池井戸潤『七つの会議』(日本経済新聞) を読む
池井戸潤『七つの会議』(日本経済新聞) を読みました。我が家では私とともに上の倅が池井戸ファンなので買い求めました。池井戸作品は今まで『オレたちバブル入行組』のシリーズ3冊、『空飛ぶタイヤ』、『鉄の骨』、直木賞受賞の『下町ロケット』、『ルーズヴェルト・ゲーム』などを読んで来ました。ということで、この作品『七つの会議』の章別構成は以下の通りです。なお、本書では「章」ではなく「話」を単位にしているようですが、同じことですので、このエントリーでは「章」ということで書き進める場合があります。悪しからず。
- 第一話
- 居眠り八角
- 第二話
- ねじ六奮戦記
- 第三話
- コトブキ退社
- 第四話
- 経理屋稼業
- 第五話
- 社内政治家
- 第六話
- 偽ライオン
- 第七話
- 御前会議
- 第八話
- 最終議案
舞台はとある家電メーカーの子会社の中小企業で製造業です。部長と同期で50歳に達する万年係長が、同期の中でもっとも早く課長に昇進した上司である30代のエリート課長をパワハラで社内委員会に訴え、かなりムリのある主張だったにもかかわらず、この訴えが認められ若手のエリート課長は人事部付に左遷させられるんですが、実は、この一連の人事はより大きな不都合を隠蔽し、リコールを避けてヤミ改修するための措置だったことが明らかにされて行きます。いろいろな節目で、営業の定例会議、ねじ製造零細企業の兄妹2人だけによる経営会議、職場環境改善のための環境会議、経理が営業を精査する計数会議、もちろん、企業の役員会議、そして、章のタイトルにもなっている御前会議などのさまざまな会議が舞台回しに使われ、同時に各章で主要人物の来歴が明らかにされます。各章の主人公といってもいいかもしれません。
先に書いた通り、私は何冊か池井戸作品を読んでいるんですが、この『七つの会議』の大きな特徴は、爽快な読後感ではなくもやもやとした少し粘着系の読後感が残ります。池井戸作品は最初から正義の側とやっつけられる側がハッキリと提示され、一直線に突き進むのがひとつの特徴ですが、この作品はそうなっていません。最後に印籠が出ない水戸黄門というか、桜吹雪が舞わない遠山の金さんというか、いつもの池井戸作品とはパターンが違っています。これを新境地と評価するのか、それとも構成に難があると評価するのか、意見が別れるところだと感じました。私はやや後者のネガティブに評価する側に近いです。繰返しになりますが、評価が分かれそうですので読んでみてのお楽しみということが出来るかもしれません。
章ごとに章別主人公の来歴が明らかにされるんですが、ほとんどが男性でその男性の配偶者も紹介されます。第四話の新田なんぞは夫婦そろってひどい性格に描写されていたりするんですが、本作品の影の主人公である八角夫妻は倫理観正しく清廉潔白でさっぱりしたよい性格に描かれています。類は友を呼ぶのかもしれません。果たして、我が夫婦やいかに?
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