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2013年1月31日 (木)

鉱工業生産指数と毎月勤労統計から景気の動向を探る!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ発表されています。いずれも12月の統計です。毎月勤労統計の賃金こそ前年同月を下回り、現金給与総額は▲1.4%減を記録しましたが、鉱工業生産は市場の事前コンセンサスほどではないものの+2.5%の増産を記録し、所定外労働時間も季節調整値の前月比で+0.8%増と2か月連続で上向いています。まず、長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の鉱工業生産指数2.5%上昇 基調判断を上方修正
経済産業省が31日発表した2012年12月の鉱工業生産指数(05年=100、季節調整値)は88.9となり、前月比2.5%上昇した。前月を上回るのは2カ月ぶり。北米向け自動車など輸送機械の増産が全体を押し上げ、11年6月(3.8%)以来の上昇幅となった。経産省は基調判断を「下げ止まりの兆しが見られる」と上方修正した。円高修正や海外経済の持ち直しを受けて企業は先行き13年1月、2月も増産と見込んでいる。
生産指数は全16業種のうち12業種で前月を上回った。基調判断を前月までの「生産は低下傾向にある」から引き上げた。基調判断の上方修正は11カ月ぶり。
自動車など輸送機械工業の増産効果が最も大きく、伸び率は6.9%。北米向けに輸出する普通乗用車のほか、アフリカ・中南米向けトラックなどが好調だった。一般機械工業は8.7%増。米国・台湾向け半導体製造装置で大型案件があったほか、国内火力発電所の再稼働に伴うボイラー部品などが伸びた。電気機械工業は7.3%増で、気温低下でエアコンの需要が伸びた。
一方、電子部品・デバイス工業は5.3%減少と4カ月ぶりの低下となった。中国などアジアで生産するスマートフォン(スマホ)の需要が減り、半導体集積回路などスマホ向けの部品生産が計画を下回ったのが主因だ。これが響き、12月の生産指数は市場予想(4.0%増)や、経産省が先月発表した製造工業生産予測調査(6.7%増)を下回った。
同時に発表した製造工業生産予測調査は1月が2.6%増、2月が2.3%増を見込む。輸送機械工業や鉄鋼業などが好調で、3カ月連続の増加が実現すれば11年4-8月の5カ月連続プラス以来となる。
10-12月期の生産指数は87.8と前期比1.9%減と3四半期連続のマイナスを見込む。12年通年の生産指数は91.9と前年比0.3ポイント減となった。マイナスは2年連続。欧州債務危機に端を発する海外経済の低迷で輸出が落ち込んだことが主因だ。
12年の現金給与総額、過去最低 ボーナス減で2年連続マイナス
厚生労働省が31日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、2012年の従業員1人当たり月平均の現金給与総額は前年比0.6%減の31万4236円だった。前年を下回るのは2年連続で、比較可能な1990年以降の最低を更新した。東日本大震災や円高の影響による前期業績の低迷でボーナスが減少したことが響いた。パートタイム労働者が増加傾向にあることも減少要因になった。
ボーナスなどの特別に支払われた給与は3.1%減と3年ぶりにマイナスへ転じた。基本給や家族手当などを含んだ所定内給与は0.1%減と7年連続のマイナスだった。
一方、毎月の平均総労働時間は0.5%増の147.1時間。製造業の残業時間などの所定外労働時間は1.6%増の14.6時間だった。震災で寸断されたサプライチェーン(供給網)の復旧により、年前半に自動車などの生産が回復したことを反映した。
併せて発表した12年12月の現金給与総額は、前年同月比1.4%減の54万2075円と4カ月連続のマイナスだった。冬のボーナスなどの特別に支払われた給与が2.5%減ったことが響いた。製造業の所定外労働時間は前年の高い伸びの反動で8.1%減と5カ月連続のマイナス。ただ、季節調整して前月と比べると1.0%増と、6カ月ぶりにプラスへ転じた。足元で自動車などの生産が回復していることが背景にあるとみられる。

長いながらも、よくまとまった記事でした。続いて、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。なお、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月、さらに、景気の谷は2012年11月であったと仮置きしています。この点については、以下の毎月勤労統計のグラフでも同じです。

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生産については、先月の統計発表時点での製造工業生産予測指数では、12月が前月比+6.7%増、1月も+2.4%増と増産が見込まれていて、直近の市場の事前コンセンサスでも+4%くらいと予想されていました。これらの事前予想は下回りましたが、まずまずの内容と私は受け止めています。引用にもある通り、予測指数は引き続き堅調であり、1月+2.6%、2月+2.3%の増産を見込んでいて、実績は予測指数よりやや下振れする傾向があるとはいえ、基調判断が「下げ止まり」に上方修正されたのも当然です。生産に強い影響を及ぼす輸出も海外経済の持ち直しなどから昨年10-12月期を底に回復に向かう可能性が高いと私は見ており、極めて大胆にも、昨年2012年11月を景気の谷としてミニ景気後退はすでに終了した可能性があると受け止めています。なお、米国経済は先日発表された10-12月のGDPが3年半振りのマイナス成長を記録しましたが、主な要因は政府支出と在庫と輸出でしたので、民間需要は堅調と私は考えています。

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景気局面に関連して、在庫循環図は上の通りです。四半期統計の出荷の前年同期比を縦軸に、在庫率を横軸にプロットしています。景気局面に応じて右回りし、赤の破線の45度線が景気転換点になります。2005年1-3月期が緑色の矢印の点から始まり、2012年10-12月期の黄色の矢印まで、リーマン・ショックの際の景気後退期が大きく循環して、足元の2012年10-12月期は景気の山を超えて第2象限に位置しています。どうしても、第1象限の45度線を越えたあたりがグチャグチャに描けてしまうんですが、この在庫循環図から見ると在庫が積み上がって出荷が減少していますので、現在の景気はまだ在庫調整局面にあると見なされます。もう少し美しく循環するかと思いましたが、誠に残念ながらうまくいきませんでした。

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上のグラフは毎月勤労統計から、上のパネルは所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下は賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。季節調整済みの系列で見て、景気に敏感な上のパネルの所定外労働時間は底入れの兆しが見えます。賃金は昨年年末のボーナスが大きく下げ、現金給与総額は前年同月比で大きなマイナスを記録しましたが、恒常所得仮説に基づいて考えると、消費に対する影響の大きい所定内給与の下げ幅は小さく堅調な消費を下支えしています。今後、生産が増産を続けて残業が増加し賃金が上向けば消費の動きも期待できると私は受け止めています。

昨年10月30日付けのエントリーで鉱工業生産を取り上げ、10月31日付けのエントリーで毎月勤労統計を取り上げた際に、2012年3月くらいが景気の谷としても下降期間が12か月に達するかどうかで「景気の踊り場」か「景気後退」かを判断するひとつの目安になると書きましたが、もしも、私の勝手な判断で2012年3月が山で11月が谷とすれば、「景気後退」か「踊り場」かは極めて微妙なところです。一応、グラフに影はつけましたが、私の判断では「踊り場」で済ませていいような気もします。もっとも、政権交代の時期と重なりますので、何らかの別の観点が入る可能性もあります。

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2013年1月30日 (水)

商業販売統計に見る消費の現状やいかに?

本日、経済産業省から12月の商業販売統計が発表されました。小売業の販売額は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.4%増、季節調整済みの前月比で+0.1%増とともにプラスを記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の小売販売額、前年比0.4%増
経済産業省が30日朝発表した2012年12月の商業販売統計速報によると、小売業販売額は前年同月比0.4%増の13兆980億円で、2カ月連続で増加した。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.7%増の2兆1047億円。既存店ベースの販売額は横ばいだった。うち百貨店は1.0%減、スーパーは0.7%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.0%増の8354億円。既存店ベースは2.0%減だった。
併せて発表した12年の小売業販売額は前年比2.2%増の136兆9960億円で、2年ぶりに増加した。

次に、いつもの商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比、下は季節調整指数をそれぞれプロットしています。なお、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

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従来から、消費は底堅いと私は評価していますが、供給サイドの商業販売統計により、まさに裏付けられたと受け止めています。統計の詳細を前年同月比で見ても、家電エコポイントやエコカー補助金で需要を先食いしたテレビを含む機械器具や自動車が大きく足を引っ張っているほかは、飲食料品や衣類や燃料などは前年同月比でプラスを記録し堅調に推移しています。さらに、季節調整済みの系列で見れば、自動車は11月から、機械器具も12月には足元でプラスに転じており、政策効果に翻弄されたこれらの販売も底入れした可能性があります。消費から景気動向を把握するのは簡単ではないんですが、日経新聞の記事によれば、麻生副総理・財務大臣が財務省内で開いた全国財務局長会議であいさつし、景気について「足元では一部に下げ止まりの兆しもみられる」と発言したと報じられていたりして、あるいは、いいセンいっているんではないかという気がしないでもありません。

今夜は少し遅くなりましたので、簡単に済ませておきます。悪しからず。

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2013年1月29日 (火)

ジョン・クイギン『ゾンビ経済学』(筑摩書房) を読みリベラルな経済学について考える

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ジョン・クイギン『ゾンビ経済学』(筑摩書房) を読みました。副題は「死に損ないの5つの経済思想」となっています。著者はオーストラリアのクイーンズランド大学経済学部教授であり、邦訳は山形浩生です。まず、出版社のサイトからこの本の内容を引用すると以下の通りです。

この本の内容
かつて一世を風靡し、政策にまで影響を及ぼした経済理論は、本当に正しかったのか? 本書はこう答える―「経済学では、既に破綻した思想や理論が、破綻したあとも、ゾンビのごとく復活し、幅をきかせているのだ」と。大中庸時代説(安定した経済がずっと続く)、効率的市場仮説(市場は合理的でバブルは起きない)、DSGE(ミクロ的基礎付けを持つマクロ理論が重要)、トリクルダウン説(金持ちが豊かになれば貧困層にも恩恵がある)、民営化など。これらの経済理論は、世界金融危機のなかで、正当性を否定されたはずだった。なのに、いまだゾンビのごとく市場や経済界に跋扈して、あるべき経済理論を生みだす妨げとなっている。5つの理論は、どのように誕生し、どのような生涯を送り、どのように死に絶え、さらには復活を遂げてゾンビとなったのか―。

次に、章別構成は以下の通りです。まあ、上に引用した通りの5つの経済思想が並んでいるだけなんですが、一応、念のため。

第1章
大中庸時代
第2章
効率的市場仮説
第3章
動学的確率的一般均衡 (DSGE)
第4章
トリクルダウン経済学
第5章
民営化
結論
21世紀の経済学とは

第1章の大中庸時代は少しわかりにくいかもしれませんが、リーマン・ショックの少し前までのサブプライム・バブルのころには、ラインハート・ロゴフの著書のタイトルになっている This Time Is Different 今回は違う、とか、バブルではない、からさらに進んで、この好況により景気循環は克服され永遠の好景気が続く、という論調があったことを指します。童話から取って「ゴルディロックス経済」と呼ばれていたりしました。実は、同じような論調は1980年代末の我が国のバブル期にもあって、『平成元年 経済白書』には景気循環はすでに過去のものとなったような記述が何か所か散見されたりします。また、第2章で取り上げられている効率的市場仮説については本書でも何段階かあることは明らかにされており、『ウォール街のランダム・ウォーカー』で有名なマルキール教授などが指摘する「弱い意味での効率的市場仮説」は成り立つ可能性があるんではないかという気もします。もちろん、本書の p.101 にある「世界金融危機は何にも増して、効率的市場仮説に基づく金融規制モデルの失敗だった」という指摘はその通りです。第3章では動学的確率的一般均衡が批判されているというよりも、そのバックグラウンドにあるリアル・ビジネス・サイクル (RBC) モデルが「トンデモ」だということなんだろうと私は受け止めています。第4章のトリクルダウン経済学は国内の格差の正統化に用いられるのはいうに及ばず、さらに、途上国と先進国の間の格差にも現実的な処方箋を描けなくなっています。最後の民営化については米国のレーガン政権や英国のサッチャー政権の亡霊としか思えません。なお、本書でいうところの「ゾンビ思想」のいくつかを組み合わせたものが悪名高い「ワシントン・コンセンサス」であったことは軽く推察される通りです。
ということで、私は本書の内容をかなり評価しています。さらに、本書はかなりリベラルな経済学を展開しており、その意味でクルーグマン教授と同じ方向を示しているといえます。我が国の経済論壇に当てはめていえば、リフレ派がこのリベラルな経済学を志向していて、逆に、リフレ派を否定するエコノミストたちは金融政策などの政策効果を否定ないしは一時的と論難しているわけですから、ほとんどレーガン・サッチャー時代のような、今でいえば新自由主義的な保守的論調を展開していると私は受け止めています。政府の介入に対する見方を比べれば一目瞭然でしょう。私自身がリフレ派の論調を支持するのは、第1に、理論的に、明らかにフォーマルな定量分析でリフレ派の見解が支持されているからであり、逆に、新自由主義的な解釈は定量分析ではなく一定の偏りを持った思想的な基礎を置いているように私には見えるからです。もちろん、Hayashi and Prescott (2002) のような生産性ショックが日本経済の長期停滞の原因とする定量分析はいくつかあり、中長期の生産性向上が重要であることは当然ですが、本書のようにDSGEモデルやその基礎となるRBCに疑問が残るとする見方も決して無視できません。というか、私は本書のような見方の方に信頼が置けると考えています。第2に、実践的に、大学教員に出向している時にリーマン・ショックに遭遇し、若き大学生諸君の就職難を目の当たりに見て、何の政策的な対応もなく生産要素を遊休させておく愚を強く感じたからです。特に、日本の労働市場や勤労現場のように新卒採用に大きな偏重があって、かつ、OJTがかなり強力な環境では、卒業時に就職できない学生はその後の人生でさまざまなハンディを負うことにもなりかねません。従って、生産要素、特に若年労働力に遊休を生じさせないことを志向する現政権の積極的な政策対応は大いに期待が持てると私は評価しています。

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現在の安倍政権のリフレ策などの経済政策をさらに詳しく考えると、上の図が参考になります。実は、先週末から今週初めにかけて、みずほ総研が「緊急リポート」として何本か安倍政権の経済政策に関して取りまとめていますが、上の画像はそのうちの「安倍政権で何が変わるのか - 経済政策10分野での提案とマインド転換への10のポイント」の p.7 から引用しています。私のこのブログでも1月11日付けのエントリーで「解散とそれに続く pro-business な政権交代」と表現しましたが、みずほ総研でも同じように安倍政権の経済政策は「プロビジネス」と捉えています。民主党政権下では同じように政府が左端にあるとしても、企業と家計の位置関係が逆になっており、政府は子ども手当などの直接給付や社会保障などにより家計に対するサポートを重視していました。かつての政党名ではありませんが、「国民の生活が第一」というわけです。その家計が消費を増加させて企業活動を活発化させるというルートです。しかし、日本の景気循環の波及を考えると、拡張期も収縮期もいずれも家計ではなく企業活動が先行しており、米国経済とはまったく逆の順になっています。ですから、上の図にあるように、公共事業や税制などで企業を支援し、それが雇用や賃金を通じて家計の所得増に結びつくというルートは、我が国の景気循環の波及パターンを考えれば合理的であると考えることもできます。これは『ゾンビ経済学』で取り上げられ、格差の拡大を容認しかねない「トリクルダウン経済」とは異なる考え方だと私は受け止めています。

最後に、格差に関する対応なども含めて、アベノミクスの全容はまだ明らかになったとはいえないような気もしますし、生活保護の縮減も目指しているやに報じられていますが、少なくとも、生産要素の遊休を回避するという意味で、リフレ政策というリベラルなマクロ経済政策を志向していることは事実です。他方、私は専門外ながら経済政策以外、例えば安全保障政策では、憲法改正から始まって国防軍創設まで、リベラルとは真逆の政策を志向しているように見えなくもありません。私には手に余る部分も大いにありますが、まだ発足して1か月の現政権の経済政策を引き続きウォッチしたいと思います。

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2013年1月28日 (月)

企業向けサービス価格指数 (CSPI) と来年度物価見通し

本日、日銀から昨年12月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されました。12月統計では前年同月比で▲0.4%の下落、2012年通年平均では前年比▲0.3%の下落となり、引き続き物価は安定を欠いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、12年は3年連続最低 12月は0.4%下落
日銀が28日発表した2012年の企業向けサービス価格指数(CSPI、2005年平均=100)は95.9と、前年比0.3%下落した。4年連続の下落となり、1985年の統計開始以来の最低水準を3年連続で更新した。不動産や情報通信、リース・レンタルの価格下落が足を引っ張った。ただ、宿泊サービスの価格が上昇するなど東日本大震災後の落ち込みからの回復もあって、下落幅は11年(0.7%)より縮小した。
企業向けサービス価格は企業間で取引するサービスの価格動向を示す。
同時に発表した12年12月の指数は95.8となり、前年同月に比べ0.4%下落した。前年比の下落は7カ月連続。オフィス賃貸などの不動産や、ソフトウエア開発といった情報通信の価格下落が響いた。ただ、円安の影響や衆院選に関連した特需が寄与し、下落幅は2カ月連続で縮小した。12月は前月比で0.2%上昇し、前月比では2カ月連続でプラスとなった。
業種別でみると、運輸が前年比0.3%上昇となり、7カ月ぶりにプラスに転じた。外国為替市場で円安が進み、国際運賃を円換算した価格が押し上げられた。広告は0.8%下落と、下落幅を縮小。衆院選挙の特別番組が下支えした。一方、土木建築サービスなど諸サービスが上昇幅を縮めた。

次に、企業向けサービス価格指数 (CSPI) の前年同月比上昇率の推移のグラフは以下の通りです。月次統計で取っています。

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引用した報道にある通り、運輸業サービス価格が上昇しているんですが、外航タンカーや不定期船といった外航貨物輸送は、円安が直接的に影響している可能性があると私も見ています。運輸サービス以外も含めて、為替の円高是正が物価の安定に寄与しつつあるのは明らかです。また、テレビ広告や新聞広告といった4媒体広告もマイナス幅を着実に縮小させており、寄与度差ではプラスに転じていますが、国内の広告業の動向は先行指標の面もあり、今後の国内経済の先行きを占う上でも期待できる材料と受け止めています。

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また、本日、「平成25年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」が閣議了解されています。上のグラフは最終の p.7 から物価関係指数の変化率を引用しています。今日発表の企業向けサービス価格指数の見通しはありませんが、円高是正の進行と需給ギャップの縮小から、GDPデフレータ、消費者物価、国内企業物価のすべてが来年度はプラスに転ずると見込まれています。ただし、消費者物価上昇率はわずかに+0.5%であり、インフレ目標の+2%に遠く及びません。デフレ脱却とインフレ目標達成のためには強力な金融政策の後押しが必要です。

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2013年1月27日 (日)

吉田修一『路』(文芸春秋) を読む

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吉田修一『路』(文芸春秋) を読みました。台湾を舞台に新幹線の売込みを図る商社の女性社員を主人公にして、ビジネス小説というよりも人間関係を中心に描いた小説です。まず、出版社の特設サイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

あらすじ
1999年、台北-高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。
入社4年目の商社員、多田春香は現地への出向が決まった。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。
台湾と日本の仕事のやり方の違いに翻弄される日本人商社員・安西、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生・陳威志、台湾で生まれ育ち終戦後に日本に帰ってきた日本人老人・葉山勝一郎、そして日本に留学し建築士として日本で働く台湾人青年・劉人豪。
それぞれ別々に進んでいた物語が台湾新幹線をきっかけに収斂されていく。1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。

繰返しになりますが、企業小説やビジネス小説ではないことを前提に読むべきです。台湾新幹線を落札した日本の総合商社の社員を主人公に、日本で働く台湾人の建築家、台湾で生まれて青春時代を過ごした老人、台湾ローカルの若者とカナダ留学から予期せぬ帰国をした台湾人女性のカップル、などなど、さまざまな人間模様をたどりながら、台湾新幹線や我が国の昭和30年代の高度成長期のような活気あふれる台湾経済をバックグラウンドに物語は進みます。
このところ、企業小説・ビジネス小説といえば池井戸潤の作品を私は読んでおり、その観点からは物足りないと感じてしまいました。直木賞受賞作の『下町ロケット』や『ルーズヴェルト・ゲーム』のような理系トピックはまったくありませんし、主人公の同僚の男性商社マンは台湾人女性と浮気して離婚したリ、主人公も仕事よりは食い気に走って、仕事よりも食べ物や現地採用女性との会話がお話しの中心です。アルジェリアの事件があって何人もの犠牲者が出たタイミングだけに、商社のお気楽なお仕事振りが目につく気もします。
同じ傾向は吉田修一だけでなく、有川浩にも感じられ、ビジネス小説ではないものの、お仕事を正面から捉えた本作品とか有川作品の『県庁おもてなし課』や『空飛ぶ広報室』なんかは物足りなく感じられる一方で、吉田作品の『横道世之介』や有川作品の『植物図鑑』なんぞは、学生の本分たる勉学やビジネスの現場はほとんど関係ない内容で、私はとてもよい作品のように受け止めています。有川作品の『フリーター、家を買う』はその中間です。吉田修一や有川浩はややエンタメ傾向が強く、ビジネスを正面から描き切る作品は向いていないのかもしれません。

別の機会に取り上げましたが、来月2月下旬には、この作者の『横道世之介』を原作とする映画が公開されます。私は吉田作品をすべて読んだわけではないものの、この『横道世之介』は吉田修一の最高傑作ではないかと考えており、前売り券ももう買ってあり映画をとても楽しみにしています。

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2013年1月26日 (土)

上野の国立博物館に特別展「書聖 王羲之」を見に行く

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今日は、朝から出かけて上野の国立博物館で開催されている特別展「書聖 王羲之」を見に行きました。昨年のこの時期は、「北京故宮博物院200選展」に行きながら、お目当ての「清明上河図」の行列に恐れをなし、さらに、昨夏のマウリッツハイス美術館展を経て、東京で週末に美術展を見に行くことはほとんど諦めていたんですが、これだけは逃せないと意を決して臨みました。9時半の開館の数分前に到着し、すべてを見終えることが出来ました。1時間では足りません。
私が書道を習っていたころは、欧陽詢の「九成宮醴泉銘」を先生から手本に与えられ、延々と来る日も来る日も北魏から隋や初唐のころの楷書とチョッピリ行書を練習していた記憶があります。一般には、楷書を崩したのが行書で、さらに崩すと草書になると考えられていますが、平仮名はともかく、漢字については歴史的な成立ちは逆です。シャラシャラと書いていた草書をキチンと書くようになって行書が成立し、さらに宮廷や下っては科挙における正式な文字として楷書が成立します。時代的には、北魏から隋や初唐のころに当たります。その中でも王羲之は「書聖」と称されるだけあって、飛び抜けた存在です。書の芸術性を完璧に確立し、書の普遍性を完成させたといえます。王羲之自身は唐の前の東晋の人ですが、唐の太宗は王羲之の書を愛し、ほぼすべてを収集した上でお墓である昭陵に持って行ってしまいましたので、王羲之の真筆を見た人は現在ではいません。模写が残されているだけです。

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王羲之の書でもっとも有名なのは上の「蘭亭序」ですが、国宝の「孔侍中帖」、「喪乱帖」、世界で初めて公開された「王羲之尺牘 大報帖」など、王羲之の書を心行くまで堪能することが出来ます。まあ、今回見逃しても、同じような展覧会はこの先数年おきに開催されることと思いますが、書の愛好家としては見ておくべき展覧会だという気がします。

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2013年1月25日 (金)

インフレ目標設定後に初めて発表された消費者物価の動向やいかに?

本日、総務省統計局から12月の全国と1月の東京都区部の消費者物価 (CPI) が発表されました。今週の日銀金融政策決定会合においてインフレ目標を2%とする政府と日銀の共同声明が明らかにされたばかりですが、当然ながら、注目を集めた一方で、一気に消費者物価上昇率が跳ね上がるわけもなく、生鮮食品を除く総合で定義されるコア消費者物価上昇率は、12月の全国が▲0.2%、1月の東京都区部は▲0.6%と消費者物価は大いに安定を欠いて引き続きデフレが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月消費者物価、2カ月連続下落 12年平均は4年連続マイナス
総務省が25日発表した2012年12月の全国消費者物価指数(CPI、10年=100)は生鮮食品を除く総合が99.4と前年同月と比べて0.2%下落した。マイナスは2カ月連続で、下落率は前月から0.1ポイント拡大した。電気代などのエネルギー価格の上昇が下支えする一方、娯楽関連のサービス価格の下落が響いた。
項目別にみると、教養娯楽サービスは1.6%下落。NHK受信料の引き下げに加え、インターネット接続料、外国パック旅行が下がった。また電気冷蔵庫などの家庭用耐久財が6.6%下落したほか、ノート型パソコンも下落。家電の値下がりは続き、食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)でみても98.0と0.6%下落した。
一方で、価格変動が大きい生鮮食品を含む総合は0.1%下落の99.3。電気代が4.4%上昇するなどエネルギー価格の高止まりが続いたことに加え、ホウレンソウやトマトなどの生鮮食品が値上がりした。
併せて発表した12年平均の全国CPIは生鮮食品を除く総合は99.7と前年比0.1%下落し、4年連続のマイナスとなった。テレビや電気冷蔵庫など家電が「引き続き下がっている傾向がみられる」(総務省)といい、耐久財が主導するデフレ基調は根強い。
生鮮食品を含む総合は99.7と前年から横ばい。電気・ガス代などの光熱費やガソリンが上昇したほか、国産米など穀類も指数を押し上げ、4年ぶりにマイナス圏を脱した。
先行指標とされる13年1月の東京都区部CPI(中旬の速報値、10年=100)は生鮮食品を除く総合が98.3と前年同月比0.5%下落した。家電の下落基調が続いていることやマグロなどの魚介類の価格が下落した。
総務省は1月分から調査品目の中間年見直しとしてスマートフォン(スマホ)関連の価格を追加した。しかし、「計算式の関係で影響が出るのは2月以降」といい、1月分には従来型携帯電話の価格変動しか反映されていない。

続いて、消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。青い折れ線が全国の生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率となっており、積上げ棒グラフがその寄与度を表しています。赤い折れ線グラフは食料とエネルギーを除く全国の総合であるコアコアCPIの、グレーの折れ線は東京都区部のコアCPIの、それぞれ前年同月比上昇率です。

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繰返しになりますが、金融政策にインフレ目標が導入されたとはいえ、そうそう急に消費者物価上昇率が跳ね上がるわけではありません。全国の生鮮食品を除くコアCPI前年同月比上昇率で見て、11-12月と9-10月からエネルギーの寄与が低下したので、コアCPI上昇率のマイナス幅も拡大しました。円安に振れている分、輸入エネルギー価格は上昇する方向にあると考えられますので、一定のラグを伴ってコアCPIの上昇に寄与するものと期待しています。要するに、エネルギー価格次第の消費者物価という姿は変わりありません。もっとも、モデルチェンジか銘柄変更か知りませんが、テレビの価格が昨年の2月にジャンプしており、足元では2月統計からその影響が出て、昨年のテレビ価格の反動のためにCPI上昇率が下振れする可能性があります。エコノミストの間では、3-4月くらいでコアCPI上昇率が▲0.5%くらいまでマイナス幅を拡大するとの説も見かけました。新しい日銀総裁の就任に前後してCPI上昇率が大きく低下するとの見込みです。年度明け早々に思い切った追加緩和が始まる可能性があります。いずれにせよ、金融政策のラグはかなり長いでしょうから、2%のインフレ目標に到達するのは3年くらいかかるのではないかとの見方もあり、気長にCPIを眺めることになるんでしょうか?

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2013年1月24日 (木)

国際通貨基金 (IMF) の「世界経済見通し改定見通し」やいかに?

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し改訂見通し」 World Economic Outlook Update が公表されています。副題は Gradual Upturn in Global Growth During 2013 とされており、緩やかなペースながら今年は世界経済が上向く年になると見込んでいます。ただし、新興国・途上国は別にして、先進国の中で今年は欧州が、来年は日本が成長率見通しの下方修正の対象となっており、成長率は一段の減速を見せると見込まれています。まず、少し長くなりますが、リポートからサマリーを引用すると以下の通りです。我が国に関する部分は青字にしてあります。

Gradual Upturn in Global Growth During 2013
Global growth is projected to increase during 2013, as the factors underlying soft global activity are expected to subside. However, this upturn is projected to be more gradual than in the October 2012 World Economic Outlook (WEO) projections. Policy actions have lowered acute crisis risks in the euro area and the United States. But in the euro area, the return to recovery after a protracted contraction is delayed. While Japan has slid into recession, stimulus is expected to boost growth in the near term. At the same time, policies have supported a modest growth pickup in some emerging market economies, although others continue to struggle with weak external demand and domestic bottlenecks. If crisis risks do not materialize and financial conditions continue to improve, global growth could be stronger than projected. However, downside risks remain significant, including renewed setbacks in the euro area and risks of excessive near-term fiscal consolidation in the United States. Policy action must urgently address these risks.

次に、見通しのヘッドラインとなる成長率の総括表を IMF のサイトから引用すると以下の通りです。なお、画像をクリックすると、さらに詳細な情報を含むリポート p.2 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections だけを抽出したpdfファイルが別タブで開きます。

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日本経済については、「景気後退は短期に終了する」 "The recession is expected to be short-lived" と見込まれており、上の表にある通り、今年は+1.2%のほぼ潜在成長率近傍の成長を達成し、来年は消費税率引上げの影響などから成長は鈍化するものの+0.7%と見込まれています。成長と物価の引上げのために、「より野心的な金融緩和」 "more ambitious monetary policy easing"、「信頼を得られる中期的な財政再建策」 "a credible medium-term fiscal consolidation plan"、「構造改革を通じた潜在成長率の引上げ」 "raise potential growth through structural reforms"、にプライオリティを置くべきと指摘しています。いうまでもありませんが、これらはそのまま安倍内閣のいわゆる「3本の矢」に当たります。IMF は安倍内閣の経済政策を追認したといえます。しかし、リスクも指摘されており、世界経済全体では欧州の経済停滞の深刻化と米国財政の過度の調整が下方リスクと捉えられています。また、我が国においては、「強力な中期的財政戦略を欠いては財政浮揚策は深刻なリスクをもたらす。特に、財政浮揚策にけん引された回復が短期で終了し、債務見通しが大きく悪化する可能性がある。」 "Absent a strong medium-term fiscal strategy, the stimulus package carries important risks. Specifically, the stimulus-induced recovery could prove short lived, and the debt outlook significantly worse." と指摘されています。極めて婉曲な表現ながら、景気拡大のために財政政策よりも金融政策のプライオリティを高め、来年2014年4月からの消費税率引上げを確実に実施することを求めているものと理解すべきです。さらに、明示的に主張されていないことも重要なんですが、3ページほどのリポートを読む限り、自国通貨の減価による輸出増を問題視するような論調は見られないと受け止めています。

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IMF の「経済見通し改定見通し」を離れて、本日、財務省から12月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出が5兆3003億円、輸入が5兆9418億円、差引き貿易赤字が▲6415億円となりました。おそらく、メディアでは2012年通年の貿易赤字が過去最大の▲6兆9273億円となったことを大々的に報じそうな気がしますが、私は上のグラフの下のパネルの季節調整済みの輸出が昨年10月を底に上向いていることを重視しています。もっとも、四半期で見てGDPベースの外需は10-12月期は▲0.2-▲0.3%くらいのマイナス寄与になるものと見込まれます。

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2013年1月23日 (水)

橘木俊詔・浦川邦夫『日本の地域間格差』(日本評論社) を読み、東京一極集中を考える

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橘木俊詔・浦川邦夫『日本の地域間格差』(日本評論社) を読みました。副題は「東京一極集中型から八ヶ岳方式へ」とされており、基本的な論調は、東京一極集中を是正することにより、我が国の地域間格差を縮小を目指す、という主張です。同じ出版社の「経済セミナー」という雑誌に連載されていた論文を取りまとめたものです。まず、出版社のサイトからごく簡単な内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
行政サービス、所得や雇用環境は、地域によってどの程度差があるのか。地域間格差の実態や特徴に焦点をあて、詳細な検証を行う。

続いて、章別の構成は以下の通りです。

第1章
地域住民の生活意識と格差
第2章
先進諸国と比較した日本の地域間格差
第3章
住民の地域移動の要因
第4章
企業立地の地域間格差
第5章
地域間の賃金格差と貧困の現状
第6章
行政サービスの地域間格差
第7章
地域間格差がもたらす影響: 健康、学力、ソーシャル・キャピタル、幸福
第8章
地域間格差の是正策:財政調整か、東京一極集中をやめるか
第9章
東京一極集中をやめる方策

繰返しになりますが、地域間格差の是正を目指すのはいいとしても、そのために東京一極集中を排除することを目指すという主張なんですが、私には必ずしも賛同できません。というのは、この本にも引用されていますが、いくつかの既存研究では東京の一極集中を維持したままの地域間格差是正策が論じられていることも確かですし、比較考量の問題として、東京の一極集中をこの本の最終章で論じているような非市場的な政策により強引に是正するコストと地域間格差是正のベネフィットがまったく論じられていないのは奇異に感じます。特に、東京の一極集中のデメリットに関する指摘は p.190 の下半分の2パラにとどまっており、内容も内外価格差と首都直下型地震への備えとしての分散化という陳腐な内容となっています。もともと、格差是正に関する議論は「どの程度の格差であれば許容できるか」というもっとも肝になるポイントを意図的に外して進められていることは確かですが、第9章の冒頭に述べられているように、東京の一極集中をもって地域間格差の是正を進めようと主張している本書において、東京の一極集中のデメリットがこの程度しか議論されないのはお粗末極まりなく、特に、現在の東京一極集中は、お江戸の昔の出発点はかなり人為的であったとしても、その後は経路依存性が強いと私は受け止めており、財政リソースによるインセンティブを主とする政策的な非市場的手段による分散はコストが高いと直感的に感じてしまいます。産業も地域も補助金がなければ育たないのであれば、ホントにその産業や地域に補助金を出すことがいいのかどうか、もう一度見直すべきだと私は考えます。その点に関する論証を欠いては、関西在住や九州在住のエコノミストの勝手な主張と受け取られかねない恐れがあります。
分析はフォーマルな定量分析を実施していますが、問題点が2つあります。第1は、オピニオン・ポールという意識調査のソフトデータから無理やりに格差を説明しようとしていることです。第2に、相関関係と因果関係に関する混乱が見られます。例えば、第3章の住民の地方移動の要因の分析について、地方出身-都市在住者が、私もそうですが、高所得を志向して移動したという因果関係なのか、都市へ移動した結果として高所得になったという因果関係なのか、単なる操作変数を用いたクロスセクションの最小二乗法では、どこまでの結論が引き出せるか疑問が残ります。最後の第9章においても、東京への一極集中によるデメリットに関する議論で、東京などの大都市の機能不全が我が国経済の低迷の一因のように論述されています (p.195) が、因果関係は逆、すなわち、日本経済の長期低迷によりニューヨークや上海に比べて東京の地位が低下したのではないか、と感じるエコノミストやビジネスマンは少なくないと受け止めています。

地域間格差を離れて、本日、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」の改定版 World Economic Outlook (WEO) Update が発表される予定となっています。国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特色のひとつですから、なるべく早く取り上げたいと思います。

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2013年1月22日 (火)

日銀金融政策決定会合の次の注目点は執行部人事!

今日までの日銀金融政策決定会合が終わり、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について (共同声明)」が発表されました。反対票が2票あり、佐藤委員と木内委員が2パーセントの目標に対して反対票を投じました。内容は広く報じられている通りで、私の感想は昨夜とほぼ同じです。ただ、昨夜の記事に書き忘れた点は、金融政策のラグの長さです。これを考慮すれば、物価目標の2パーセントに達するまでに3年やそこらはかかってしまうので、それなりに気長に考える必要があるんですが、逆に、ラグが長いだけにスピード感を持った金融政策運営に努めないと、いつまでたっても目標に向かって前進しているように見えない恐れもあります。
金融政策決定会合が終了し、今週中に経済財政諮問会議での集中討議も実施されますので、その先の注目点は3-4月の日銀執行部人事となります。野党に下野した民主党も、どうも前回の日銀総裁の選定には失敗した、と考え始めているように見えなくもなく、与野党そろってデフレ脱却のための適切な日銀総裁の選定が滞りなく運ぶように願っています。なお、1998年の日銀法改正以降、今までの3代15年に渡る日銀総裁がすべて日銀ご出身であり、私の目から見て忌憚なく申し上げれば、最初の速水総裁はほぼ最低でしたし、次の福井総裁は当時の小泉総理から「デフレ脱却」を強く要請されて日銀総裁になりながら、就任早々に「魔法の杖はない」と発言して日銀スタッフに取り込まれて期待を裏切りましたし、現在の白川総裁は福井総裁より下の評価で、速水総裁よりマシなんでしょうが、明らかに速水総裁に近い低い評価となります。本屋で立ち読みしただけですが、浜田教授の新著『アメリカは日本経済の復活を知っている』には、かなり強烈な教え子白川総裁評が収録されています。いずれにせよ、私から見て3人とも合格点にほど遠いと感じざるを得ません。

日銀出身だから、財務省出身だから、といった出身団体で括ることが適当なのかどうか、私は今ひとつ自信がありませんが、ご出身の組織にかかわらず、何とか次の総裁にはデフレ脱却のための強力な金融政策運営をお願いしたいものです。

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2013年1月21日 (月)

今日から始まった日銀金融政策決定会合の注目点やいかに?

本日から明日まで日銀金融政策決定会合が開催されています。昨年12月20日付けのエントリー「金融政策の追加緩和よりも1月の金融政策決定会合に注目!」で指摘した会議です。報道などでは、インフレ目標に関する政府と日銀の共同文書が取り交わされ、日銀が2か月連続の金融緩和に踏み切るとのもっぱらのウワサです。ということで、現在進行形の明日までの会議の注目点とともに、3月の副総裁、4月の総裁の交代くらいまでの期間を考えて、日銀の金融政策のポイントについて軽く考えたいと思います。

まず、現在進行形の日銀金融政策決定会合については、すでに大々的に報じられているので、かなり内容は固まっているように受け止めていますが、政府と日銀の合意文書も含めて、以下の点がポイントになると私は考えています。

  1. 現行の goal ではない target の英訳を当てるべきインフレ目標とするかどうか?
  2. インフレ目標は何パーセントか?
  3. インフレ目標達成の期間はいつまでか?
  4. インフレ目標の達成へ向けたプロセスをどのように検証するか?
  5. 追加緩和の内容はどのようなものか?

第1の点は文句なく yes であり、第2の点は2パーセントであると広く報じられています。ただし、可能性としては幅を持って示される可能性は、限りなくゼロに近い印象がありますが、諸外国の例からすればゼロではありません。第3の点については、報道では明示しないとされていますが、オーソドックスなインフレ目標政策の観点からは、目標達成の期間を明示しないことはあり得ません。ただし、第4の点とセットにして明示しない可能性は残されています。私自身は「中期的」くらいの文言は欲しい気がします。第4の点も広く報じられている通り経済財政諮問会議にて目標管理がなされるといわれているようです。第5の点についても、資産等買入れ基金の10兆円増額とウワサされていたりします。

次に、今日明日の会合だけでなく、3-4月の日銀執行部人事とも関係して、目先の金融政策に関するトピックは以下のような点になろうかと私は考えています。なお、先に上げたポイントの第3の点、すなわち目標の達成期間は明示されない可能性があるとの報道ですので、あえて意図的に重複させてあります。

  1. インフレ目標達成の期間はいつまでか?
  2. 金融政策のレジーム変更はなされるか?
  3. 補完当座預金制度、すなわち、超過当座預金への付利は撤廃されるか?
  4. 銀行券ルールは撤廃されるか?
  5. 物価と雇用の dual mandate は導入されるか?

第1の点は先に上げたポイントと重複します。繰返しを避けると、経済学の教科書的にいえば、短期とは物価変動なしに量で調整がなされる世界であり、逆に、長期とはすべてを価格が調整する世界ですので、インフレ目標は中期的に達成するしかないんですが、諸外国の例からして、1年半から2-3年の中期で達成することを目標にしている事例が多いように私は受け止めています。第2の点については、もっと分かりやすくいえば、今の白川総裁が著書の『現代の金融政策』で指摘したように、金融政策とはオペによる政策金利の変更により行うのか、それとも、政策金利ではなく当座預金残高などの量的な指標に合わせて政策運営するのか、ということです。現在のデフレを考慮すれば、私はレジーム変更が必要な可能性があると受け止めています。第3の点は白井政策委員が指摘していると報じられています。準備預金=当座預金への需要関数を考慮すれば、超過準備に付利されている金利が政策金利のフロアとなりますので、超過準備に0.1%の金利が付利されている限り政策金路はそれ以下に下がらないことになります。サードパーティ・リスクが大きくて短期金融市場の機能が不十分だったころはともかく、現時点では超過準備への付利は撤廃されるべきであると私は考えています。なお、超過準備への付利と政策金利との関係については、当時の理事長だった深尾教授が解説した「深尾光洋の金融経済を読み解く」という日経センターのコラムが詳しいです。第4の点は、長期国債の保有残高が銀行券の発行残高を超えないようにする銀行券ルールについて、赤字財政のファイナンスにならないための歯止めと日銀では解説していますが、何の理論的根拠もなければ実践的にもすでに有名無実となっており、実態に合わせて撤廃されるべきであると私は考えています。最後の物価と雇用の dual mandate については、現時点で私には何ともいえません。金融政策のバックグラウンドにはフィリップス曲線があると私は考えており、かなり強烈な仮定ですが、フィリップス曲線が安定的であれば、ある物価上昇率に対して失業率がユニークに対応しますから、dual mandate を追いかける必要はないというのが基本となります。しかし、米国の連邦準備制度理事会のような例もありますし、現時点では判断できません。現政権の日銀不信がそこまで大きくないと願わずにおれません。

明日の午後には、白川総裁と然るべき政府要人が共同文書ほかについて記者発表し、これを受けて経済財政諮問会議が開催されると聞き及んでいます。今日の明日ですから、私の考える基本ラインは上と変わりないと思いますが、それなりにフォローしておきたいと考えています。

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2013年1月20日 (日)

冨田勲「惑星 Planets Ultimate Edition」を聞く

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センター試験2日目は大寒です。しかし、センター試験とは何の関係もなく、私は寒い中で昨日は村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読んで過ごし、今日は冨田勲「惑星 Planets Ultimate Edition」を聞いて過ごします。『コインロッカー・ベイビーズ』はラクに30年前なんですが、「惑星 Planets Ultimate Edition」は一応2011年です。比較の問題ながら、新しいといえましょう。
当然ながら、「惑星 Planets Ultimate Edition」は基本的にホルストの作曲になる組曲なんですが、このブログの昨年2011年4月3日付けの記事では佐渡裕指揮のNHK交響楽団によるアルバムを取り上げています。今日の記事で取り上げるアルバムは冨田勲のシンセサイザーです。なお、冨田勲は10年ほど前に「惑星 2003」を発表していますので、今回のようなアルバム・タイトルになったのでしょう。また、佐渡裕指揮のNHK交響楽団バージョンにはありませんが、「惑星」にはオマケが付いている時があり、私の知る限り「冥王星」が多いような気がします。というのは、ホルストが「惑星」を作曲したのは1914-16年ころといわれていて、初演は1920年なんですが、冥王星の発見は1930年であり、組曲「惑星」には入っていません。ということで、このアルバム「惑星 Planets Ultimate Edition」には5曲目に「イトカワとはやぶさ」がオマケで入っています。いかにもという気がします。

英語の Planet の邦訳としては、よく知られている通り、東大の「惑星」と京大の「遊星」があり、ノーベル賞受賞者数で優勢な京大が、この邦訳というか命名では東大に一歩譲った形になっています。まあ、今さらどうしようもないんでしょうね。

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2013年1月19日 (土)

明日の大寒を前に今日からセンター試験が始まる

明日の大寒を前に、今日から大学入試のセンター試験が始まりました。明日までです。今日明日は、東京ではこの季節にしてはまずまず暖かな気候で、雪が残っているとはいえ気象条件はよさそうです。私も少し前まで単身赴任して地方大学の教員をしていましたので、受験生にとってセンター試験の重要性はそれなりに理解しているつもりですし、何といっても、我が家の上の倅が高校生になりましたから、決してひとごとではあり得ません。といいつつ、今日はプール以外はほぼ1日中『コインロッカー・ベイビーズ』を読んで過ごしました。現代日本文学の傑作のひとつだという気がします。

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それはともかく、
がんばれ受験生!

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2013年1月18日 (金)

三浦しをんの最近の小説とエッセイを読む

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私の大好きな作家であり、昨年のベストセラー小説『舟を編む』の著者である三浦しをんの本を何冊か読みました。まず、小説は神去シリーズの2冊、『神去なあなあ日常』とそのスピンオフ版である『神去なあなあ夜話』です。両者の関係は、三浦しをんが直木賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』と『まほろ駅前番外地』のような関係です。ちなみに、私はどちらも読んでいます。おそらく、著者の祖母の住む三重県の林業地域をひとつのモチーフにした作品で、高校を卒業して三重県の林業会社に無理やりに就職させられた若者の視点から、林業地域のゆったりした生活が描かれます。クライマックスは祭りだったり、遭難だったりします。どちらも、とてもいい小説でオススメです。

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上の画像は同じ三浦しをんの最近のエッセイです。左の『お友だちからお願いします』は従来からと同じシリーズのエッセイなんですが、右の『本屋さんで待ちあわせ』は書評集となっています。私は知らなかったんですが、三浦しをんは我が家と同じように一家そろって阪神ファンにもかかわらず、何と、読売新聞の読書委員をしているそうです。私は、新潮文庫に収録されている三浦しをんのエッセイ、すなわち、『夢のような幸福』以下、表紙の女の子が増えて行くシリーズは、たぶん、すべて読んだと思います。それらに比べて、著者自身が強く主張していますが、『お友だちからお願いします』は上品度が大幅にアップしています。それでも、『本屋さんで待ちあわせ』の最後の方に取り上げられている酒井順子の『紫式部の欲望』なんかのエッセイに比べて、非常に日常的な話題を取り上げていて、大衆度や日常度は高いと思います。大学のリポートみたいな酒井順子のエッセイのようにペダンティックな要素を求めるのではなく、人間観察や比喩の描写の鋭さで評価すべきです。それにしても、『本屋さんで待ちあわせ』で取り上げられていて書評の対象になっている本のうち、角田光代『八日目の蝉』くらいしか私は読んだことがなく、同時に、酒井順子『紫式部の欲望』くらいしか読みたいと感じた本もなく、ずいぶんと私とは読書の傾向が異なるのだと感じざるを得ませんでした。

三浦しをんの最近のエッセイのうち、岡元麻理恵との共著で、ワインを楽しむために先生に入門した講座の模様を取り上げた『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ 進めマイワイン道!』(ポプラ社) も図書館から借りたんですが、私はお酒を飲まないので借りている期間中に読み切ることが出来ずに諦めました。何かの機会にもう一度挑戦したいと思います。

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2013年1月17日 (木)

フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読む

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フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読みました。マルクス主義に立脚するフランス人エコノミストがスピノザの視点から新自由主義資本主義社会における支配と隷属を解き明かそうと試みています。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?
「"やりがい"搾取」「"自己実現"幻想」を粉砕するために。

"ポスト近代の奴隷制"と化した新自由主義社会 - マルクスの"構造"分析とスピノザの"情念"の哲学を理論的に結合し、「意思的隷属」というミステリーを解明する。欧州で熱狂的支持! 最先鋭の資本主義論。

繰返しになりますが、マルクス主義に立脚するフランス人エコノミストですから、レギュラシオン学派であり、私が昨年読んだものの中ではロベール・ボワイエ『金融資本主義の崩壊』(藤原書店) に近い印象を受けます。異なるポイントは、引用にあるように、スピノザの「コナトゥス」=自存力、すなわち、おのおのの存在が自らを維持す続けるために繰り広げる努力、という概念から解き明かそうとしている点です。ただし、邦訳のタイトルでは新自由主義が強調されているんですが、原著にはそのような表現はありませんし、内容からも新自由主義に限定せずに資本主義一般が論じられているような気がします。
マルクス主義的な歴史観からすれば、奴隷による奴隷制、農奴による封建制、自由な賃金労働者による資本主義と歴史が進み、さらに、社会主義から共産主義に進むとされています。社会主義以降はさて置くとしても、奴隷から農奴、さらに自由な賃金労働者と自由度が増すに従って、直接的な支配と隷従の階級関係が希薄になり、欲望を喚起することによる間接的な「意思的隷属」に進む、とするロルドン教授の見方はある程度理解できなくもありません。ただし、それをスピノザ的な情念というまったく唯物論的でない概念で解き明かすのはムリがあるような気がします。少なくとも、マルクス主義的ではあり得ません。従って、本書の内容も現実を理論により解き明かすというよりも、お題目を並べることに終始している印象があります。
本書はロルドン教授の著書の初めての邦訳だそうですが、フランス人経済学者としてはティロル教授のような定評あるエコノミストと違って、とても最近になって頭角を現した人物です。万人にオススメできるわけではないものの、ロルドン教授は格差社会への抗議や抵抗運動をしている若者から大きな支持を受けており、この著作がそれらの運動のバイブルというわけではありませんが、バックボーンを知るために有益と見なす人がいるかもしれません。

最後に、決してトンデモ本という並びではないんですが、実は、北野一『デフレの真犯人』(講談社) も読みました。第1章でデフレは日銀の金融政策のせいではないと主張し、第2章で1980年代末のバブル経済まで金融政策は関係ないとまで言い放ち、結局、ROE重視経営というか、企業金融、コーポレート・ファイナンスが「デフレの真犯人」と結論しています。学習院大学の岩田教授の説の受売りで、日銀は「デフレの真犯人」を日銀以外に求める論調、例えば、中国などの新興国からの安価な輸入品、人口減少、特に労働力人口の減少、構造改革の不徹底、成長戦略の失敗、などありとあらゆる日銀以外の「デフレの真犯人」説に同調して来ましたが、この説はいかがでしょうか。さすがに、ためらわれるものがあったりするんでしょうか。

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2013年1月16日 (水)

本日発表の機械受注と消費者態度指数から景気反転の兆しはうかがえるか?

本日、内閣府から11月の機械受注と12月の消費者態度指数が発表されました。民間設備投資の先行指標であるコア機械受注、すなわち、電力と船舶を除く民需は季節調整済の系列で前月比+3.9%増の7321億円となった一方で、消費者態度指数はもうひとつのマインド指標である景気ウォッチャーと異なり▲0.2低下して39.2となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注3.9%増、2カ月連続プラス
内閣府が16日発表した2012年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比3.9%増の7321億円となり、2カ月連続のプラスとなった。非製造業からの受注が好調だった。金額の水準は低く、機械受注の基調判断は「弱含み基調が続いている」と前月の表現を据え置いたが、今後、設備投資が上向く兆しも出始めている。
11月実績はエコノミストの予想(0.6%増)を上回った。非製造業(船舶・電力除く)は6.2%増の4757億円と4カ月連続で増加。水準としても2009年2月以来の高さとなった。100億円超の大型案件はなかったが、金融業・保険業からコンピューターの受注が伸びたほか、運輸業・郵便業から鉄道車両の注文が好調だった。
製造業は3.9%増の2870億円と2カ月ぶりにプラス。パルプ・紙・紙加工品や、化学工業、食品製造業が大きく伸び、減少傾向にあった製造業にも「下げ止まりの兆しが出ている」(内閣府)という。
民需以外では、外需が17%増の8020億円だった。鉄道車両など100億円を超える大型案件の受注で、9カ月ぶりの高い水準となった。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は先行きについて、「緊急経済対策に加えて円安への動きが続けば、設備投資の持ち直し傾向も強まってくる」と分析している。
消費者心理、4カ月連続で悪化 判断「弱い動き」を維持
内閣府が16日発表した12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.2と前月から0.2ポイント低下した。悪化は4カ月連続。雇用環境への不安がやや後退したものの、消費者の景気先行きへの不透明感が根強かった。内閣府は消費者心理の判断を前月と同じ「弱い動きがみられる」で維持した。
12月は指数を構成する4項目のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が悪化した。7-9月期の国内総生産(GDP)改定値や12月の日銀企業短期経済観測調査(短観)を受け、景気の弱さが意識された。冬のボーナスが前年に比べて減少したことも影を落とした。半面、「雇用環境」は4カ月ぶりにプラスへ転じた。11月の新規求人倍率の上昇や2013年春の大学新卒採用の増加見通しなどが好感された。
1年後の物価見通しを巡っては、生鮮食品の価格下落を背景に「低下する」と答えた割合が4カ月連続で増加した。「上昇する」は2カ月連続で減少したものの、内閣府は「依然として高水準にある」とみている。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は12月15日で、有効回答数は5032世帯(回答率74.9%)だった。同月16日の衆院選前にはほとんどの調査票を回収したという。

続いて、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。次の消費者態度指数のグラフに共通して、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

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機械受注は毎月の振れの激しい統計ですので、単月で確たることはいえませんが、11月のコア機械受注は市場の事前コンセンサスであるわずかなプラスの予想に対して+3.9%増とそこそこの増加を示しましたし、2か月連続の増加で、しかも、製造業も非製造業も外需も軒並み受注増でしたので、あるいは、減少に歯止めがかかって底入れに向かう動きを示しているのかもしれません。統計作成官庁である内閣府の基調判断は「全体としては弱含み基調が続いている」と弱含みに据え置かれましたが、9月統計発表時のコア機械受注の10-12月見通しでは前期比で+5.0%を見込んでいましたので、現在の円高修正や補正予算による景気浮揚策などを考慮に入れれば、今年1-3月期くらいから民間設備投資は上向く可能性があると考えられます。すなわち、わずかながら、機械受注と設備投資には明るい兆しを読み取ることが出来るといえそうです。

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消費者態度指数のグラフは上の通りです。消費者態度指数を構成する各消費者意識指標を見ると、「雇用環境」が上昇したものの、「収入の増え方」と「暮らし向き」が低下に寄与しました。雇用に対する不安感は後退しつつある一方で、景気の先行きに対する不透明感はまだまだ根強いようです。このため、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱い動き」で据え置いています。もうひとつのマインド指標として取り上げられる景気ウォッチャーと大きな違いを見せましたが、その差は調査日から生じている可能性があります。すなわち、景気ウォッチャーの調査日が12月25日から月末だったのに対して、この消費者態度指数は12月15日が基準日で、引用した記事にもある通り、12月16日にはほとんど回収を終えていたといわれていますので、時期が下るほどマインドが向上している可能性があります。12月の統計から明るい兆しは読み取れませんが、来月の消費者態度指数の公表を待ちたい気がします。

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最後に、昨日の15日、世銀から「世界経済見通し」 Global Economic Prospects 2013 が発表されています。上の画像はリポートの p.2 Table 1. The global outlook in summary を引用しています。クリックすると別タブで1ページだけのpdfファイルが開きます。世銀ですから、途上国の経済見通しが主なんですが、我が国の成長率はやや下方修正されたものの、2013年+0.8%、2014年+1.2%、2015年+1.5%と順調に上向くと見込まれています。

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2013年1月15日 (火)

今年の新成人の未来は明るいか?

昨日は東京ではあいにくの雪ながら成人の日でした。式典に参加した新成人も多かったことと思います。ということで、この季節の定番となった新成人に対するアンケート調査結果がいくつか発表されています。セイコー・ホールディングスによる「2013年新成人の人生観についての調査」の結果もいくつかのメディアで取り上げられていましたが、今夜のブログでは、そのうちのひとつとして、1月8日に発表されたネットリサーチ大手のマクロミルの「新成人に関する調査」結果について簡単に紹介したいと思います。まず、マクロミルのサイトから調査結果のトピックスについて引用すると以下の4点が取りまとめられています。

トピックス
・これからの日本の政治に「期待できる」24%、「期待できない」76%
・"自分の未来"は「明るい」と思う51%、昨年より14ポイント減
・将来希望する職業、1位「公務員」、2位「技術系の会社員」
・新成人の交友実態 友達の人数「10-20人未満」が21%で最多、
 一方で「友達がいない」人も12%

以下は、マクロミルのリポートから図表を引用しています。やや手抜きかもしれませんが、図表をいっぱい引用しますので、包括的に最初に引用元を示しておきたいと思います。

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まず、リポート p.2 【図1】日本の未来についてを引用すると上の通りです。昨年の新成人の結果と比べて、「どちらかといえば」を含めれば、「明るい」が増加して「暗い」が減少しています。ただし、圧倒的多数の60%を超える新成人は「どちらかといえば、暗いと思う」と回答しています。リポート p.3 の「暗いと思う理由」の最初の2人は、「不景気も終わりそうもなく、人々の物事に対するモラルなども変わっていってしまっている。」など、不景気を理由に上げています。

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次に、リポート p.4 【図2】自分たちの世代が日本を変えていきたいと思うかを引用すると上の通りです。この設問については、「やや」や「あまり」を含めて、昨年よりも「そう思う」が減少しています。でも、「ややそう思う」が過半を占めています。リポート p.4 「日本はどうあるべきか」の自由回答では、「支え合う社会」という言葉が私には印象に残りました。

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続いて、リポート p.5 【図3】これからの「日本の政治」についてを引用すると上の通りです。圧倒的に「期待できない」が多数を占めています。男女別では特に女性の期待感が低くなっていることが明白に読み取れます。リポート p.6 の自由回答欄の最初の女性の回答は「老人ばかりがうだうだ会議しているようにしか見えない。若い人も選挙以外の方法で口出しできるようにして欲しい。」というもので、私がこのブログでしばしば主張しているように、選挙を通じて引退世代の意見ばかりが政治に反映されるという意味でのシルバー・デモクラシーを直感的に表現しているのだろうと受け止めています。

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大上段に振りかぶった質問から自分自身に目を向ける質問に転じて、図表は引用しませんが、将来の夢については男女とも過半が将来の夢があると回答しています。ちなみに、セイコー・ホールディングスによる「2013年新成人の人生観についての調査」でも、ほぼ7割の新成人が夢があると答えています。続いて、今日のエントリーのタイトルにしたように、未来が明るいか暗いかについて、リポート p.8 【図5】自分の未来についてを引用すると上の通りです。最初に引用した【図1】日本の未来についてと違って、昨年よりも「どちらかといえば」を含めて「暗い」が増加して、「明るい」が減少しています。そして、「明るい」と「暗い」が男女ともほぼ拮抗しています。日本全体の方向性と自分の位置付けが若い層の間で少しズレ始めている可能性があります。同じページの自由回答から「暗いと思う理由」の最初の回答は「将来自分に合った仕事につけるかと思うと不安だから。」と就職を不安材料に上げています。

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ということで、続けて、リポート p.10 【図7】将来、どのような仕事に就きたいかを引用すると上の通りです。「公務員」がもっとも比率が高いんですが、実は、「わからない」が3人に1人ということになっています。漠たる不安とともに狭き門の公務員にもなれる可能性が低い、ということなのかもしれません。

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続いて、同じリポート p.10 から、そのものズバリの【図8】就職の不安についてを引用すると上の通りです。男女とも80%近い新成人が就職に対して不安を感じています。同じページで、「先輩たちの苦戦を見ているから」、「就職率が低いから」、「自分に自信がないから」といったコメントが多々見受けられると指摘されています。私なんぞの世代では、就職してから仕事がうまくいくかどうか、あるいは、職場での人間関係などが不安だったんですが、現在の新成人の間では、そもそも希望の就職ができるかどうかに不安が集中しているような気がしないでもありません。

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最後の図表で、同じリポート p.11 から【図9】政治、選挙に対する関心を引用すると上の通りです。酒たばこはともかく、成人になってもっとも大きな権利行使は選挙です。その意味で、「やや」を含めて、政治、選挙、経済に関心がある割合が過半に達しているのは心強い限りですが、男性とともに特に女性にはもう少し関心を高めていただきたい気がしないでもありません。以下、年金や海外や交友関係などに関するリポートが続きますが、長くなるので割愛します。ご興味ある向きは最初のリンク先などから pdf のリポートをご覧ください。

図表の引用はしませんが、p.13 【図11】これからの日本が取り組むべきと思うことのトップは「景気対策」、2番めは「雇用対策」となっています。官庁エコノミストとして肝に銘じておきたいと受け止めています。

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2013年1月14日 (月)

チック・コリアのデュエット・アルバムを聞く

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3連休最終日の今日の成人の日は東京ではあいにくのお天気で、大雪になってしまいました。その昔には、今でもそうかもしれませんが、いかにも成人式らしい振袖姿の女性も少なくなく、華やかな雰囲気の休日でしたが、私なんぞは成人式の時点での20歳から軽くダブルスコアを超えて、トリプルスコアも近づいている今となっては単なる休日だったりしますし、我が家の倅どもは高校生と中学生ですから、成人式はまだまだ先の話しです。
ということで、成人の日とは何の関係もなく、チック・コリアの割合と最近のデュエット・アルバム2枚のジャケットを上に並べてみました。上が「ホット・ハウス」、下が「オルヴィエート」です。収録曲は長くなるので割愛しますが、「ホット・ハウス」には小規模ながらストリングスが入っているので、純粋なデュエットとはいえないかもしれませんが、ヴァイブのゲイリー・バートンとの共演で、「オルヴィエート」はピアニスト2人のデュエットでステファノ・ボラーニと共演しています。「ホット・ハウス」は昨年2012年、「オルヴィエート」は一昨年2011年の発売となっています。
チック・コリアとゲイリー・バートンのデュエットで有名なアルバムは1978年の「クリスタル・サイエンス」なんですが、その2番煎じはその名もズバリ「ニュー・クリスタル・サイレンス」という2枚組のアルバムがあります。オーケストラが入っていた記憶があります。また、ゲイリー・バートンは小曽根真とデュエットした「ヴァーチュオーシ」というアルバムがあり、ラインナップはほとんどクラシック曲を取り上げています。また、チック・コリアともう1人のピアニストによるデュエットということになれば、2009年の上原ひろみとのその名もズバリ「デュエット」という2枚組アルバムがあり、南青山のブルー・ノートで録音されています。また、少し古いんですがハービー・ハンコックとのデュエット・アルバムも私が知る限りでも2枚あります。「イン・コンサート」と「コレアハンコック」です。どちらのアルバムも「処女航海」を収録していたりします。ハンコックの代表曲ではなく、コリアの代表曲である「スペイン」でもいいと思うんですが、「ラ・フィエスタ」は入っていたものの、なぜか「スペイン」は入っていません。
何となく、散漫に書き散らしてしまいましたが、私がどうしてチック・コリアのピアノを好きかというと、10年以上も前の前世紀に聞いたFMラジオの評価、すなわち、チック・コリアのピアノは「3次元的」とか「立体的」だと、あるFMの番組で評価されていて、私がその表現を「まさに、その通り」と痛く感激したことを思い出しました。同じ意味なんでしょうが、「3次元的」だったか、「立体的」だったかは忘れました。その昔の成人式を迎える前の高校生のころはジョン・コルトレーンばっかり聞いていた元気な時代もありましたが、現時点では、トリオのキース・ジャレットとチック・コリアの2人のピアニストが私のアイドルです。この2人がデュエットしないものでしょうか。

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2013年1月13日 (日)

有川浩『空飛ぶ広報室』(幻冬舎) を読む

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有川浩『空飛ぶ広報室』(幻冬舎) を読みました。7月に発売されて、8月に買い求め、長らく積ん読してあったんですが、先週、直木賞の候補作に入っていることが判明し、ほかに知った本がなかったものですから、あわてて読み始めました。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

空飛ぶ広報室
不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。待ち受けるのはひと癖もふた癖もある先輩たち!? 渾身のドラマティック長篇小説。

不慮の交通事故でパイロットの道を、特に花形であるブルー・インパルス登場の資格を失った主人公が広報業務を担当し、自衛隊に誤解あるテレビ記者を相手に自衛隊の理解を進めるというストーリーです。一応、起承転結はありますが、かなり平板で先の読めるお話しです。ということで、お話しの出来は悪いんですが、とても甘ったるい展開ですので、ファンは多そうな気がしないでもありません。その意味で、著者は間違いなく売れっ子作家です。ただし、この作者のシリーズというか、私が勝手にシリーズ化しているだけかもしれませんが、私が読んだ『阪急電車』、『フリーター、家を買う。』、『県庁おもてなし課』とこの作品などは、お話しがよい方向に歪曲されていて、あり得ないような美しい物語になっている気がしています。ホンマかいなと、違和感を覚えるのは私だけでしょうか。この作者の自衛隊シリーズ、図書館戦争シリーズは読んでいないので分かりませんが、もう少し写実主義的な作品の方が私の好みといえなくもありません。もっとも、あり得ない魔法が出て来るハリー・ポッターなんかは大好きなんで、違うかもしれません。

主人公をはじめとする登場人物がやたらと泣く場面が出て来ます。涙腺が緩い人向けに泣ける本を目指しているのかもしれません。私は感情の起伏がそんなに激しくないので不向きのような気がします。

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2013年1月12日 (土)

社会保障と財政に関する学術書を読む

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今年になってから、2冊ほど経済学の学術書を読みました。まず、上の表紙画像は井堀利宏・金子能宏・野口晴子編になる『新たなリスクと社会保障』(東京大学出版会) です。社会保障に関して、フォーマルな定量分析を試みています。章別構成は以下の通りです。

序章
新たなリスクを見すえた政策的エビデンス
第Ⅰ部
出生・幼少期の社会保障を考える
第1章
新生児の体重はなぜ減少しているのか
第2章
子育て支援政策は出生行動にどのような影響を与えるか
第3章
日本はなぜ「子ども養子小国」なのか - 日米比較にみる養子制度の機能と役割
第4章
子どもへの医療費助成は医療サービスへのアクセスを改善するか
第5章
子育て世帯への支援策に再分配効果はあるか - 2007年国民生活基礎調査を用いて
第Ⅱ部
成年期の社会保障を考える
第6章
若者の就業形態は生涯所得に影響を与えるか
第7章
失業手当の受給者はなぜ減ったのか
第8章
独身女性は予備的貯蓄をなぜ積み増すのか
第9章
「寿退職」「出産退職」を規定するものはなにか - 性別役割分業意識と就業行動
第10章
長時間労働は健康にマイナスに働くか
第Ⅲ部
高齢期の社会保障を考える
第11章
介護サービスは家族による介護を代替するか
第12章
在宅介護サービスの充実は自宅での看取りを下支えできるか
第Ⅳ部
セーフティネットの機能と効果を考える
第13章
障がい者の暮らしと家族をどう支えていくべきか
第14章
地方は生活保護をどのように実施してきたか - 生活保護費に関する関係者協議会における議論をめぐって
第15章
医療・介護分野への資源配分はどのくらい経済効果をもたらすか
終章
新たなリスクを見すえた支援策

繰返しになりますが、ほとんどの論文がフォーマルな定量分析を実施しています。ちょっと見ではクロスセクションの最小二乗法とそれを補完する意味での操作変数を用いた二段階最小二乗法が多そうに見受けましたが、パネルデータの分析も援用されています。特に、常識に反するというか、驚くような結果はなかったように記憶していますが、常識的な結果を定量的に確認することも大いに意味があると私は受け止めています。上に見るように、章別構成もライフステージを追うことにより、読みやすくなっています。私が大学院の授業を受け持つと仮定すれば教科書に指定して、1年の半分くらいを使って定量分析の解説を含めて日本の社会保障の解説をしそうな気がします。ただし、バックグラウンドとして、概略でいいので社会保障の制度に関する基礎知識があった方がいいのはいうまでもありません。

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次に読んだ井手英策『財政赤字の淵源』(有斐閣) の章別構成は以下の通りです。

序章
なぜ巨額の財政赤字が生まれたのか - 財政社会学の挑戦
第1部
財政の原型はどう作られたか
第1章
日本財政の源流 - 金本位制度から管理通貨制度へ
第2章
占領期の財政運営と大蔵省統制の確立
第2部
大蔵省統制と土建国家
第3章
土建国家へ
第4章
健全財政主義の黄昏
第3部
寛容な社会の条件
第5章
変わりゆく社会,変えられない財政 - 激動の1990年代
第6章
寛容な社会のための財政

副題や第6章のタイトルにある「寛容な社会」とは財政支出をサポートするための増税に対して寛容である、という意味です。手元にある本の黄色い帯には「増税に共感できる信頼と連帯の社会へ」とあります。もっとも、やや誤解を招くかもしれないので、別のいい方をすれば、明示的に書かれていたわけではないように思いますが、著者は現在の日本社会が余りにも増税に対して非寛容だと考えているように私は受け止めました。非寛容の大きな原因は、第1部と第2部で歴史を追って詳述されているように、我が国は、北欧のような福祉国家として徴収した税を社会保障で国民に還流させるのではなく、土建国家として公共事業で還流させたため、手厚く処遇される集団とそうでない集団が生じてしまい、不公平感が根強くて増税に抵抗感が大きい、と結論しています。私の意見を付け加えれば、税ではなくて社会保険料ですが、現在は世代間不平等のために社会保険料の大きな滞納が発生している、といえるかもしれません。

どちらも大学や大学院の授業で取り上げるに足りる立派な学術書ですが、ある程度の基礎知識があれば経済学の専門的な場だけでなく、一般的なリーディングにも耐える書物となっています。いわゆるハウツーもののビジネス書にはない、それ相応に専門的な経済学の学識を得たい向きにオススメします。

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2013年1月11日 (金)

本日発表された経常収支と景気ウォッチャー調査結果から何を読み取るか?

本日、財務省から経常収支などの国際収支が、また、内閣府から景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。経常収支は11月の、景気ウォッチャー調査は12月の統計です。経常収支は季節調整済みの系列で見て黒字幅が縮小し、季節調整していない原系列で見て赤字に転じた一方で、景気ウォッチャーは現状判断DIも先行き判断DIも大きくジャンプアップしました。まず、長くなりますが、両統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

10カ月ぶり経常赤字、2224億円 12年11月
財務省は11日、2012年11月の国際収支速報を発表した。モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2224億円の赤字となった。経常赤字は同年1月以来、10カ月ぶり。中国・欧州向けの輸出が落ち込み、輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字拡大が影響した。
単月としての赤字幅は現行の統計を始めた1985年以降で2番目の大きさ。正月休みで輸出が減る傾向にある1月以外の月では、初めて経常赤字になった。「将来の経常赤字定着の前兆」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との見方もある。
貿易収支は8475億円の赤字だった。債務危機の影響で欧州向け輸出が前年同月より19.9%減と低迷が続いているほか、中国向けも14.5%の減少となった。商品別では自動車が5.2%減った。
旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は1901億円の赤字だった。海外の運送会社への手数料が増加した。訪日外国人旅行者が増えたことで、旅行収支の赤字幅は縮小した。
企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字は4.9%減って8915億円だった。日本に支店を置く海外企業が本国に利益を支払う額が増えた。
12月の街角景気、2カ月連続改善 判断を9カ月ぶり上方修正
内閣府が11日発表した2012年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比5.8ポイント上昇の45.8と、2カ月連続で改善した。気候の変化に加え、足元で進む円安・株高が景況感の改善を後押しした格好だ。
先行き判断指数も9.1ポイント上昇の51.0と、8カ月ぶりに好不況の分かれ目である50を上回った。内閣府は街角景気の基調判断を「このところ持ち直しの兆しがみられる」と9カ月ぶりに上方修正した。
12月の現状判断は家計、企業、雇用の全3分野で改善した。家計動向では気温の低下に伴って冬物の食材や衣料の売れ行きが伸びたほか、株高などで「客の話題にも明るさがみえる」(東海・スーパー)という。
円高の修正は企業活動に明るさをもたらし、「海外からの受注量が増え、景気は上向きになっている」(九州・精密機械器具製造業)などのコメントが並んだ。一方で、雇用動向については円高定着で生産の海外シフトが進んだ製造業の厳しさを指摘する声もあった。
先行きについては、大胆な金融緩和や大型補正予算案の編成を打ち出した安倍政権への期待から明るさが戻ってきた。政権や内閣に言及したコメントは12月が428件と11月の64件から急増した。
安倍晋三首相が日銀に一層の金融緩和を促したことを手掛かりに、外国為替市場では円安が進行。「取引先の輸出向け需要が緩やかながら伸長する見通し」(中国・化学工業)という。公共事業の拡充を明言していたことも、「インフラ関連の関係会社にはかなりの依頼がきている」(近畿・人材派遣会社)と明るさにつながった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象に、3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は12月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線で経常収支の収支尻をプロットした上で、その内訳を積上げ棒グラフで示しています。色分けは凡例の通りです。上に引用した記事が季節調整していない原系列の統計に基づいて取りまとめられているのに対して、下のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、少し印象が異なる可能性があります。

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上のグラフからも明らかなんですが、経常収支の収支尻を表す青い折れ線グラフを見れば、2008年9月のリーマン・ショックと2011年3月の東北大震災の影響を含めても、2007年をピークにジワジワと黒字幅を縮小させているのが、ここ数年の経常収支のトレンドであると考えるべきです。そして、この数年間のトレンドを形成しているのは明らかに貿易収支であることも読み取れます。すなわち、為替も含めて我が国の国際競争力の低下が経常収支の黒字幅縮小ないし赤字化の根底にあると受け止めています。ただし、中長期的なトレンドとは別に、短期的に足元の動きを見ると、財の輸出についてはほぼ10-11月に下げ止まったと考えられます。中国の景気と反日感情の悪化に伴う輸出の停滞もほぼ一巡しましたし、欧州のソブリン危機も目先は改善に向かっています。もっとも、私の知る限り、ギリシア財政はいずれ破綻すると予想している同業者エコノミストは少なくありません。いずれにせよ、今後は現在の円高修正と今年年央に策定される成長戦略が我が国の競争力に中長期的にどのような影響を及ぼすかを見極める必要があります。なお、円安についてはフローの経常収支への影響もさることながら、一昨年2011年末に265兆円に上る対外純資産が外貨建てであれば、円換算で膨らむ可能性があります。何らかの資産効果が発生するかもしれません。

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上のグラフは、景気ウォッチャー調査の現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。影をつけた期間は景気後退期なんですが、直近は2012年3月を景気の山と仮置きしています。見れば明らかですが、冴えない結果の経常収支と違って、景気ウォッチャーは現状判断DI、先行き判断DIとも大きくジャンプしました。引用した記事にもある通り、この調査の調査期間は毎月25日から月末ですから、ホントに足元の景況感を反映しています。気温低下の影響で冬物衣料の売行きが好調だったこともありますが、円高修正の進展による景況感の向上が大きく寄与していると受け止めています。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「引き続き弱い」から「このところ持ち直しの兆し」に上方修正しました。「景気判断理由の概要」を見ても、円安株高や補正予算といった意見を見かけます。解散とそれに続く pro-business な政権交代が景気の転換を促したのかもしれません。

景気動向指数を取り上げた昨日のエントリーでは「景気後退局面の真っただ中」と書きましたが、景気ウォッチャーなどのマインド指標は景気に先行しますので、年明け早々の景気転換もひょっとしたらあり得るかもしれないと思い始めています。

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2013年1月10日 (木)

景気動向指数に見る景気の現状やいかに?

本日、内閣府から11月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月比▲0.6ポイント低下の90.1、また、CI先行指数は▲0.9ポイント低下の91.9となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の景気一致指数、8カ月連続低下 判断「悪化」を据え置き
内閣府が10日発表した2012年11月の景気動向指数(CI、05年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.6ポイント低下の90.1だった。マイナスは8カ月連続。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「景気後退の可能性が高い」としている「悪化」に2カ月連続で据え置いた。
世界的な景気減速を受けて、鉱工業生産指数のほか、中小企業や生産財の出荷も軒並み悪化。半導体製造装置など一般機械の生産や出荷が停滞した。デジタルカメラなど耐久消費財の出荷や卸売業の販売額が減少するなど内需にも弱さが目立った。
数カ月後の先行きを示す先行指数は0.9ポイント低下の91.9と2カ月ぶりに低下。前月に急増した反動から住宅着工床面積が減ったほか、景気悪化を反映して生産財や最終需要財の在庫が膨らんだ。一方で11月は政権交代をにらみ東証株価指数が上昇し、指数を下支えした。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.3ポイント低下の86.5と2カ月ぶりに低下した。現状の雇用状況を示す指数の低下が響いた。指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が10.0%、先行指数が38.9%だった。

次に、いつもの景気動向指数の推移をプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。なお、影をつけた部分は景気後退期なんですが、このブログだけのローカル・ルールで、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

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要するに、8か月連続でCI一致指数が下降していますし、統計作成官庁である内閣府による基調判断も先月から2か月連続で「悪化」に据え置かれましたので、現時点では景気後退局面の真っただ中にあって、先行指数を見ても谷をつけるには至っていない、ということになります。CI一致指数にプラスの寄与を示したのは小売業の商業販売統計に加えて、所定外労働時間指数、有効求人倍率だけでしたが、中小企業出荷指数や鉱工業生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、大口電力使用量など、軒並みマイナスに寄与しました。引用した記事にもある通り、小売販売を除いて内需に軟調な指標が目立った気がします。統計から景気の回復を確認出来るにはもう少し時間がかかりそうです。

大学の教員をしていた時に使っていた教科書に名言があり、「天気は現時点の天気が明白に誰にも分かるが、景気は現時点の景気がいいのか悪いのか分からない」という趣旨が述べられていました。まったくその通りです。国家資格である気象予報士と勝手に名乗っているエコノミストの違いだけでは決してありません。

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2013年1月 9日 (水)

世界経済フォーラムの Global Risks 2013 を読む

昨日、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムから Global Risks 2013 が公表されています。もちろん、今日びのことですから、pdf の全文リポートもアップされています。今年のリポートは最後の Section 6 の Appendix を含めて、以下の6章で構成されています。

Section 1
Introduction
Section 2
Testing Economic and Environmental Resilience
Digital Wildfires in a Hyperconnected World
The Dangers of Hubris on Human Health
Section 3
Special Report: Building National Resilience to Global Risks
Section 4
Survey Findings
Section 5
X Factors
Section 6
Appendix

また、例年の通り、以下の5分野のリスクに焦点が当てられています。

  • Economic
  • Environmental
  • Geopolitical
  • Societal
  • Technological

今夜もエントリーでは、主として経済分野から pdf の全文リポートのグラフを引用して、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上のチャートはリポートの p.4 Figure 1: Global Risks Landscape 2013 versus 2012 のうちの経済リスクだけを引用しています。縦軸がインパクトの大きさ、横軸がリスクが現実のものとなる蓋然性を表しており、右上に行くほど深刻なリスクといえます。矢印は2012年から2013年への変化を示しており、繰返しになりますが、右上にシフトしていればリスクが深刻化し、逆に、左下へのシフトはリスクの緩和といえます。経済リスクについてインパクト、すなわち、ダメージの大きい順に見ると、もっともダメージの大きい金融のシステミック・リスクは蓋然性を増しています。財政不均衡については蓋然性が低下する一方でダメージは大きくなる方向に変化しています。また、エネルギーと食料の商品価格の変動はわずかながらインパクトも蓋然性も上昇しています。しかし、2012年から2013年への変化で最も注目すべきは労働市場不均衡と対をなす所得格差がともにインパクトと蓋然性を上昇させている点です。我が国ではまだ景気後退局面を脱したというエビデンスは明らかになっていませんが、世界経済全体では現在の景気回復局面で格差の拡大が生じるリスクが無視できないこが示唆されていると受け止めています。

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次に、上のチャートはリポートの p.10 Figure 4: Top Five Risks by Likelihood and Impact を引用しています。ダメージの大きいリスクと実際に発生する蓋然性の大きいリスクを経済分野に限らず、先に上げた経済、環境、地政学、社会、技術の5分野すべてからトップ5を選んでいます。グラフの色分けは、経済が青、環境が緑、地政学がオレンジ、社会が赤、となっており、上のグラフに現れない技術は紫です。見ての通りで、蓋然性では所得格差が、ダメージでは金融のシステミック・リスクが、それぞれトップで、5のフルスコアのうち4を超えています。いずれも経済分野のリスクであることは明らかです。

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続いて、目を我が国に転じると、上のチャートはリポートの p.17 Figure 8: Further Required Deficit Reductions for Fiscal Sustainability (2011) を引用しています。見ての通り、元資料は国際通貨基金 (IMF) なんですが、左側が債務残高のGDP比、右は必要とされる財政調整額のGDP比です。このグラフに中国は入っていませんが、押し並べて見て、先進国よりも新興国の方が財政に余裕があるのは明らかです。少なくともストックでは、何をどう見ても、財政に余裕のない先進国の中でも日本はワーストの財政状態であることは確かです。短期的には景気後退局面を脱するために財政による景気浮揚が有効としても、中長期的な財政運営に対する市場の信認を得ておかないと急激な金利上昇などが生じる可能性が排除できないことは肝に銘じるべきです。

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最後に、上のチャートはリポートの p.41 Figure 27: Government's Risk Management Effectiveness and the Country's Overall Competitiveness Score を引用しています。縦軸に政府のリスク管理の効率性を、横軸に国際競争力を取ってカーテシアン座標に各国がプロットされています。我が国を例外にこの両者には正の相関があることが示されています。日本だけは国際競争力が高い一方で、政府のリスク管理が非効率であると見なされているようです。その昔に、「経済一流、政治は二流」といわれた時期がありましたが、今でもいくぶんはそうなのかもしれません。

総選挙と組閣の直後という事情もありますが、今年もダボス会議に我が国の総理大臣は出席しません。世界経済の中で我が国の相対的な地位が下がり始めてもう長いんですが、注目度が低下しているだけに、世界に向けた何らかの情報発信は必要なのではないかと思わないでもありません。

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2013年1月 8日 (火)

芥川賞と直木賞の候補作が発表される

やや旧聞に属する話題ですが、文藝春秋から芥川賞と直木賞の候補作が発表されました。以下の通りです。

氏名作品
芥川賞
小野正嗣
(おのまさつぐ)
「獅子渡り鼻」 (群像11月号)
北野道夫
(きたのみちお)
「関東平野」 (文學界9月号)
黒田夏子
(くろだなつこ)
「abさんご」 (早稲田文学5号)
高尾長良
(たかおながら)
「肉骨茶」 (新潮11月号)
舞城王太郎
(まいじょうおうたろう)
「美味しいシャワーヘッド」 (新潮8月号)
直木賞
朝井リョウ
(あさい)
「何者」 (新潮社)
安部龍太郎
(あべりゅうたろう)
「等伯」 (日本経済新聞出版社)
有川浩
(ありかわひろ)
「空飛ぶ広報室」 (幻冬舎)
伊東潤
(いとうじゅん)
「国を蹴った男」 (講談社)
志川節子
(しがわせつこ)
「春はそこまで 風待ち小路の人々」 (文藝春秋)
西加奈子
(にしかなこ)
「ふくわらい」 (朝日新聞出版)

最近、新作はややご無沙汰なんですが、芥川賞では舞城王太郎に、直木賞では有川浩に注目しています。でも、朝井リョウも捨てがたい気はします。もっとも、私は『桐島、部活やめるってよ』しか読んでいません。日曜日のこの両賞のニュースに接して、昨年の発売当初から買って積読してある『空飛ぶ広報室』を今日から読み始めました。

いつもの通り、選考会は16日に築地の新喜楽で開かれます。結果が楽しみなんですが、実は、前回の芥川賞を授賞された鹿島田真希「冥土めぐり」をまだ読んでいなかったりします。

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2013年1月 7日 (月)

棚瀬順哉『エマージング通貨と日本経済』(日本経済新聞社) を読む

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棚瀬順哉『エマージング通貨と日本経済』(日本経済新聞社) を読みました。著者は J.P.モルガン・チェース銀行の為替ストラテジストです。構成というか、目次は以下の通りです。

はじめに
 
第1章
ますます強まるエマージング経済と日本の繋がり
第2章
エマージング通貨の見方
第3章
通貨政策から読み解くエマージング経済
第4章
エマージング通貨危機の再来はあるのか?
第5章
ユーロ圏債務危機とエマージング経済・通貨
終章
エマージング経済の未来と21世紀の世界経済
おわりに
 

これも先日1月4日にアップした「年末年始休暇に読んだ新書版ほか」と同じで、特にエマージング諸国、いわゆる新興国経済について勉強しようと思ったわけでもなく、この先、ミセス・ワタナベの為替投資行動に一定の影響を与えそうな気がしたから読みました。ミセス・ワタナベがこの本を熟読するとは必ずしも考えませんが、ミセス・ワタナベに為替の投資アドバイスをするストラテジストやアナリストか誰かが読みそうな気がします。でも、おそらく、著者はミセス・ワタナベが読むことも念頭にあると想像しています。その意味で、かなり苦労して書き進んでいることが伺えます。輸出企業が為替の「カバー」を取る行動について、「カバー」という言葉を使わずに説明するとこうなるのかと感心しましたし、「ボラティリティ」というのが便利な言葉であることを実感しました。逆に、「ボラティリティ」という言葉を使わずに説明するのは私には厳しい課題だと受け止めています。この本のように、為替相場のバックグラウンドにあるマンデル・フレミング・モデルや購買力平価仮説に何ら言及することなく、スポットの為替レートを説明する能力は私にはありません。為替の決定要因について著者はどう考えているのか、知りたい気もします。また、「新興国」を「エマージング経済」と表記すれば、字数的ページ数的にはどれくらいボリュームが膨らむのかも興味あります。
もちろん、それなりに勉強になったことは確かです。例えば、オン・ショアとオフ・ショアの人民元市場が切り離されているのはさすがに知っていましたが、新興国のいくつかの制度については知らないこともかなりありました。また、薄々気づいていることでも、例えば、新興国為替への日本からの投資は個人レベルである点や、新興国為替への投資はその当該新興国自身の経済情勢などとともに投資元のリスク許容度に影響を受けるなど、改めて指摘されるとその通りという気になります。また、為替のトレーダーがやっぱりというか、新興国の通貨危機の再来をとっても気にしていて、危機の再来を躍起になって否定しながらも、一定の可能性は排除し得ない点もやむを得ないという気がします。一応、保険はかけておくわけなんでしょう。

繰返しになりますが、昨年の衆議院解散以降の現在の円高修正局面において、また、今後のミセス・ワタナベの為替投資行動を考える上で一定の参考になる本です。ご自身がミセス・ワタナベである場合にはオススメするかどうか迷いますが、私のようにミセス・ワタナベの動向をウォッチする向きには大いにオススメできます。

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2013年1月 6日 (日)

下の子と映画「ホビット 思いがけない冒険」を見に行く

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下の子と映画「ホビット 思いがけない冒険」を見に行きました。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作のピーター・ジャクソン監督の最新作であり、マーティン・フリーマン主演の壮大な冒険ファンタジーとなっています。ストーリーを映画の公式サイトから引用すると以下の通りです。

作品情報
ホビット族のビルボ・バギンズは魔法使いのガンダルフに誘われ、13人のドワーフたちと共に、恐るべきドラゴン"スマウグ"に奪われたドワーフの王国を取り戻すという危険な冒険に加わる。彼らは凶暴なアクマイヌ、そして謎の魔術師たちがうごめく危険な荒野や、ゴブリンが潜むトンネルを抜けていかねばならない。ビルボはそこで、彼の人生を変えてしまう生き物ゴラムと出会い、彼には知る由もない中つ国の運命を握る<指輪>を手に入れる。

映画のシリーズとしては、この「思いがけない冒険」が第1部で、第2部「スマウグの荒らし場」、第3部「ゆきて帰りし物語」と続きます。トールキンの原作としては、『指輪物語』よりもずっと早くに出版されています。すなわち、映画と文学では公表の順が逆になっています。文学作品としては『ホビット』が公表だったので、トールキンは『指輪物語』を書き進んだんですが、映画としては逆に「ロード・オブ・ザ・リング」が好評で、特に最後の「王の帰還」がオスカーを授賞され、ピーター・ジャクソン監督は「ホビット」の制作に着手した、ということになります。
あらすじは引用のとおりであり、ホビット族のビルボ・バギンズが魔法使いガンダルフに無理やりに誘われて、ドワーフ王の末裔トーリンをはじめとする13人のドワーフ族とともに、邪竜スマウグに奪われたドワーフ族の父祖の地であるはなれ山=エレボールの奪還を目指すというもので、第1部ははなれ山に到着する直前までが描かれています。エルフ族はさすがに見れば分かりますが、相変わらず、ホビット族とドワーフ族の違いは私には必ずしも明瞭ではなく、下の子にドワーフのほうが少し大きい、と教えてもらったりして鑑賞しました。映像や音楽は映画ならではのものがあり、多分、私の想像するにオーストラリアあたりの広大な風景も日本では想像できません。いい映画に仕上がっていると思います。

前の「ロード・オブ・ザ・リング」では最終の第3部の映画の評価が高かったんですが、今度の「ホビット」ではどうなんでしょうか。

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2013年1月 5日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨夜、米国の労働省から昨年12月の米国雇用統計が発表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+155千人増加し、失業率は前月と変わらず7.8%でした。いずれも季節調整済の系列です。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を手短に New York Times のサイトから2パラだけ引用すると以下の通りです。

Job Creation Is Still Steady Despite Worry
Despite concerns about looming tax increases and government spending cuts, American employers added 155,000 jobs in December. Employees also enjoyed slightly faster wage growth and worked longer hours, which could bode well for future hiring.
The job growth, almost exactly equal to the average monthly growth in the last two years, was enough to keep the unemployment rate steady at 7.8 percent, the Labor Department reported on Friday. But it was not enough to reduce the backlog of 12.2 million jobless workers, underscoring the challenge facing Washington politicians as they continue to wrestle over how to address the budget deficit.

次に、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。リーマン・ショックの時の景気後退局面から回復した後、日本と違って米国経済に景気後退は観察されません。

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目先の短期ではかなり米国経済は底堅く推移していると評価できると受け止めています。一昨年12月からの1年で約180万人の雇用が増加しています。もちろん、2月に控えた次なる「財政の崖」の問題は未解決のままであり、また、雇用の量はともかく、短期雇用やパートタイムなど質がよくないとの意見は根強く残りますが、米国の連邦準備制度理事会が目標とする失業率6.5%に向けて中期的に政策の方向は正しいと評価できると考えるべきです。我が国も金融政策のよろしきを持ってすれば、これくらいの雇用は達成できるのかもしれません。

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昨夏から6か月連続で非農業部門雇用者数が雇用改善のひとつの目安となる毎月+100千人を超えて増加しているんですが、それでも雇用の本格的な回復には至っていないと受け止められています。上のグラフはマンキュー教授やクルーグマン教授も着目している雇用・人口比率をかなり長期にプロットしていますが、現在の景気回復局面でほとんど上昇していないのが見て取れます。

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次に、デフレとの関係で私が気にしている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ほぼ底ばい状態が続いていて、サブプライム危機前の3%台の水準には復帰しそうもないんですが、底割れして日本のようにゼロやマイナスをつける可能性は小さそうです。

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最後に、New York Times のブログサイトのひとつである Economix のマネをして書いたグラフは上の通りです。景気後退入りする直前のピークからの雇用の変化をプロットしています。前回の景気後退局面では景気の山から60か月を経て、現時点でも景気交代直前の雇用のピークにまで遠く達しません。なお、この Jobless Recovery のグラフはこれで打ち切る予定です。

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2013年1月 4日 (金)

年末年始休暇に読んだ新書版ほか

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この年末年始休みの読書では、とても久し振りに新書版の経済書を2冊も読みました。いずれも、学習院大学の岩田規久男教授の著作であり、『デフレと超円高』(講談社現代新書) と『日本銀行 デフレの番人』(日経プレミア新書) の2冊です。
要するに、リフレ派の岩田教授が書いた本なので、私のようなリフレ派の官庁エコノミストには分かり切った内容なんですが、政権が再び交代してインフレ目標が経済政策のひとつの柱になりそうなので、周囲に解説する目的も含めて改めて勉強した次第です。インフレ目標を明示して量的緩和を実施すればインフレ期待が生じ、貨幣の流通速度が上昇するので実際にインフレ率の上昇がもたらされる、さらに、円高も進むので産出の拡大を促す、という当然の理論的かつ実証的な枠組みが示されていますが、我が国の場合は期待インフレ率に対する偏微係数がかなり小さいので、思い切った金融緩和が必要であるという点については、昨年7月28日付けのエントリー「この夏休みのオススメ経済書は何か?」で取り上げたクルーグマン教授の『さっさと不況を終わらせろ』と同じです。今までの日銀による量的緩和がデフレに効果を示さなかったのは、時の総裁自身がインフレ期待に水を浴びせるような発言をしたこともひとつの理由ですが、端的には量的緩和の量が不足していたからです。マイナスのGDPギャップが続いていたり、生産年齢人口が減少していたり、中国をはじめとする新興国と貿易して安価な輸入品が入っていたり、ICTテクノロジで流通コストが大幅に合理化されていたりする先進国は日本以外にもいっぱいありますが、デフレに陥っているのは日本だけだという客観的事実をしっかり見つめるべきです。また、賃金と物価の時系列的な因果関係については物価が先であり、賃金が下がっているのでデフレになるのではなく、デフレのために賃金が下がっていることを理解すべきです。その意味で、このブログで私がかねがね主張している「賃金上昇はデフレ脱却の十分条件」という考えも理解していただきたいものだと受け止めています。それにしても、ここまでトラックレコードの悪い中央銀行に対する盲目的な信仰を持ち続ける日本国民について、私は不思議でなりません。おそらく、年齢構成の高齢化に伴うデフレの受容という国民的な選好の歪みと日本国民自身が大好きな「日本特殊論」の組合せなんだろうと思いますが、それにしても不思議です。昨年11月の解散以降に示された為替相場や株価の実績を見て、国民の見方が変化する可能性に期待したいと思います。公務員の端くれとして、長期には国民は正しい観点から正しい判断を下すと私が信じていることは何度かこのブログでも明らかにして来ました。

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最後に、昨夜のエントリーではすっかり忘れていたんですが、文庫本に戻って、堀辰雄『風立ちぬ ルウベンスの偽画』(講談社文芸文庫) もしっかり読みました。今夏にジブリから映画化されると発表されていますので、『横道世之介』や『黄金を抱いて翔べ』と同じ観点です。図書館で借りたんですが、どこからどう見ても文庫本ながら、税抜きで1300円の定価がついていました。

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2013年1月 3日 (木)

年末年始休暇に読んだ文庫本

この年末年始休みの読書では、経済書も何冊か読みましたが、少し体調を崩していたこともあり、その昔に読んだことのある軽い読み物も含めて、何冊か文庫本を読みました。

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まず、映画化されたシリーズということで、吉田修一『横道世之介』(文春文庫) と高村薫『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫) です。後者は大昔から文庫に収録されていますが、前者は昨年文庫化されたばかりではないかと思います。実は、昨年見逃した映画が2本あり、1本はジャッキーチェン主演の「1911」、そしてもう1本は「黄金を抱いて翔べ」でした。見逃して悔しかったので文庫本で読み返しました。『横道世之介』の映画は今年2月に公開されます。私は前売り券はすでに買ってあり、とても楽しみにしています。吉田修一の最高傑作のひとつである青春小説がどのように映画になっているか、今からワクワクしています。2冊ともオリジナルの表紙があるのかもしれませんが、映画とタイアップした表紙カバーになっています。その昔の『グレート・ギャッツビー』が映画化に伴って本のタイトルまで『華麗なるギャッツビー』に変更され、表紙カバーもロバート・レッドフォードとミア・ファローの写真版に差し替えられたのを思い出してしまいました。

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さらに、佐伯泰英の時代小説で「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズの第40巻『春霞ノ乱』と41巻『散華ノ刻』(双葉文庫) です。来週1月10日には第42巻『木槿ノ賦』も発売され、坂崎磐音の出身藩である関前藩のお家騒動を取り上げた3部作です。3部作といいながら、2冊目の『散華ノ刻』でほぼお家騒動は収まりました。本筋の田沼との対決を控えて、少し横道にそれた感がないでもないんですが、まあよしとしておきます。第43巻以降も楽しみです。

明日は役所では御用始めです。明日から仕事というサラリーマンも少なくないような気がします。でも、明日さえ休んでしまえば、かなり長い休みになるという見方も出来ます。私は出勤の予定です。

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2013年1月 2日 (水)

福玉の中身は甘納豆

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昨年暮れに子供達に買い与えた福玉の中身は甘納豆でした。実は、売っていたデパ地下のお店のウィンドウには開けた福玉が置いてあって私は知っていたんですが、本来、開けてみてのお楽しみということろは福袋とお同じです。外側の皮の部分もモナカの皮のように食べられます。

極めて京都ローカルな福玉ですから、我が女房もウン十年の人生で初めて知ったと言っていました。お正月の縁起物ですし、何かの話の話題にでも。

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2013年1月 1日 (火)

一家そろって初詣に行く

改めまして、
あけましておめでとうございます。

我が家の恒例の初詣に行きました。破魔矢を買っておみくじを引き、年初の記念写真を撮って来ました。

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本年もよろしくお願い申し上げます。

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謹賀新年

あけましておめでとうございます。

新しい年2013年が明け、エコノミストの端くれとして、少しでも日本と世界の経済が上向くことを願っています。
それでは、そろそろ寝ます。おやすみなさい。

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