法人企業統計に見る我が国の企業活動はハッキリ鈍化を示す
本日、財務省から7-9月期の法人企業統計が発表されました。私が注目している季節調整済みの系列は3系列、すなわち、売上高と経常利益とソフトウェアを除く設備投資しか発表されないんですが、いずれも前期に比べて減少を示し、産業別では非製造業よりも製造業の方が落ち込みが大きかったです。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
設備投資2.2%増に鈍化 7-9月、海外経済の減速
財務省が3日発表した2012年7-9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比2.2%増の8兆8062億円となった。4四半期連続で増えたものの、世界経済の減速で先行きは見通しづらく、伸び率は4-6月期(7.7%)から大きく鈍化した。製造業は減収減益となったが、全産業では経費削減により増益を確保した。
財務省は「景気が世界経済の減速を背景に弱い動きとなっていることを確認する結果」との判断を示した。シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストは「先行きの不透明感で設備投資が先送りされ、強めだった投資計画も今後下方修正される可能性が高い」と分析している。
設備投資は製造業が0.5%増と、伸び率が前期(14.7%)から縮小した。前年同期に大型案件のあった情報通信機械が大幅に減少。鉄鋼が32.1%減、電気機械も投資計画の下方修正を受けて5.2%減となった。輸送用機械は自動車の新型車製造ラインの増設で21.5%増となり、堅調だった。
非製造業は3.3%増だった。情報通信がスマートフォン(高機能携帯電話)の増加に対応する基地局の増設で13.0%増えた。卸売・小売りもコンビニやスーパーの出店増で10.8%増えた。建設業は18.7%増。住宅用部材の増産対応やメガソーラーの建設が後押しした。
全産業の売上高は4.4%減の316兆2444億円、経常利益は6.3%増の10兆4536億円だった。自動車を含む輸送用機械は中国など世界経済の減速を背景に8.9%の減収だったが、経費節減を進めて増益を保った。
季節要因を除いたベースでは全産業の設備投資が4-6月期比で2.5%減となり、3四半期連続でマイナスになった。売上高は1.6%減、経常利益は1.7%減といずれも2四半期連続で減少した。
法人企業統計は国内総生産(GDP)を算出するための基礎統計の一つ。内閣府は今回の結果を踏まえて10日に7-9月期のGDP改定値を発表する。
次に、統計のヘッドラインとなる売上高と経常利益とソフトウェアを除く設備投資のそれぞれの季節調整済みの系列をプロットしたグラフは以下の通りです。上に引用した記事は最後から2つ目のパラグラフを除いて原系列の前年同期比で書かれている一方で、下のグラフは季節調整済みの系列を取り上げていますので、少し印象が異なる可能性があります。また、先週から始めたこのブログのローカル・ルールですが、今年2012年3月を景気の山と仮置きしています。従って、影をつけた景気後退期は四半期では2012年4-6月期から始まっています。
ほぼ、我が国の企業活動が悪化していることを確認できる内容だと受け止めています。産業ごとの売上高を季節調整していない原系列の前年同期比で見て、もっとも悪化しているのが情報通信機械の▲15.0%減であり、続いてテレビでクローズアップされた電気機械の▲13.9%$減が続きます。非製造業で売上高が2ケタ減したのは運輸業・郵便業だけです。経常利益でも、産業別に同じく原系列の前年同期比で見て、もっとも大きく減少した鉄鋼の▲85.8%減に続いて、電気機械の▲66.9%減でした。設備投資の前年同期比の減少幅を見ても、この鉄鋼と電気機械のワースト2の順番は変わりありません。鉱工業生産指数などの他の統計を見ても、海外経済の停滞を起点として輸出に依存する製造業に影響の大きい景気後退と考えてよさそうです。
さらに、上のグラフは季節調整していない原系列の統計から擬似的に労働分配率と損益分岐点比率を算出しています。労働分配率は後方4四半期移動平均で傾向を見ると、今年2012年の1-3月期から4-6月期にかけて低下を示しましたが、その動きは7-9月期で一服しています。労働分配率の低下は雇用の改善のために短期的には歓迎していたんですが、今後の動向が注目されます。損益分岐点は従来に比べてかなり複雑な動きを示しています。
最後に、この法人企業統計などを受けて、来週月曜日の12月10日に7-9月期の2次QEが公表されます。法人企業統計だけを見る限り、設備投資はやや下方修正されると私は予想しています。
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