナカの皮のような玉の中に縁起物やお菓子が入っています。大きさは昔は6寸玉とか、7寸玉と呼ばれていましたが、写真の福玉はかなり小ぶりです。私の知る限り、祇園でしか売っていませんでした。福栄堂とか、進々堂で売っているのを見たことがあります。30年前の体験談ですから、今はどうか知りません。お店があるのかどうかも定かではありません。舞妓さんなどが年末の挨拶に行った際に、お茶屋さんやご贔屓筋からもらうもので、除夜の鐘が終わるまで開けてはいけないといわれています。
我が家も上の倅が高校生になり、下も中学生ですから、少しずつ京都のことを教え始めようと考えなくもありません。ちなみに、京都の雑煮は白味噌、丸餅、だいこんと和にんじんを入れて紅白に見立て、里芋の巨大なもので頭芋と呼ばれるイモも入れたりします。代表的な漬物といえば、酸茎やしば漬けです。賀茂なす、聖護院だいこん、九条ねぎなどの京野菜は東京では見たことがありません。もっとも、京都の実家でもそれほど食べた記憶もなかったりします。京都だけではありませんが、関西方面では食べ物の独特な呼び名があり、鶏肉を「かしわ」、ゆで卵を「煮抜き」、お餅を「あも」と称したりします。なお、大和和紀のマンガ「ハイカラさんが通る」の最初の方で公家言葉が出て来ますが、これらとは少し趣きが異なると理解しています。豆腐のことを「おかべ」といったりして、「ひやっこいおかべにむらさきをかけてお食べよし」などと使います。

最後は大きく脱線しましたが、3連休の真ん中にクリスマスのごちそうをいただいた我が家でした。ついでに、京都の風習や風俗なども追々子供達に教えたいと考える今日このごろです。

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年賀状の印刷を終える

年賀状の印刷を終える

何とか今日の午前中に年賀状の印刷を終えました。しかし、宛て先はまだです。午後からがんばろうと思います。
例年、お仕事向けと親戚・友人知人向けを分けていて、お仕事向けでは役所の住所・電話番号やメールアドレスを入れて出すんですが、親戚・友人知人向けでは自宅住所を書いています。来年の年賀状ではさらに細かく親戚向けには電話番号を入れ、友人知人向けには電話番号は抜いて年賀状を作成してみました。自宅で手軽にプリンタで印刷出来るだけに、いろいろと細かい書き分けが可能になった反面、私のような人間にはメンドウだと感じないでもありません。

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2012年12月22日 (土)

池井戸潤『七つの会議』(日本経済新聞) を読む

池井戸潤『七つの会議』(日本経済新聞)

池井戸潤『七つの会議』(日本経済新聞) を読みました。我が家では私とともに上の倅が池井戸ファンなので買い求めました。池井戸作品は今まで『オレたちバブル入行組』のシリーズ3冊、『空飛ぶタイヤ』、『鉄の骨』、直木賞受賞の『下町ロケット』、『ルーズヴェルト・ゲーム』などを読んで来ました。ということで、この作品『七つの会議』の章別構成は以下の通りです。なお、本書では「章」ではなく「話」を単位にしているようですが、同じことですので、このエントリーでは「章」ということで書き進める場合があります。悪しからず。

第一話
居眠り八角
第二話
ねじ六奮戦記
第三話
コトブキ退社
第四話
経理屋稼業
第五話
社内政治家
第六話
偽ライオン
第七話
御前会議
第八話
最終議案

舞台はとある家電メーカーの子会社の中小企業で製造業です。部長と同期で50歳に達する万年係長が、同期の中でもっとも早く課長に昇進した上司である30代のエリート課長をパワハラで社内委員会に訴え、かなりムリのある主張だったにもかかわらず、この訴えが認められ若手のエリート課長は人事部付に左遷させられるんですが、実は、この一連の人事はより大きな不都合を隠蔽し、リコールを避けてヤミ改修するための措置だったことが明らかにされて行きます。いろいろな節目で、営業の定例会議、ねじ製造零細企業の兄妹2人だけによる経営会議、職場環境改善のための環境会議、経理が営業を精査する計数会議、もちろん、企業の役員会議、そして、章のタイトルにもなっている御前会議などのさまざまな会議が舞台回しに使われ、同時に各章で主要人物の来歴が明らかにされます。各章の主人公といってもいいかもしれません。
先に書いた通り、私は何冊か池井戸作品を読んでいるんですが、この『七つの会議』の大きな特徴は、爽快な読後感ではなくもやもやとした少し粘着系の読後感が残ります。池井戸作品は最初から正義の側とやっつけられる側がハッキリと提示され、一直線に突き進むのがひとつの特徴ですが、この作品はそうなっていません。最後に印籠が出ない水戸黄門というか、桜吹雪が舞わない遠山の金さんというか、いつもの池井戸作品とはパターンが違っています。これを新境地と評価するのか、それとも構成に難があると評価するのか、意見が別れるところだと感じました。私はやや後者のネガティブに評価する側に近いです。繰返しになりますが、評価が分かれそうですので読んでみてのお楽しみということが出来るかもしれません。

章ごとに章別主人公の来歴が明らかにされるんですが、ほとんどが男性でその男性の配偶者も紹介されます。第四話の新田なんぞは夫婦そろってひどい性格に描写されていたりするんですが、本作品の影の主人公である八角夫妻は倫理観正しく清廉潔白でさっぱりしたよい性格に描かれています。類は友を呼ぶのかもしれません。果たして、我が夫婦やいかに?

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2012年12月21日 (金)

2次QE後の経済見通しやいかに?

先週月曜日の12月10日にGDP統計の2次QEが公表されて、シンクタンクや金融機関などでは2次QE後の経済見通しを続々と発表しています。早いところでは2次QE公表の即日や翌日から始まって、先週末から今週初にかけて経済見通しがほぼ出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。表に盛り込んだ年度のGDP成長率だけでなく、シンクタンクによっては四半期別の計数や成長率以外の物価上昇率や失業率なども発表している場合もあります。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名201220132014ヘッドライン
日本総研+1.0+1.3+0.32012年10-12月期はエコカー補助金終了による自動車販売の反動減で引き続き個人消費が減少するほか、日中摩擦の影響による輸出の下振れから、引き続きマイナス成長となる見込み。もっとも、2013年入り後は自動車の反動減が薄れるほか、海外景気も回復に向かうとみられることからプラス成長に復帰し、4月以降に入ったとみられる景気後退局面は、比較的短期で脱する見通し。2013年度後半は消費税率の引き上げを控えて耐久財消費や住宅投資が増加する見込み。
ニッセイ基礎研+0.9+1.7▲0.52012 年10-12月期もマイナス成長となるが、景気はすでに底入れの兆しが見られる。2013年1-3月期には海外経済の持ち直しを背景とした輸出の増加を起点としてプラス成長に復帰し、2012年春をピークとした今回の景気後退は短期間で終了することが見込まれる。
2013年度は個人消費、住宅投資で消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生し、高めの成長が続くだろう。ただし、2014年度は駆け込み需要の反動減に物価上昇に伴う実質所得低下の影響が加わることから、マイナス成長となる可能性が高い。
大和総研+1.0+1.1n.a.今後の日本経済は、様々な景気下振れリスクを抱えつつも、メインシナリオとして、①米国・中国経済の持ち直し、②震災発生に伴う「復興需要」、③日銀の追加金融緩和、という「三本の矢」に支えられて、2013年以降、緩やかな回復軌道を辿る公算である。
みずほ総研+1.0+1.1n.a.今回の景気後退局面は短期間で終了し、2013年に入ってからの日本経済は緩やかに回復、2013年度後半は消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって成長率が高まるというのが現時点での見通しである。
第一生命経済研+1.1+1.5▲0.1四半期で見れば10-12月期のGDP成長率は小幅マイナスが予想されるが、月次統計で見れば下げ止まり・底打ちの動きが確認されるだろう。12年4月から始まったとみられる景気後退局面は、年内にも終了することが見込まれる。
景気刺激策の効果から中国経済に持ち直しの動きが出ている点も好材料だ。輸出は依然減少が続いているが、日中関係悪化の追加的な押し下げ寄与がなくなる1-3月期には、中国経済の好転が輸出を押し上げるだろう。1-3月期の成長率は、輸出主導でプラスに転じると予想している。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+1.1+2.7+1.1世界経済の持ち直し、12年度補正予算(10兆円規模を想定)などが景気を押し上げ、さらに金融緩和強化を受けた円安進行や設備投資の中期循環の上昇も見込まれる。消費税率引き上げ(14年4月)後は、駆け込み需要の反動、増税効果で弱含むが、世界経済の堅調な推移や設備投資の中期循環の上昇は変わらず、弱めの動きも一時的なものにとどまり、景気拡張局面が途切れることはないとみている。
三菱総研+1.0+1.5n.a.海外経済の低迷や政策効果の剥落などを背景に、年内は内外需とも弱い状態が続くであろう。13年入り後は、海外情勢の改善から輸出が持ち直し、さらに来春以降は生産や内需にも波及するかたちで徐々に回復軌道に戻っていくと予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.8+1.1n.a.2013年度は、景気回復の動きが次第に確かなものになってくると予想される。年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要が加わるため、勢いに弾みがつくことになろう。公共投資がマイナス寄与に転じるものの、輸出の持ち直しが続くことに加え、民需も底堅さを維持すると考えられる。ただし、回復力は弱く、期待される輸出の回復が遅れると、景気の底打ちのタイミングが後ずれする懸念がある。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング+1.0+1.2n.a.13年度にかけての日本経済に対する見方については、概ね前回予測時点の判断を維持している。すなわち、①海外経済の持ち直しに支えられて輸出が持ち直すとともに、自動車販売・生産の反動減も一巡してくるなかで、日本経済の悪化に歯止めが掛かり、持ち直しに転じていく、②一方、復旧・復興需要による下支えが次第に薄れていくとみられるなか、海外経済の回復が力強さには欠けると見込まれるとともに、民間需要の回復も緩慢なものに留まるとみられるため、2013年度後半にかけては、消費税率の引き上げを控えた駆け込み需要が一時的に日本経済を押し上げることになるものの、基調として回復ペースは緩やかなものに留まる可能性が高い―というものである。
伊藤忠経済研+1.0+1.6▲0.82012年10-12月期は、日中間のトラブル等により海外経済回復の恩恵が遮断され、輸出の減少が続く一方、輸出減少などを映じた設備投資の抑制やエコカー補助金終了を受けた自動車販売の減少などにより民間需要も低調が見込まれるため、7-9月期の前期比年率▲3.5%に続くマイナス成長を予想している。年明け2013年1-3月期には輸出回復とエコカー補助金の反動減一巡などを受けて、プラス成長へ復帰する見込みである。
2013年度に予想している成長加速は、輸出回復と2014年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要によるものである。2014年度は、輸出が回復ペースを速め、生産面や投資面に好影響を及ぼすものの、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により個人消費や住宅投資が大きく落ち込むため、GDP成長率は3年ぶりのマイナスに転落すると予想している。
農林中金総研+1.0+1.3+0.712年内はマイナス成長が残ってしまうが、13年に入ればプラス成長に戻ると思われる。ただし、当面は輸出の勢いは弱く、低成長に甘んじるだろう。13年度下期には消費税増税前の駆け込み需要が発生し、景気の勢いは一時的に強まると思われる。しかし、14年4月の増税後には反動減も見込まれ、一本調子に景気の再加速が実現するわけではないだろう。

1次QEから2次QEにかけての修正は小さかったんですが、SNA統計の確報が公表されていますので、それに合わせる形で今年度から来年度にかけて成長率はやや上方修正されています。ゲタなどの発射台の違いであり、大きな修正ではないと私は受け止めています。また、すべてではありませんが、総選挙結果を受けて補正予算等の経済対策を盛り込んでいる見通しもあります。これも上方修正に寄与している可能性が高いと考えられます。四半期の成長率パターンとしては、7-9月期の大きなマイナス成長の後、今年の10-12月期までわずかながらマイナス成長が続き、来年が明ければ1-3月期にはプラス成長に戻って、2014年4月の消費税率引き上げの直前の2014年1-3月期には駆込み需要が発生すると想定されています。この駆込み需要の大きさにより、その次の2014年度の成長がプラスかマイナスかが影響され、大雑把に、駆け込み需要が大きくて2013年度の成長率が+1.5%に達すると2014年度はマイナス成長、達しないと2014年度はプラス成長と見通されているような気がします。例外は三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所であり、設備投資の中期的なサイクルが上向くことによる高成長を見込んでいます。この設備投資の中期循環も含めて、先月11月19日のエントリーで取り上げた1次QE後の経済見通しと重複しますので詳細は省略します。なお、あくまで一例ということで、第一生命経済研究所のリポートの最終ページから【実質GDP成長率の予測 (前期比年率、寄与度) 】を引用すると以下の通りです。

実質GDP成長率の予測

これまた、先月11月19日付けのエントリーの主張と同じですが、私は消費税率引上げ前の駆込み需要はかなり大きいと予想しており、上の表でいえば、2014年度がマイナス成長になると見込んでいるニッセイ基礎研究所、第一生命経済研究所、伊藤忠経済研究所の見方に近いといえます。

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2012年12月20日 (木)

金融政策の追加緩和よりも1月の金融政策決定会合に注目!

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が本日終了し、政策金利は0-0.1%程度で据え置いたものの、資産買入れ等基金を10兆円、長期国債と短期国債にそれぞれ5兆円ずつ増額すると追加緩和を決定しました。インフレ目標については、「めど」を「目標」にするとか、1%を2%に引き上げるとか、いろいろと報じられましたが、1月の金融政策決定会合で改めて話し合われることになりました。
中央銀行の政府からの独立については、いろいろと報じられていますが、ポイントは2つだと私は考えています。第1に、中央銀行は政府から独立だとしても、国民の意志からも独立なのかどうか、総選挙で示された主権者たる国民の意志に対して中央銀行はどのように金融政策で対応すべきか、第2に、独立して金融政策を決定・運営するのであれば、中央銀行の結果責任をどのように取るのか、の2点です。国民の生活向上が最終的な中央銀行の政策目標ですから、主権者たる国民からの独立はあり得ないと私は考えていますし、総選挙で示された国民の意志に基づく金融政策運営が求められるんではないでしょうか。責任論としては、政府による中央銀行総裁解任権はあんまりだとしても、何の責任も取らずに金融政策運営をするのは、ガバナンスの面から是認されるべきかどうか、私は疑問を感じざるを得ません。この2点は正面切って議論されるべき話題だと私は常々考えているんですが、メディアも含めていまだに誰も取り上げてくれません。

いずれにせよ、資産買入れ等基金の増額は特にサプライズもなく、むしろ、日銀当座預金の超過準備への付利を廃止するというか、ゼロにする議案が提案されたのはややサプライズでしたが、提案ご本人以外は賛成がなく否決されました。来週の新政権発足後の最初の会合となる1月の日銀金融政策決定会合での議論が注目です。

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2012年12月19日 (水)

貿易統計にみる輸出はそろそろ回復に向かうか?

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出は前年同月比▲4.1%減の4兆9839億円、輸入額は+0.8%増の5兆9373億円、差引き貿易収支は▲9534億円の赤字となりました。まず、統計の概要を報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易収支は9534億円の赤字 11月、12年の年間赤字は最大に
財務省が19日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が9534億円の赤字となった。赤字は5カ月連続で、11月として過去最大となる。日本車の買い控えが続く中国向けで赤字が拡大した。1-11月累計の赤字額は6兆2808億円で、2012年は年間ベースで過去最大の赤字になることがほぼ確実になった。
赤字額は市場予想(約9800億円)をやや下回ったが、単月では過去3番目の大きさ。対中輸出が落ちこんだ今年1月(1兆4814億円)や、リーマン・ショック後の09年1月(9679億円)に次ぐ規模だ。年間での赤字は1980年の2兆6128億円がこれまでの最大だった。
輸出は前年同月比4.1%減の4兆9839億円で、6カ月連続の減少。船舶が落ちこんだほか、自動車(5.2%減)や建設用・鉱山用機械(29.1%減)が中国向けを中心に減った。輸入は0.8%増の5兆9373億円で、2カ月ぶりに増えた。中国や韓国からスマートフォン(スマホ)を含む通信機が72.0%増えたほか、液化天然ガス(LNG)も49.1%増えた。
地域別の収支をみると、対中赤字は5474億円で、赤字額は68.6%増えて11月として最大となった。輸出は14.5%減の8586億円で6カ月連続の減少。自動車(68.6%減)や自動車部品(43.5%減)を中心に落ち込んだ。財務省は「反日感情の高まりで日本車の買い控えが続いているが、自動車の落ち込みは前月から和らいだ」と分析している。
米国向けは輸出が5.3%増の9337億円と13カ月連続で前年同月を上回り、11月としては4年ぶりに中国への輸出額を上回った。自動車や自動車部品が伸びている。対米黒字は4538億円で前月から拡大した。景気低迷が続く欧州連合(EU)向けは輸出が14カ月連続で減り、対EUの貿易赤字は1264億円と過去最大を更新した。

次に、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

貿易統計の推移

予算の季節に歳出と歳入の差が広がって行く「ワニの口」型の折れ線グラフを見かけますが、ここ1年ほどは貿易統計の輸出入でも輸出が右肩下がりで輸入が右肩上がりとなる「ワニの口」のグラフになっています。引用した記事にもある通り、今年は過去最大の貿易赤字を記録しそうです。季節調整していない原系列では、今年に入って2月と6月に貿易黒字となっていますが、基調を示す季節調整系列では昨年2011年3月の震災の発生した月から連続で20か月を超えて一貫して貿易赤字を記録しています。

輸出の推移

輸出について詳しく見ると上のグラフの通りです。上のパネルは輸出の金額指数の前年同月比を数量指数と価格指数の寄与度で分解しており、下のパネルは輸出の数量指数の前年同月比とOECD先行指数の前年同月比に1か月だけリードを取ったものをプロットしています。ここ数か月で下のパネルにプロットされた両指標に乖離が生じているように見えるのは、OECDに加盟していない中国の影響と受け止めています。
輸出は総額ベースでしか季節調整された統計が発表されていませんので、同業者のエコノミスト諸氏からちょうだいしているニューズレターの季節調整値なども参考にしながら、足元の輸出の動きについて考えると、輸出は減少傾向が続いているものの、まず、製品別には輸送機械や電機で持直しの動きが始まっています。米国のハリケーン・サンディに起因する自動車などの不規則な動きは見られる一方で、中国向け自動車などについて、いわゆる不売運動は一巡したと考えるべきです。次に、国別・地域別の動向では、引き続き米国向け輸出は底堅く推移しており、アジア向けも中国を除けは前年同月比ではプラスに転じています。中国における不売運動はすでにピークを越え一巡したと見られます。米国のいわゆる「財政の崖」については、可能性が低いとしか想定していませんが、リスクとしてはもう少し残る可能性も否定できません。ただし、欧州については引き続き弱い動きとなっており、当面、回復の見込みが立たないと覚悟すべきです。S&Pがギリシア国債の格付けを5ノッチ引き上げてもB-なんですから、本格的に回復軌道に戻るのはまだ先といわざるを得ません。
もっとも、これらの輸出の動向については、11月半ばからの為替の円安方向へのシフトにより大きく絵柄が変わる可能性があります。何といっても、強烈な円高により競争力にダメージを負った産業や製品に競争力が戻り、マクロの輸出が減少傾向から円高により増加に転じる可能性が十分あると期待しています。加えて、欧州はまだまだ回復には遠いものの、「財政の崖」を別にすれば米国経済は底堅いと考えられますし、中国経済もそろそろ回復に向かう可能性があります。今夏を底に世界的にPMIが上向きとなっており、我が国の輸出の増加に結び付く可能性が十分あると私は期待しています。

バブル経済崩壊以降くらいの景気循環局面では、景気の谷はいわゆる公共事業などの政府支出ではなく、輸出により景気が反転しているケースが多くなっています。2013年の年明け後に輸出増により我が国も景気後退局面から脱する可能性が高いと、来年のことをいって鬼に笑われながら大いに期待しています。

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2012年12月18日 (火)

上野誠『天平グレート・ジャーニー』(講談社) を読む

上野誠『天平グレート・ジャーニー』(講談社)

上野誠『天平グレート・ジャーニー』(講談社) を読みました。8世紀に遣唐使の判官として旅立ち、唐はもちろん、帰国便が流れ着いた林邑、さらに、阿倍仲麻呂の仲介で帰国する際に渤海まで見聞した平群広成の物語です。著者は万葉研究で有名な奈良大学教授です。とても面白かったです。まず、出版社のサイトから【本書の内容】を引用すると以下の通りです。

【本書の内容】
天平5(733)年の遣唐使は数ある遣唐使のなかでも数奇な運命をたどったことで知られます。行きは東シナ海で嵐に遭い、なんとか4隻すべてが蘇州に到着できたものの、全員が長安入りすることはかないませんでした。それでも玄宗皇帝には拝謁でき、多くの人士を唐から招聘することにも成功、留学していた学生や僧も帰国の途につきました。
しかし……。
4隻の船のうち第1船だけが種子島に漂着、第2船は広州まで流し戻されて帰国は延期、第4船に至ってはその消息は杳として知れません。そして第3船。この船は、南方は崑崙にまで流され、115人いた乗員は現地人の襲撃や風土病でほとんどが死亡、生き残ったのは4人だけだったと史書には記されています。そのひとりが本書の主人公、判官の平群広成なのです。
広成たちはたいへんな苦労の末に長安に戻り、さらに北方は渤海国を経て帰国します。そのとき広成はなぜか天下の名香「全浅香」を携えていたといいますが、それはなぜか?
若き遣唐使の目に世界はどう映じたのか? ふたたび日本の土を踏むまでに何があったのか?
阿倍仲麻呂、吉備真備、山上憶良、玄宗皇帝らオールスターキャストの学芸エンターテインメント。読んで損はさせません!

8世紀の大唐帝国に玄宗皇帝が君臨し、東海の孤島に我が国が、朝鮮半島に新羅が、インドシナ半島の今のベトナムの地に林邑が、朝鮮半島北方の中国北東部に渤海が、それぞれ唐に朝貢している中、もちろん、米州大陸や豪州などの新大陸は発見されておらず、アフリカはもとより欧州ともほとんど何の交渉もない東アジアで、それぞれ独自の文化と外交を展開する東アジア諸国を網羅し、我が国の遣唐使というエリート貴族の視点から当時の歴史を再構築しています。なお、上の引用では省略されていますが、本書の最後の方で聖武天皇も登場するオールスターキャストです。
唐に着くまでは、嵐に遭遇したりしたものの、後の行程に比べれば、まずまず順調といえましたが、唐の玄宗皇帝が臨席する朝賀の序列で我が国が最下位だったり、細々と外交上の田舎者振りをさらけ出したりします。そして、帰路が大冒険になるわけで、吉備真備とその膨大な書物を積んで出港したまではよかったものの、平群判官の乗った第3船だけが林邑に漂着し、そこで幽閉されたり、仲間を海賊や風土病で失ったり、第3船の乗員は平群朝臣以下4名に激減してしまいます。天下の名香「全浅香」を携えて、何とか長安に戻ったものの、阿部仲麻呂に帰国の仲介を頼むも無為に時間が過ぎるばかりで、結局、海路ではなく北方の渤海回りの渤海の使節団に便乗して、当時の新羅と渤海の微妙な二国間関係を綱渡りのように利用して帰国することになります。

どこまでが真実で、どこからが脚色されたフィクションなのか、私には判然としませんが、壮大な歴史冒険スペクタクルであり、8世紀の東アジアの唐を中心とする文化と外交の歴史をなぞる教養文学という位置付けも出来そうです。とってもオススメの5ツ星です。

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2012年12月17日 (月)

アベノミクスをどう評価するか?

総選挙結果が出ました。自公両党で衆議院の 2/3 を押さえ、参議院で法案を否決しても衆議院で再可決できる多数を確保したことになります。しかしながら、来年4月の日銀総裁人事は衆議院の優越がありませんので、これについては参議院がネックになる可能性があります。といったような前置きはともかく、先月14日の党首討論の場における解散表明以降の株価と為替の推移は以下のグラフの通りです。「解散こそが最大の景気対策」という意見もありましたが、市場はそれをサポートしたのかもしれません。

最近の株価と為替の推移

来週の首班指名では自民党の安倍総裁が総理大臣に指名されることは確実で、憲法改正や国防軍創設などは専門外ながら、エコノミストとしては経済政策、アベノミクスが気にかかるところです。まず当面の焦点は金融政策に対する政府の対応です。というのも、金融政策は政府から独立した中央銀行に委ねられており、政府としてはどこまでコミットするかは何ともいえませんが、圧力のかけ方にも何通りか考えられます。中央銀行の独立性を認めつつ、人事権を行使してリフレ派の日銀総裁を送り込む、とウワサされていますが、それ以外にも、第1に、インフレ・ターゲッティングを2%として何らかのアコードを結ぶ、第2に、日銀法を改正して中央銀行の独立性を弱める、といったことが考えられます。しかし、第2の点については最近のハンガリーの例もあり、私も含めて、多くのエコノミストはオススメ出来ないと考えています。ということで、インフレ目標を2%に引き上げた上で、何らかのアコードを結ぶことになるのではないかと私は想像しています。アコードを結ばないまでも、経済財政諮問会議を開催して日銀総裁の出席を求めれば、かなりの程度の日銀のコミットを求めることにもなる可能性があります。実は、今日、勤務している役所の方で講演会を開催しました。とある東大経済学部教授をお招きし、講演会の場やその後のご懇談でも、「CPIの計測誤差もあるので、インフレ目標は最低でも2%必要」といった旨のご意見を拝聴したばかリです。
次に、金融政策からさらに財政政策まで視点を広げれば、短期的に目先の経済対策として補正予算によって公共事業を実施して需給ギャップの縮小を図った上で、中期的に来年4月から、そしてその先も含めて消費税率引上げにより財政収支の改善を図る、という方向性は評価できると思います。ちょっと見には、リフレ的な金融政策と消費税率引上げの組合せは、一見して矛盾した経済政策のポリシー・ミックスに見えかねませんが、財政のサステイナビリティの観点だけでなく、円安を誘導するという意味も含めて、拡張的な金融政策と緊縮的な財政政策は、変動相場制下のマンデル・フレミング・モデルに照らし合わせれば、もっとも望ましいポリシー・ミックスと考えるべきです。もちろん、短期的に金融緩和と財政出動で需給ギャップの縮小を目指すのが消費税率引上げの前提になっていることは忘れるべきではありません。という意味で考えると、上のグラフで示した為替と株価の方向は、一時的には反転したり巻き戻したりする可能性は否定できないものの、アベノミクスの金融政策と財政政策のポリシー・ミックスは理論的にかなり正鵠を射ており、次の総選挙までくらいを考えた中期的に実効性が高いと評価すべきです。

先々週に京都大学経済学部の同級生とお話する機会がありました。製造業にお勤めで米国に留学してMBAも取得した秀才で、その友人とお話していて、為替が金融政策で決まる点についてはビジネスマンの間でもかなり理解が広まったとの感触を持ちました。私が民主党の経済政策でもっとも違和感を覚えたのが、為替介入政策を為替レートに割り当てたことです。「心ゆくまで介入」なんてピントの外れた発言をした財務大臣もいましたが、多くのビジネスマンの間で為替は金融政策次第で、円安になれば製造業だけでなく日本経済全体に景気拡大的な効果がある、というのは常識となりつつあります。解散発言以降の約1か月でこの点がさらに実感された気がして心強く感じています。

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2012年12月16日 (日)

いよいよ開票特番始まる!

今夜8時までの総選挙の投票が終わり、いっせいにテレビやラジオなどで開票特番が始まりました。衆議院の総選挙ですから、まさに政権を選択する選挙です。1票の格差からして違憲状態での選挙ですが、それなりの国民の選択は示されると私は考えています。
今回の総選挙では、私は期日前投票ではなく、今日の投票日当日に投票場となっている近くの小学校に出向きました。なかなかの行列でした。夜間人口の少ない都心の青山と違って、郊外の住宅街に引越して来たんだと実感しましたが、この行列には閉口しました。さすがに30分はかからなかったものの、行列に並び始めてから投票をすべて終えるまで15分では足りませんでした。美術展の行列を思い出し、意地の悪い見方をすれば、投票というシステム全体が勤労世代よりも引退世代に有利に出来ているという疑いを持ってしまいかねません。
いずれにせよ、私は国家公務員ですし、しかも本省の課長を務めています。平均的な日本人よりも総選挙結果に影響を受ける度合いが強い可能性は否定できません。東京都民でもありますから都知事選挙の結果も気にかかります。従って、テレビの開票特番にかじりついていたりします。

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来夏のジブリ映画は「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」の2本公開

「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」ポスター

いくつかのメディアですでに報じられていますが、来夏のジブリ映画は宮崎駿監督作品の「風立ちぬ」と高畑勲監督作品の「かぐや姫の物語」の2本が制作され公開されるようです
私はジブリの大ファンであり、ジブリはもちろん、「ポケモン」、「ドラえもん」、あるいは少し古いものの、「キャプテン翼」や「セーラームーン」なども日本を代表する文化であり、ジブリ映画などは見方によっては村上春樹の文学作品を超えて、現代的な意味での日本文化の担い手であろうと考えないでもありません。来夏の公開を楽しみに、まず確実に2本とも見るだろうと思います。

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2012年12月15日 (土)

最近読んだ経済書からオススメと残念な本

先週末の記事ではとうとう「読まなかった本」について書いてしまいましたが、今日は、まじめに、読んだ本について紹介したいと思います。よかった本2冊とオススメ出来ない本1冊です。

イアン・エアーズ『ヤル気の科学』(文藝春秋)

まず、イアン・エアーズ『ヤル気の科学』(文藝春秋) です。コミットメント契約という行動経済学の新たな概念を導入し、ダイエッットや禁煙などを成功させる方法について論じています。私はこのエアーズ教授の前著である『その数学が戦略を決める』も読んでいて、それなりにビッグデータに対する関心をかき立てられたんですが、エアーズ教授の学問領域の広さには驚きました。ただし、私の理解が及ばないだけかもしれませんが、コミットメント契約とインセンティブの違いについては定かではありません。非常に原始的に、ヘーゲル哲学のエンゲルスによる解釈である「量的変化が質的変化に転化する」のようなものであると受け止めました。違っているかもしれません。行動経済学の最新の議論の一端に触れたような気になれますのでオススメです。

ブルーノ S. フライ『幸福度をはかる経済学』(NTT出版)

続いて、ブルーノ S. フライ『幸福度をはかる経済学』(NTT出版) です。経済学や心理学の面からの幸福度研究については、ノーベル経済学賞を授賞されたカーネマン教授が第一人者であることは衆目の一致するところですが、この本の著者のフライ教授もディーナー教授、イースタリン教授、ブランチフラワー教授、オズワルド教授、ローウェンスタイン教授、などとともにトップクラスの研究者といえます。ただし、私は前著の『幸福の政治経済学』は読んでいません。この前著はスタッツァー教授との共著です。「イースタリンのパラドックス」として有名な所得と幸福の関係、失業と幸福、結婚と幸福、自営業者やボランティアはなぜ幸福度が高いか、などなど、最新の経済学が展開されます。特に、スイスの研究者らしく、直接民主制は幸福度を高めると結論しています。これまた、最先端の経済学に触れた気になれますのでオススメです。

ジョン・モールディン、ジョナサン・テッパー『エンドゲーム』(プレジデント社)

最後に、オススメ出来ないのがジョン・モールディン、ジョナサン・テッパー『エンドゲーム』(プレジデント社) です。政府債務残高がサステイナブルではないんではないかという、かなり通俗的かつ前ケインズ的な経済学を展開しています。ほとんど感情に訴える以外の根拠はありません。訳者の山形浩生さんがあとがきで酷評していますが、それなら、翻訳を請け負わなければいいのにと思わないでもなかったです。訳者あとがきを先に立ち読みしてから読むかどうかを判断するようオススメします。

オススメの2冊の行動経済学と幸福度研究は共通点があり、どちらも伝統的な新古典派経済学の前提、すなわち、合理的選択や効用最大化などに対する疑問から出発し、より現実の人間の経済行動に近い前提条件から経済現象を解き明かそうとしています。いずれも最先端の経済学を知る良書だと思います。

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2012年12月14日 (金)

12月調査の日銀短観で景気後退局面入りを確認する!

本日、12月調査の日銀短観の結果が発表されました。統計のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査の▲3から▲12に悪化しました。2四半期連続の悪化です。ただし、先行きは▲10とわずかながら改善する見込みとなっています。さらに、本年度2012年度の設備投資計画が全体として上方改定されたので驚いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

製造業の景況が大幅悪化 日銀短観、対中輸出減響く
DIマイナス12、先行きは小幅改善

日銀が14日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、製造業の景況感が大きく悪化した。世界経済の減速や、日中関係の悪化に伴う輸出、生産の落ち込みを映した。大企業製造業の業況判断指数(DI)はマイナス12で、9月の前回調査から9ポイント悪化した。悪化は2四半期連続で、2年9カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。復興需要などを背景に底堅かった非製造業も大企業で6四半期ぶりに悪化した。
大企業製造業の景況感は、東日本大震災の影響で大幅に悪化した2011年6月調査(マイナス9)を下回った。前回9月調査では、9月中旬以降に激しくなった沖縄県尖閣諸島の国有化をめぐる日中関係の悪化の影響を反映しきれていなかった。その分、今回調査で製造業の景況感の悪化幅が広がった。
大企業の業種別の業況判断DIをみると、全28業種中、21業種の景況感が悪化した。製造業では自動車が28ポイント悪化のマイナス9と大きく落ち込んだ。エコカー補助金による政策効果の息切れや、日中関係悪化による輸出減少が響いた。輸出関連産業は電気機械、生産用機械、業務用機械、造船・重機などでも景況感が軒並み悪化した。
復興需要など堅調な内需に支えられてきた非製造業の景況感も悪化した。復興需要の息切れで建設の業況判断DIが8四半期ぶりに悪化した。宿泊・飲食サービスも前回調査に比べて16ポイント悪化のマイナス10と大きく落ち込んだ。日中関係の悪化に伴う観光の低迷が響いたとみられる。
先行き3カ月後の業況判断DIの見通しは、大企業製造業がマイナス10とやや持ち直す予想となったが、マイナス幅はなお2ケタ台で企業の慎重姿勢は変化していない。一方、大企業非製造業はプラス3と小幅ながらもさらに悪化する予想となった。
12年度の設備投資計画の前年度伸び率は製造業が11.1%増となり、前回調査(12.3%増)から下方修正となった。ただ12月時点としては5年ぶりの2ケタ台の伸び率を維持した。非製造業は4.6%増と前回調査(3.3%増)から上方修正となった。

続いて、いつもの産業別・規模別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。今年1-3月期を景気の山と仮置きしています。

日銀短観業況判断DIの推移

日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは市場の事前コンセンサスの▲10をさらに下回って▲12となりました。需給関係の悪化が業況判断に現れる企業マインドを押し下げ、かなり明確に、景気後退局面入りが確認されたと受け止めています。引用した記事にもある通り、製造業では自動車が大きく下げました。国内でのエコカー補助金の終了と、海外での中国との国境問題に起因する販売急減のダブルパンチで落ち込んだといえます。自動車は先行きもさらに悪化し、製造業全体ではわずかな先行きの改善にとどまります。非製造業では復興需要を背景に建設、不動産は引き続き底堅い一方で、宿泊・飲食サービスは中国問題と個人消費の停滞の両方から低迷しており、さらに注目すべきは非製造業は先行きがさらに悪化すると見込まれていることです。先行きで大きな悪化幅を見せているのは電気・ガスであり、原発停止がどのように影響しているのか、やや興味があります。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

要素需要に関して、設備と雇用の判断DIの推移は上のグラフの通りです。設備に関しては今回調査では大企業製造業は横ばいだったんですが、長い目で見て設備の過剰感が上昇する傾向にあり、機械受注統計などとも整合的であると私は受け止めています。他方、意外だったのは雇用判断DIであり、大企業、中堅企業、中小企業とも雇用過剰感の高まりは見られませんでした。大企業で少し雇用過剰感が残っているものの、中堅・中小企業では過剰感も過不足感もゼロですから、かなり雇用は底堅く推移すると期待してよさそうです。もっとも、量的には底堅いかもしれませんが、質的に非正規雇用ばかりが増加することがないことを注視する必要はあるかもしれません。

日銀短観設備投資計画の推移

今回の12月調査の日銀短観で最も意外だったのは設備投資計画が上方改定されたことです。引用した記事にもある通り、製造業は下方改定なんですが、非製造業では上方改定されて設備投資全体を引っ張っています。非製造業で最も業況感がいいのは通信産業なんですが、設備投資でもスマホ効果が出ているのかもしれません。

日銀短観新卒採用計画

6月調査と12月調査だけで実施される新卒採用計画のグラフは上の通りです。今年度2012年度については、中小企業でわずかに下方修正されたものの、大企業と中堅企業では上方修正されています。さらに、初めて発表された来年度2013年度の採用計画は小幅ながらプラスを示しています。先ほどの雇用判断DIと整合的であり、雇用は底堅く推移する可能性が十分あると受け止めています。

最後に2点コメントすると、第1に、大企業製造業の想定為替レートは1ドル当たりで今年度下期78.73円、年度を通じて78.90円でした。現状の80円をやや超える円安水準が続けば、かなりの景気浮揚効果が見込めると期待しています。第2に、金融政策については何らかの追加緩和が模索される可能性が高いと私は受け止めています。この日曜日の選挙結果については中央銀行の政府からの独立性を堅持するんでしょうが、米国連邦準備制度理事会(FED)の失業率ターゲッティングからは総選挙結果以上に大きな影響を受ける可能性があります。

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2012年12月13日 (木)

12月調査の日銀短観予想やいかに?

明日12月14日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIなどを取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は2012年度、すなわち、今年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。先行きに関する見通しを可能な範囲で取っています。もともと先行き判断を含む調査ですから、各機関とも何らかの先行きに関する言及がありました。ただし、長くなりそうな場合はこの統計のヘッドラインとなる大企業製造業だけにした場合もあります。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査▲3
+8
<+6.4>
n.a.
日本総研▲15
+3
<+4.1>
先行き(2013年3月)は、大企業・製造業で▲13%ポイントとやや改善すると予想。米中景気の回復により輸出が持ち直すことが背景。大企業・非製造業では、+3%ポイントと横ばいを予想。内需低迷により全般的に厳しさが残るものの、自動車販売の回復などを背景に小売が下支えし、全体では横ばいとなる見通し。
大和総研▲13
+5
<+5.4>
先行きに関しては、製造業ではわずかながら改善するとみている。業種別に見ると、国内の新車販売台数が下げ止まり、生産計画も増加を見込む「自動車」は改善を見込む。「電気機械」については、情報通信機械関連で収益の悪化が続くものの、電子部品・デバイスでは需要回復の兆しが見られることなどから、横ばいの見通しとなるだろう。その他の業種では、先行きは不透明であるものの、年明け以降海外経済の回復による需要の増加が見込まれることから、横ばいから小幅の改善見通しとなる見込み。
みずほ総研▲8
+6
<+4.9>
(大企業製造業)先行き判断DIは、自動車販売・生産の回復、輸出持ち直しへの期待などから改善するだろう。
(大企業非製造業)先行き判断DIは改善を見込むが、当面は内需の力強い回復が期待できないことから、小幅改善にとどまるとみられる。
ニッセイ基礎研▲11
+6
<+4.5>
足元の日本の生産は大きく落ち込んでおり、景気後退色が濃厚だ。一方、欧州危機の一服と安倍自民党総裁発言などを受けた円安は支援材料となるが、ともに持続性の不透明さがあり、景況感を多少下支えする程度の効果に留まるだろう。従って、今回の大企業景況感は悪化が避けられず、とりわけ海外の影響を受けやすい製造業の悪化が顕著になるだろう。
伊藤忠商事経済研▲9
+4
<+4.5>
大企業製造業の現状判断DIが、9月調査の▲3から12月調査では▲9へ大幅に低下し、東日本大震災直後の水準に並ぶと予想する。先行き判断DIも▲8と、米国の「財政の崖」や中国での販売状況を巡る不透明感から、慎重な見方が維持される見込みである。
第一生命経済研▲12
+6
<+4.7>
短観12月調査は、大企業・製造業の業況DIが前回比▲9ポイントの悪化になると予想する。欧州・中国向け輸出減が響き、すでに景気後退である可能性が濃厚だ。一方、前向きな材料として、電子部品デバイスの生産予測指数が上向きになったり、自動車販売に下げ止まりの兆しもある。米「財政の崖」要因を別にして、現時点で景気後退の深さを窺い、12月20日の追加緩和を占う格好の材料になると予想される。
三菱総研▲12
+5
<n.a.>
先行きについては、13年入り後の海外情勢の持ち直しを背景に、来春以降の緩やかな景気回復を見込むが、日中問題の経済活動への影響など見極めが難しい材料も多い。先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が+2%ポイント、非製造業が+1%ポイントの小幅改善を予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲10
+4
<+4.8>
大企業製造業の業況判断DIは前回調査から7ポイント低下の-10に悪化すると予測する。海外経済の減速を受けて、輸出の低迷が続いている上、個人消費などの内需の動きも弱く、生産は減少傾向が続いている。先行きは、年明け頃には生産が底打ちすると期待されることから、素材業種、加工業種とも景況感は改善すると見込まれる。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング▲12
+5
<+5.0>
海外経済の減速に歯止めが掛かってきており、国内自動車販売の減少も一巡したとみられるなかで、大企業の「先行き」については改善を示すと想定した。なお、中小企業については先行き慎重な判断が示されやすいという傾向を考慮している。

ということで、12月調査の足元の業況判断DIについては9月調査から大幅に悪化を見込んでいます。ほぼこれに見合った形で2012年度の設備投資計画も下方修正が予想されています。しかし、設備投資はまだ前年比でプラスを維持しています。他方、先行きについては、中国との国境問題、米国の「財政の崖」、欧州のソブリン危機などの世界経済に不安が残り、さらに国内経済ではそもそも総選挙のゆくえと次期の政権も未確定となっており、極めて不透明感が高い中ながら、やや改善の方向に向かうとのコンセンサスが読み取れます。年明け以降はプラス成長に復帰するとの経済見通しと整合的だと受け止めています。ということで、一例として、下のグラフは第一生命経済研のリポートから大企業製造業の業況判断DIの推移を引用しています。

業況判断DIと景気後退局面

後から見れば、おそらく、足元の現時点の年末が短期的には景気の底だった可能性があります。シンクタンクなどの経済見通しとともに、日銀短観でもこの点が確認されるものと私は予想しています。それにしても、総選挙の結果も大いに関係して、日銀に対してリフレ政策を求める圧力はますます強まるものと予想しています。

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2012年12月12日 (水)

基調判断が下方修正された機械受注

本日、内閣府から10月の機械受注統計が発表されました。電力と船舶を除く民需のいわゆるコア機械受注は季節調整済みの系列で見て前月比+2.6%増の7044億円となり、+3%弱との市場の事前コンセンサスをやや下回りました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注2.6%増 10月、基調判断は「弱含み」
内閣府が12日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比2.6%増の7044億円となり、3カ月ぶりに改善した。特に非製造業からの受注が伸びた。ただ水準は低く、企業は慎重な投資姿勢を続けている。内閣府は機械受注の基調判断を「弱含んでいる」とし、4カ月ぶりに引き下げた。
10月実績はエコノミストの予想(2.8%)を下回った。基調判断は前月まで「一進一退で推移している」だった。内閣府は下方修正の理由を「前月公表した10-12月期見通し(前期比5.0%増)と比べて弱い回復にとどまったため」と説明している。見通しを実現するには11-12月にそれぞれ6.5%増と高い伸びが必要になる。
製造業からの受注は3.6%減と2カ月ぶりに減った。航空機の受注が前月に伸びた反動で減少したほか、情報通信機械も12.5%減と4カ月連続で減ったためだ。自動車の関連業種からの受注は工作機械などを中心に5カ月ぶりに増えており、製造業は15業種のうち10業種がプラスだった。
非製造業からの受注は船舶・電力を除くベースで2.8%増。建設業(36.2%増)、情報サービス業(23.9%増)からの受注が大きく伸びた。非製造業は電力などを含む12業種のうち9業種がプラスだった。
民需以外では官公庁からの受注が18.7%減と2カ月ぶりのマイナスになった一方、外需は9.4%増えた。全体の受注総額は1.6%減の1兆7873億円だった。

続いて、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

機械受注の推移

10月の単月では前月比プラスになりましたが、市場の事前コンセンサスを下回りましたし、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府も基調判断を下方修正しています。少ななくとも「前月比プラス」が明るい話題とは受け止められていません。通信業などの非製造業にけん引された受注増ですが、外需や製造業はまだまだマイナス基調ですし、電力を船舶を除くコア機械受注の6か月後方移動平均がトレンドを示しているわけですが、これも上向いているわけではありません。また、前期比+5%と出た10-12月期見通しの達成は困難ですが、前期比プラスは可能ではないかと私は考えています。海外要因などに大きな不透明要因が残っており、機械受注のトレンドに大きな変更を及ぼすかどうか、現時点では何ともいえませんが、来年前半くらいには方向性が出るのではないかと私は考えています。取りあえず、足元は不透明としかいいようがありません。

機械受注(官公需)の推移

ついでながら、上のグラフは先月も示した機械受注のうちの官公需なんですが、いわゆる復興需要はほぼピークアウトしたようです。コア機械受注の外数ですが、機械受注に対する悲観材料のひとつかもしれません。

企業物価上昇率の推移

最後のグラフは、今日、日銀から発表された企業物価指数上昇率です。国内企業物価は11月統計まで8か月連続で下落しており、海外経済の停滞により鉄鋼などの需要が減退しており、国内でもテレビや携帯電話など販売競争の激化による値下がりが見られます。まだまだデフレが続いています。

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2012年12月11日 (火)

東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文芸春秋) を読む

東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文芸春秋)

東野圭吾『禁断の魔術 ガリレオ8』(文芸春秋) を読みました。さすがに定評あるシリーズの8冊目、まずまず面白かったです。でも、このシリーズの最高傑作ではないでしょう。まず、出版社の特設サイトから「内容紹介」を引用すると以下の通りです。

内容紹介8月刊行の『虚像の道化師 ガリレオ7』を読まれた東野圭吾ファン、ガリレオシリーズファンのみなさん。驚かれることと思いますが、早くも次なるガリレオ新作をお届けすることとなりました。"誰も知らなかったガリレオ" の登場です。『虚像の道化師』を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはない、とまで思っていた東野さんが、「小説の神様というやつの気まぐれをたっぷり思い知らされた」という作品。絶対のおすすめです。

次に、同じく出版社の特設サイトから章別構成を引用すると以下の通りです。読み方は上から順に、「みとおす」、「まがる」、「おくる」、「うつ」です。最後の第4章だけが中編と呼べる長さで、本書のクライマックス、「湯川が殺人を…」を含む内容です。その前3章は短編といえます。全編が書下しだそうです。

透視す
トリックは単純なほど騙されやすい。科学の世界でも同じだ。
曲球る
あなたがいう抵抗は立派な努力に見えます。努力することに無駄はない。
念波る
運命なんてものは信じない。サンタクロース以上に。
猛射つ
私は君にそんなことをさせたくて科学を教えたんじゃない。

最初に「このシリーズの最高傑作ではない」と控えめに書きましたが、誠に申し訳ないながら、最初の短編3作は凡庸です。「透視す」の赤外線カメラを用いた透視トリック、「曲球る」のバドミントンのシャトルの動きを野球の変化球に例える流体力学、まではいいとしても、「念波る」のテレバシーにいたっては科学は何の関係もなく、いわばカギカッコ付きの「粉飾」に用いられているだけです。しかし、本書のクライマックスとなる中編「猛射つ」の出来栄えはさすがです。これを読むだけでも本書を買う値打ちがあるとい考えるガリレオ・ファンもいそうな気がします。最終話の最後で、湯川がレールガンを発射していたかどうかはさて置いても、もしも、私であれば殺人になるとしても確実に打ったと思います。第3話「念波る」が殺人直前の殺人未遂であるほかは、すべて殺人事件であるというのも本書のひとつの特徴なら、最後の中編「猛射つ」以外は科学ネタが小粒であるようにも見受けられます。さらに、科学よりは人情話にとても近い気がして、そのうちに加賀恭一郎と湯川学の共演が実現するんではないかと期待しています。

このところ何冊か買っておきながら子供達に先に回した上に、期末試験のシーズンに入ってしまい、私のところに届くのがとても遅くなっています。この後、湊かなえ『母性』、有川浩『空飛ぶ広報室』、池井戸潤『七つの会議』などなど、年末年始休みも含めてせっせと読書にいそしみたいと思います。

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2012年12月10日 (月)

本格的な忘年会シーズンに入って2次QEほかの経済指標が発表される

本日、内閣府から7-9月期のGDP速報2次QEが発表されました。実質成長率は1次QEの前期比▲0.9%から変わらず、前期比年率でも▲3.5%と変わりありませんでした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月実質GDP改定値、年率3.5%減
速報値と変わらず

内閣府が10日に発表した7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減となった。年率換算では3.5%減でいずれも速報値と同じだった。季節要因を除く際の計算で4-6月期のGDPが前期比で減少に転じたため、マイナス成長は2四半期連続となる。弱含んでいる景気の基調を改めて示す結果になった。
2四半期連続のマイナス成長は欧州などで「技術的な景気後退(テクニカル・リセッション)」と呼ばれ、景気後退の目安にされることが多い。日本経済が景気後退局面に入っているかどうかは政府が来夏ごろに判断するが、今回の結果は今年4月ごろから景気後退に入っているとみる専門家の見方と整合的といえそうだ。
直近では東日本大震災の影響などにより、2010年10-12月期から11年4-6月期まで3四半期連続のマイナス成長だった。
改定値は速報値の公表後に出される法人企業統計などのデータを使ってGDPを推計し直した数値。民間調査機関は0.8%減(年率3.3%減)への上方修正を予想していた。4-6月期は年率で速報段階の0.3%増が0.1%減になった。生活実感に近い名目GDPは7-9月期の改定値が0.9%減(年率3.6%減)で速報値と同じだった。
7-9月期の実質GDP改定値の内訳をみると、個人消費が0.4%減で、速報値の0.5%減から上方修正された。自動車やテレビなど耐久消費財がマイナス幅を縮めたためだ。設備投資も3.2%減から3.0%減への上方修正だ。公共投資は9月実績を加えて計算し直した結果、4.0%増から1.5%増に伸びが縮まった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2011/
7-9
2011/
10-12
2012/
1-3
2012/
4-6
2012/7-9
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+2.5+0.1+1.4▲0.0▲0.9▲0.9
民間消費+1.4+0.5+1.1+0.1▲0.5▲0.4
民間住宅+4.2▲0.1▲1.1+1.5+0.9+0.9
民間設備+2.2+7.3▲2.4+0.1▲3.2▲3.0
民間在庫 *+0.5▲0.5+0.3▲0.3+0.2+0.3
公的需要▲0.2+0.1+2.5+1.4+1.1+0.8
内需寄与度 *+1.7+0.8+1.3+0.1▲0.2▲0.2
外需寄与度 *+0.8▲0.7+0.1▲0.2▲0.7▲0.7
輸出+8.8▲3.8+3.3+0.8▲5.0▲5.1
輸入+3.5+1.0+2.4+1.8▲0.3▲0.4
国内総所得(GDI)+2.3▲0.0+1.3+0.1▲0.5▲0.6
名目GDP+2.3▲0.3+1.5▲0.5▲0.9▲0.9
雇用者報酬▲0.4+0.5+0.1▲0.2+0.4+0.6
GDPデフレータ▲1.9▲1.6▲1.1▲1.0▲0.7▲0.8
内需デフレータ▲0.5▲0.3▲0.2▲0.7▲0.8▲0.9

さらに、テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの系列の前期比成長率に対する寄与度で、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスであるとともに、それに寄与しているのが黒の外需と赤の消費と水色の設備投資であり、逆にプラスで経済を下支えしているのが黄色の公的需要であるのが見て取れます。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

7-9月期については1次QEから2次QEに大きな変更はありません。ただし、引用した記事にもある通り、4-6月期が遡及改定されてマイナス成長に転じましたので、4-6月期と7-9月期を合わせて2四半期連続、ほぼマイナス成長が確実視されている10-12月期まで含めれば3四半期連続のマイナス成長ですので、景気後退局面入りはほぼ確実といえます。それから、今夜は発表指標が多いのでグラフは示しませんが、これも引用した記事の最後のセンテンスにある通り、公的資本経済の実質値、平たく言えば、公共投資の伸びから見て、いわゆる復興需要はピークを越えたと私は受け止めています。

Table 2. GDP growth, developing Asia (%)

諸般の事情により、以下は、というか、上のGDP2次QEもそうだったんですが、以下は特にグラフをお示しするだけになってしまいます。経済指標がいっぱい発表された一方で、帰宅が遅くなったせいです。悪しからず。まず、成長率と関係して、アジア開発銀行 (ADB) から「アジア開発見通し改定」 Asian Development Outlook 2012 Supplement が公表されています。リポートの p.3 Table 2. GDP growth, developing Asia を引用すると上の通りです。前回の見通しと大差ありませんが、アジア新興国・途上国の成長率見通しはやや上方改定されているように見受けられます。

法人企業景気予測調査

続いて、上のグラフは財務省が本日発表した法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業のBSIをプロットしています。月次データと同じで、今年1-3月期が景気の山だったと仮置きしています。足元の10-12月期までは下降超なんですが、来年1-3月期からは上昇超に転じます。10-12月期までマイナス成長の後、来年の年明けから景気が緩やかに持ち直すとの大方のエコノミストのコンセンサスに合致していると受け止めています。

経常収支の推移

続いて、上のグラフは財務省が本日発表した経常収支の推移をプロットしています。季節調整済みの系列です。先月9月の季節調整済みの経常収支が赤字に陥ったものですから、ややびっくりしたんですが、今月は黒字に復帰しています。しかし、大雑把な傾向として、ジワジワと経常収支の黒字幅が縮小しているのは上のグラフからも読み取れると思います。主因は貿易収支です。

景気ウォッチャー調査と消費者態度指数の推移

最後のグラフはマインド調査の結果です。本日、内閣府から景気ウォッチャー調査と消費者態度指数が発表されています。上のパネルは景気ウォッチャー調査、下は消費者態度指数をそれぞれプロットしています。景気ウォッチャーは供給側の、消費者態度指数は需要側の、それぞれマインドを表しています。景気が後退局面に入っている中、法人企業景気予測調査のBSIも同じですが、需要サイドのマインド指標、すなわち、消費者態度指数はやや悪化を示していますが、供給サイドの景気ウォッチャーは現状判断DIも先行き判断DIも改善しました。季節らしく気温が下がった気候条件とともに、衆議院解散以降の円安が効いているんだろうと受け止めています。

長々と書き進めましたが、実は、中身はありません。忘年会シーズンに経済指標が一気に発表されると、私のブログは希釈されてしまいます。悪しからず。

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2012年12月 9日 (日)

読むのを諦めた本

このところ、本は買ったり借りたりなんですが、区立の図書館で順番待ちをして借りておきながら、結局、読むのを諦めた本が2冊ほどありました。読んでいないので評価がどうこうというのではないんですが、私には不向きだった気がします。

三菱東京UFJ銀行 円貨資金証券部『国債のすべて』(きんざい)

まず、『国債のすべて』(きんざい) です。三菱東京UFJ銀行 円貨資金証券部が取りまとめています。買えば4000円プラス消費税、500ページ近い力作です。ビジネスとして国債を取り扱ったり、金融機関のALMなどを業務としている向きには大いに参考になる必携書なのかもしれませんが、私には不向きでした。手元に置いて、辞書的に必要に応じて参照するのが私の使い方であるような気がしますが、それなら買わねばなりません。結局、諦めました。

アーチー・ブラウン『共産主義の興亡』(中央公論新社)

次に、アーチー・ブラウン『共産主義の興亡』(中央公論新社) も手元に取り寄せながら、読み始めることができませんでした。800ページ近いボリュームで2段組みです。スティーヴン・キングの小説ならこれくらいは読めそうな気もしますが、学生時代に『資本論』全3巻をひも解いたくらいでは挑戦する気にもなれませんでした。スティーヴン・キングを別にして、これに匹敵するボリュームは、アイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』を思い出してしまいました。地方勤務の折に読み始めたんですが、結局、諦めた記憶があります。やっぱり2段組みで軽く1000ページを超えていました。知っている人は知っていると思いますが、『肩をすくめるアトラス』とは、『共産主義の興亡』とは真逆で、リバタリアンのバイブルのような存在に祭り上げられている小説です。映画化もされています。著者は30年ほど前に亡くなっていますが、邦訳が出版されたのは今世紀に入ってからです。この冬休みにでも再挑戦しようかと思わないでもありません。

繰返しになりますが、作品の内容について何らかの評価を下せるに至っているわけではありません。このように、読むのを諦めた本を取り上げるのは、7年余りのこのブログの歴史で初めてかもしれません。そのうちに、ちゃんと読んだ本を紹介したいと思います。一応、無理やりに「読書感想文の日記」に分類しておきます。

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2012年12月 8日 (土)

おにいちゃんの誕生祝い

今日は、我が家のおにいちゃん、すなわち、上の倅の誕生日です。高校1年生ですから16歳になりました。下の子はすでに期末試験に入っていますし、おにいちゃんの高校でも来週は期末試験なんですが、わずかな間隙を縫って今日のうちにお誕生日のお祝いをしてしまいました。写真はすべて座っているおにいちゃんと家族が順におすまししています。上から順に、下の子、私、女房です。見れば分かると思います。

我が家の子供達

おにいちゃんとおとうさん

おにいちゃんとおかあさん

我が家の恒例のジャンボくす玉を置いておきますので、めでたいとご賛同の向きはくす玉を割って祝ってやって下されば幸いです。

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米国雇用統計のグラフィックス

昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数の前月差は季節調整済みの系列で+146千人増、同じく季節調整済みの失業率は前月から0.2%ポイント下落して7.7%となりました。まず、New York Times のサイトから第一報記事の最初7パラを引用すると以下の通りです。なお、この記事はその後差し替えられている可能性があります。

U.S. Adds 146,000 Jobs; Jobless Rate Falls to 7.7%
Shrugging off the effects of Hurricane Sandy and the looming fiscal impasse in Washington, the economy created 146,000 jobs in November, well above the level economists had been expecting.
The report released Friday by the Labor Department also showed the unemployment rate fell to 7.7 percent, the lowest level in four years. But the drop came largely from a decline in the number of people seeking work and counted as officially unemployed.
Among specific industries, the retail sector was especially healthy, adding 53,000 jobs as the holiday shopping season approached. In the last three months, retail employment has increased by 140,000.
One notable point of weakness was the manufacturing sector, which lost 7,000 jobs in the month. Demand from Europe and other overseas markets has weakened recently, while some manufacturing companies have held off on spending as political leaders square off in Washington over how to cut the deficit.
The Labor Department revised job growth in previous months downward somewhat. October growth fell to 138,000 from an initial estimate 171,000, and September's declined to 132,000 from 148,000. Average hourly earnings in November rose 0.2 percent, the report showed.
By the widest measure of joblessness, unemployment also eased slightly: after factoring in people looking for work as well as those forced to take part-time positions because full-time work wasn't available, the total unemployed fell to 14.4 percent in November from 14.6 percent in October.
The report for November was relatively strong, economists said, and showed fewer effects from Hurricane Sandy that had been expected. In Friday's announcement, the Bureau of Labor Statistics said the storm did "not substantively impact the national employment and unemployment estimates for November."

次に、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

米国雇用統計の推移

市場の事前コンセンサスでは、来年1月からの「財政の崖」はともかく、ハリケーン・サンディの影響もあって、非農業部門雇用者数は前月差で+100千人増に届かないだろうと予想されていましたので、146千人はかなり強い数字だと受け止められています。歩調をあわせた形で失業率も0.2%ポイント改善しています。クリスマスセールが好調と予想されていましたし、11月の段階から小売業などの消費関連産業の雇用が底堅く推移している結果です。

米国雇用・人口比率の推移

+146千人はかなり強い数字ですし、5か月連続で非農業部門雇用者数が雇用改善のひとつの目安となる毎月+100千人を超えて増加しているんですが、それでも雇用の本格的な回復には至っていません。上のグラフはマンキュー教授やクルーグマン教授も着目している雇用・人口比率をかなり長期にプロットしていますが、現在の景気回復局面でほとんど上昇していないのが見て取れます。

米国時間当たり賃金上昇率の推移

最後に、デフレとの関係で私が気にしている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%台の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつける可能性は小さそうです。

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2012年12月 7日 (金)

景気動向指数は明確に景気後退を示す!

本日、内閣府から10月の景気動向指数が発表されました。先月に比べて、先行指数が0.9ポイント上昇して92.5となった一方で、一致指数は▲0.9下降して90.6となりました。統計作成官庁である内閣府は景気の基調判断を「下方への局面変化」から「景気動向指数は、悪化を示している。」に下方修正しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

景気基調判断、3年6カ月ぶり「悪化」に 10月
一致指数、7カ月連続で低下

内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2005年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.9ポイント低下の90.6だった。マイナスは7カ月連続で、内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正した。
下方修正は2カ月連続で、内閣府が判断を「悪化」とするのは08年のリーマン・ショックによる世界的な景気後退の影響が残っていた09年4月以来、3年6カ月ぶり。「悪化」は「景気後退の可能性が高いことを示す」と定義し、「暫定的」としていた前月までの景気後退に対する判断を一歩進めた。正式な景気後退の判断は内閣府の景気動向指数研究会の議論を経て決定する。
10月は液晶テレビの販売不振が響き、耐久財の出荷が減少したほか、生産活動の停滞に伴って大口の電力使用も限られた。製造業を中心に残業なども減り、有効求人倍率も低下。エコカー補助金終了の影響で商業販売額も落ち込むなど雇用や消費も弱含んだ。
一方で、半導体など電子部品・デバイス関連などの持ち直しがあって鉱工業生産指数は4カ月ぶりに上昇。化学工業など生産財の出荷も下げ止まり、一致指数を下支えした。
数カ月後の先行きを示す先行指数は0.9ポイント上昇の92.5と2カ月ぶりに上がった。住宅建材などの建設財や化学工業など生産財の在庫が減少したことが主因。分譲マンションなど新設住宅着工なども指数上昇に寄与した。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.5ポイント上昇の87.2と2カ月ぶりのプラス。指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が10.0%、先行指数は38.9%だった。

次に、いつもの景気動向指数の推移をプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

景気動向指数の推移

景気後退がほぼ確定しました。上のグラフからも明らかなように、最近の今年3月を景気の山と仮置きした景気後退期の影の部分がかなりよくフィットしているという気がします。10月のCI一致指数では耐久消費財出荷指数、大口電力使用量、所定外労働時間指数などのマイナス寄与が大きく、卸売業の商業販売額(前年同月比)や中小企業出荷指数のプラスを大幅に上回りました。他方、CI先行指数はプラスに転じており、景気が底入れするのもそれほど先ではない可能性が示唆されています。いずれにせよ、来年の春くらいに内閣府の景気動向指数研究会が開催され、景気日付に関して議論されることと予想しています。

ESPフォーキャスト調査結果

また、本日、日本経済研究センターから「ESPフォーキャスト調査結果」が発表されています。上のグラフの通り、成長率は10-12月期までマイナスながら、来年1-3月期以降はプラス成長に復帰すると見込まれています。景気動向指数の先行指数と整合的な評価です。また、衆議院選挙を控え、特別調査として日本の経済政策についてアンケートを行い、インフレ・ターゲットを導入することについては、63%のフォーキャスターが「賛成・どちらかというと賛成」と回答し、そのうちの71%は「2%にすべき」と回答していることが明らかにされています。極めて妥当な結果だと受け止めています。

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2012年12月 6日 (木)

来週月曜日に発表されるGDP速報2次QE予想やいかに?

来週月曜日12月10日に2012年7-9月期期GDP速報2次QEが内閣府より発表されます。今週月曜日に発表された法人企業統計など、必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で先行きについて言及した部分を中心に取っているつもりですが、実際に、先行き見通しを正面から取り上げているのはみずほ総研だけであり、軽く触れているのも伊藤忠経済研くらいで、ほかはアッサリしたものでした。2次QEですから仕方ない気もします。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.9%
(▲3.5%)
n.a.
日本総研▲0.9%
(▲3.6%)
法人企業統計等を織り込んで改定される7-9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が小幅上方修正される一方、公共投資は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲3.6%(前期比▲0.9%)と1次QE(前期比年率▲3.5%、前期比▲0.9%)からほぼ変わらない見込み。
大和総研▲0.8%
(▲3.2%)
法人企業統計の結果を受けて、2012年7-9月期GDP統計2次速報(12月10日公表予定)は、1次速報から上方修正される見通しである。大和総研では、実質GDP 成長率は前期比▲0.8%(1次速報では同▲0.9%)、年率▲3.2%(1次速報では同▲3.5%)になると予想する。
みずほ総研▲0.8%
(▲3.1%)
10-12月期は個人消費と輸出の低調により、マイナス成長が続くと予測している。個人消費にはエコカー補助金終了の影響が残るほか、年末賞与の減少も下振れ要因となろう。輸出については、中国国内に在庫調整圧力が残っていることなどから急回復は望めそうもない。
もっとも、年明け後の景気は回復に転じる可能性が高い。10月の鉱工業生産は前月比+1.8%と予測指数の同▲1.5%を大きく上回り、12月は大幅増産(予測指数の前月比+7.5%)が計画されている。2013年1-3月期以降はプラス成長軌道に戻る見通しである。
ニッセイ基礎研▲0.8%
(▲3.4%)
法人企業統計の結果等を受けて、12/10公表予定の12年7-9月期GDP2次速報では、実質GDP成長率が前期比▲0.8%(前期比年率▲3.4%)になると予測する。成長率は1次速報(前期比▲0.9%、年率▲3.5%)とほぼ変わらないだろう。
第一生命経済研▲1.0%
(▲3.9%)
12月10日に内閣府から公表される2012年7-9月期実質GDP(2次速報)は前期比年率▲3.9%(前期比▲1.0%)と、1次速報段階の前期比年率▲3.5%(前期比▲0.9%)から小幅下方修正されると予想する。本日公表された法人企業統計の結果を受けて、設備投資の下方修正が見込まれることがその理由である。
伊藤忠経済研▲1.1%
(▲4.2%)
11月末に公表された10月の鉱工業生産及び生産予測は、素直に解釈すれば10-12月期の生産増加ひいては景気持ち直しを示唆するものだった。しかし、当社では、実際には10-12月期の生産が引き続き減少し、日本経済の回復も来年1-3月期まで遅れると考えている。10-12月期の日本経済については、引き続きマイナス成長を予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.8%
(▲3.3%)
12 月10 日に公表予定の2012年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比-0.8%(年率-3.3%)と、1次速報値の同-0.9%(年率-3.5%)からほとんど変化がないであろう。
三菱総研▲0.8%
(▲3.0%)
2012年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.8%(年率▲3.0%)と、1次速報値からは+0.1%ポイント(年率+0.5%ポイント)の小幅の上方修正を予測する。

2次QE予想としては、1次QEから上方修正されるか下方修正されるか、シンクタンクなどの各機関で意見は分かれました。月曜日の記事で明記した通り、私は法人企業統計を見る限り、設備投資は下方修正されると考えています。ただし、本来業務の仕事が忙しくてサボっているだけなんですが、実は、それ以外の需要項目はよく見ていませんので、全体として下方修正される可能性もあると受け止めています。
それから、より私が重視している先行き見通しなんですが、多くのエコノミストのコンセンサスと同じで、伊藤忠商事経済研のご意見通り、10月鉱工業生産統計の増加でもって景気反転が始まった、とは考えておらず、その先の生産予測指数の12月指数は、あるいは、景気回復の始まりである可能性があるものの、10-12月期はマイナス成長が続き、本格的な景気の反転や景気回復の始まりは年明けになると見込んでいます。ということで、みずほ総研の「2013年1-3月期以降はプラス成長軌道に戻る見通し」というのが大方のコンセンサスであろうと私は考えています。

7-9月期のマイナス成長はすでに「過去の数字」となり、10-12月期の冴えない経済も織込み済みで、市場の目はすでに総選挙後の来年の経済動向に向かっているのかもしれません。気の早いお話しで鬼が笑うかもしれませんが、来年こそ本格的な力強い景気回復が実現されることを願っています。

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2012年12月 5日 (水)

2010年度「社会保障費用統計」に見る我が国の高齢者優遇!

先週11月29日の木曜日に国立社会保障・人口問題研究所 (IPSS) から2010年度の「社会保障費用統計」が公表されています。昨年までは、毎年ILO基準による「社会保障給付費」を公表していましたが、今年7月に社会保障費用統計として統計法2条第4項第3号による基幹統計指定を受けたことに伴い、名称を「社会保障費用統計」と改訂し、ILO基準に加えて国際比較が可能なOECD基準の社会支出の集計結果を追加して公表することとしたそうです。当然ながら、pdf の全文リポートもアップされています。まず、リポートから2010年度の社会保障給付のポイントを3点だけ引用すると以下の通りです。

社会保障費用の総額
・2010年度の社会保障給付費の総額は103兆4,879億円である。
・2010年度の社会保障給付費の対前年度伸び率は3.6%であり、対国内総生産比は21.60%である。
・国民1人当たりの社会保障給付費は80万8,100円であり、1世帯当たりでは208万9,200円である。

次に、かなり長期のデータをプロットしたグラフとして、リポート p.11 図4 部門別社会保障給付費の推移を引用すると以下の通りです。一目瞭然で引退世代への「年金」が大きく増加しているのが見て取れます。

部門別社会保障給付費

「福祉その他」に分類されてしまっているんですが、子ども手当はこのカテゴリーに含まれます。ですから、政権交代後の2010年度に増加しているのが見て取れます。もちろん、絶対額では引退世代向けの年金にまったく太刀打ち出来ません。世界の中でも高齢化が進んでいる我が国ですから、ある程度は割り引いて考える必要がありますが、シルバー・デモクラシーの圧倒的な政治的パワーにより、高齢者がとてつもなく優遇されていることが示唆されています。次に時系列で見た後は、子ども手当支給開始前ながら2009年の国際比較のグラフは下の通りです。

政策分野別社会保障支出の国際比較

上のパネルの社会保障支出のシェアを見れば明らかですが、我が国は持てる財源の半分近くを高齢区分に注ぎ込んでおり、家族区分は米国についてシェアが低くなっています。下のパネルのGDP比を見れば身の丈にあった社会保障かどうかが分かりますが、我が国の高齢区分の社会保障支出のGDP比はフランスよりは低いものの、高福祉国として世界に名だたる北欧のスウェーデンよりも手厚く、圧倒的な財政リソースが高齢者に流れ込んでいることが明らかです。再び同じ結論ですが、シルバー・デモクラシーの投票行動に支えられて、圧倒的な高齢者優遇と世代間格差がまかり通っているのが見て取れます。

小笠原泰・渡辺智之『2050 老人大国の現実』(東洋経済)

社会保障に関連して、小笠原泰・渡辺智之『2050 老人大国の現実』(東洋経済) を読みました。「団塊ジュニアのイナゴ化」とか、「社会保障の液状化」とか、決して学術書では見られない用語に戸惑いましたし、かなり観念的な論調が繰り広げられており、特に「ナショナルミニマム国家」というのも十分に理解した自信はないんですが、世代間格差について憤りを表明している点については共感しました。

昨夜の7時からのNHKニュースの選挙特集で各党党首が出演していましたが、野田総理が「現在の一番の社会的弱者は将来世代である」といった旨の発言をしていました。まったくその通りだと思います。選挙権がないゆえに政治に意見を反映することが出来ていません。12月16日の総選挙では私自身は少しでも世代間格差を縮小するような投票行動に努めたいと考えています。

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2012年12月 4日 (火)

毎月勤労統計に見る景気の動向

本日、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が発表されました。季節調整していない原系列の前年同月比で見て、所定外労働時間は減少しましたが、現金給与総額は増加しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

所定外給与、14カ月ぶりマイナス 製造業の残業減る
厚生労働省が4日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報)によると、残業代などの所定外給与は前年同月と比べ2.3%減り、1万8460円だった。減少は2011年8月以来14カ月ぶりで、製造業の残業が減ったことが主因。同省は「中国など海外経済の鈍化による輸出減少が響いた」と分析している。
残業など所定外の労働時間は全産業平均で4%減った。足元の景気動向を示すとされる製造業の所定外労働時間は6.8%の大幅減。特に自動車など輸送用機械工業では15.3%減り、落ち込みが大きかった。
基本給や家族手当を含む労働者1人当たりの「所定内給与」は24万4591円で、7カ月ぶりに前年同月比で増加に転じた。カレンダーの日並びで、前年に比べ平日が2日多かったため。

次に、いつもの所定外労働時間と賃金のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる所定外労働時間指数の季節調整値をプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。下は季節調整していない原系列の現金給与総額指数とそのうちの所定内賃金指数のそれぞれの前年同月比上昇率をプロットしています。

毎月勤労統計の推移

特に、上のパネルの所定外労働時間指数は、今さらながらに、今年3月を山とする景気後退期の影をつけると、真っ逆さまに落ちているように見えます。他方、10月統計では賃金は増加しています。やや複雑な動きだという気がしますが、雇用については所定外労働時間を別にすれば、有効求人倍率は低下気味とはいえ、失業率が上昇する局面には達しておらず、まだ底堅い可能性があります。いわば、日本的な雇用保蔵の範囲内の景気後退局面なのかもしれません。いずれにせよ、企業部門はまだ余裕があるハズですので、年明けとともに企業活動が回復に向かえば、タイムラグを伴いつつ雇用も少し遅れて回復する可能性は残されていると楽観しています。賃金についても、消費に相関する所定内賃金の方に注目であり、量的な雇用とともに価格たる賃金がそこそこ上向いて来れば消費の回復につながると期待しています。

昨日、ユーキャン新語・流行語大賞が発表されています。トップテンのうち、それなりに経済や消費に関係しそうな新語・流行語はLCC、終活、東京ソラマチ、といったところでしょうか。LCCに乗るかどうかは分かりませんが、終活はまだ先のことだという気がしますし、東京ソラマチにはこの冬休みにでも行ってみたいと考えています。

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2012年12月 3日 (月)

法人企業統計に見る我が国の企業活動はハッキリ鈍化を示す

本日、財務省から7-9月期の法人企業統計が発表されました。私が注目している季節調整済みの系列は3系列、すなわち、売上高と経常利益とソフトウェアを除く設備投資しか発表されないんですが、いずれも前期に比べて減少を示し、産業別では非製造業よりも製造業の方が落ち込みが大きかったです。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資2.2%増に鈍化 7-9月、海外経済の減速
財務省が3日発表した2012年7-9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比2.2%増の8兆8062億円となった。4四半期連続で増えたものの、世界経済の減速で先行きは見通しづらく、伸び率は4-6月期(7.7%)から大きく鈍化した。製造業は減収減益となったが、全産業では経費削減により増益を確保した。
財務省は「景気が世界経済の減速を背景に弱い動きとなっていることを確認する結果」との判断を示した。シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストは「先行きの不透明感で設備投資が先送りされ、強めだった投資計画も今後下方修正される可能性が高い」と分析している。
設備投資は製造業が0.5%増と、伸び率が前期(14.7%)から縮小した。前年同期に大型案件のあった情報通信機械が大幅に減少。鉄鋼が32.1%減、電気機械も投資計画の下方修正を受けて5.2%減となった。輸送用機械は自動車の新型車製造ラインの増設で21.5%増となり、堅調だった。
非製造業は3.3%増だった。情報通信がスマートフォン(高機能携帯電話)の増加に対応する基地局の増設で13.0%増えた。卸売・小売りもコンビニやスーパーの出店増で10.8%増えた。建設業は18.7%増。住宅用部材の増産対応やメガソーラーの建設が後押しした。
全産業の売上高は4.4%減の316兆2444億円、経常利益は6.3%増の10兆4536億円だった。自動車を含む輸送用機械は中国など世界経済の減速を背景に8.9%の減収だったが、経費節減を進めて増益を保った。
季節要因を除いたベースでは全産業の設備投資が4-6月期比で2.5%減となり、3四半期連続でマイナスになった。売上高は1.6%減、経常利益は1.7%減といずれも2四半期連続で減少した。
法人企業統計は国内総生産(GDP)を算出するための基礎統計の一つ。内閣府は今回の結果を踏まえて10日に7-9月期のGDP改定値を発表する。

次に、統計のヘッドラインとなる売上高と経常利益とソフトウェアを除く設備投資のそれぞれの季節調整済みの系列をプロットしたグラフは以下の通りです。上に引用した記事は最後から2つ目のパラグラフを除いて原系列の前年同期比で書かれている一方で、下のグラフは季節調整済みの系列を取り上げていますので、少し印象が異なる可能性があります。また、先週から始めたこのブログのローカル・ルールですが、今年2012年3月を景気の山と仮置きしています。従って、影をつけた景気後退期は四半期では2012年4-6月期から始まっています。

法人企業統計の推移

ほぼ、我が国の企業活動が悪化していることを確認できる内容だと受け止めています。産業ごとの売上高を季節調整していない原系列の前年同期比で見て、もっとも悪化しているのが情報通信機械の▲15.0%減であり、続いてテレビでクローズアップされた電気機械の▲13.9%$減が続きます。非製造業で売上高が2ケタ減したのは運輸業・郵便業だけです。経常利益でも、産業別に同じく原系列の前年同期比で見て、もっとも大きく減少した鉄鋼の▲85.8%減に続いて、電気機械の▲66.9%減でした。設備投資の前年同期比の減少幅を見ても、この鉄鋼と電気機械のワースト2の順番は変わりありません。鉱工業生産指数などの他の統計を見ても、海外経済の停滞を起点として輸出に依存する製造業に影響の大きい景気後退と考えてよさそうです。

労働分配率と損益分岐点の推移

さらに、上のグラフは季節調整していない原系列の統計から擬似的に労働分配率と損益分岐点比率を算出しています。労働分配率は後方4四半期移動平均で傾向を見ると、今年2012年の1-3月期から4-6月期にかけて低下を示しましたが、その動きは7-9月期で一服しています。労働分配率の低下は雇用の改善のために短期的には歓迎していたんですが、今後の動向が注目されます。損益分岐点は従来に比べてかなり複雑な動きを示しています。

最後に、この法人企業統計などを受けて、来週月曜日の12月10日に7-9月期の2次QEが公表されます。法人企業統計だけを見る限り、設備投資はやや下方修正されると私は予想しています。

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2012年12月 2日 (日)

今日は寒かった!

先々週の勤労感謝の前の日あたりから仕事が年末体制に入って忙しくなり、先週後半からはヘロヘロになりながらお仕事しているカンジです。それでも、年賀状は何枚か買い求めました。ここ数年、地球温暖化の影響か何か知りませんが、厳しい残暑が続いた後は秋が極端に短くて、すぐに冬になってしまう天候が特徴的です。私も先週半ばから背広の上にコートを着るようになりました。多くのサラリーマンが着ているような薄手のショートコートではなく、私の場合はイヌイットに由来するダッフルコートです。その昔なら、「オーバー」と称していたような気もします。マフラーで首周りを保護し、ニットの手袋で完全防寒体制です。通勤時は予防的措置でマスクをしていたりしますので、TPO を間違うと不審者の形かもしれません。それにしても今日は寒かったです。この冬一番の寒さだったのではなかったでしょうか。飽きもせずに週末はプールに通っていますが、行き帰りの自転車に乗る際の手袋は防寒用の厚い生地のグローブに変えました。
12月に入って、今週から来週にかけて、我が家の子供達も期末試験体制に入ります。何となく、インフルエンザの予防接種を受けるタイミングを逃しているんですが、苦手な忘年会も始まることですし、健康に留意して年末年始を迎えたいと思います。今年はカレンダーの並びがいいので、ゆっくり休めそうです。

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2012年12月 1日 (土)

ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波書店) を読む

ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波書店)

ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波書店) を読みました。作者は言わずと知れたスパイ小説といえば、第1に指を屈すべき巨匠です。出版社の岩波書店というのは少し違和感を覚えましたが、新しい試みかもしれません。まず、その出版社のサイトから本書のあらすじを引用すると以下の通りです。

ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』
カリブ海の朝七時,試合が始まった――.一度きりの豪奢なバカンスが,ロシアン・マフィアを巻き込んだ疑惑と欲望の渦巻く取引の場に! 恋人は何を知っているのか,このゲームに身を投げ出す価値はどこにあるのか? 政治と金,愛と信頼を賭けた壮大なフェア・プレイをサスペンス小説の巨匠ル・カレが描く,極上のエンターテインメント.

オックスフォード大学でチューターをしている青年と恋人がバカンスの先のカリブ海の島で、ロシアン・マフィアのマネー・ロンダラーとテニスをし、このロシアン・マフィアをマフィアに関する情報を持って英国に亡命させる、というストーリーです。何といっても、ル・カレの作品ですから、相変わらず、スパイ小説でも 007 シリーズのような派手な立ち回りはありません。スパイ個人とスパイ組織の悲しくなるくらいにパッとしない現状を明らかにし、クライマックスに向かって物語は進みます。細かな感情の動きやいろんな動作など、何ものもゆるがせにせず綿密に作品は構築されています。そして、最後にも悲しい結末が待っていたりします。
私は『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』、『スクールボーイ閣下』、『スマイリーと仲間たち』のいわゆるスマイリー3部作をはじめ、少なくとも、『リトル・ドラマー・ガール』と『パーフェクト・スパイ』の5作は読んでいるつもりなんですが、ソ連の崩壊と東西対立の解消の後、冷戦時代的なスパイ活動もなくなり、「ゴルゴ13」とともにスパイ小説からも遠ざかっていました。もう20年振りくらいにル・カレの小説を読みましたが、私自身が年齢を経たこともあり、ひとつ間違えば核戦争が起こりかねないような東西冷戦下のスパイ小説ほどのピリピリした緊張感は感じられません。もちろん、扱っているのは情報とともに作戦活動ですから、共通する部分はあります。何とも評価は難しいんですが、1980年代までの冷戦時代にル・カレのスパイ小説を愛読した者としては、少しだけ物足りない何かを感じざるを得ないのが正直なところです。
最後に、本書の雰囲気を動画で味わえる Penguin Canada 製作のトレイラーは以下の通りです。とってもカッコいいと思います。

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