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2013年1月 4日 (金)

年末年始休暇に読んだ新書版ほか

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この年末年始休みの読書では、とても久し振りに新書版の経済書を2冊も読みました。いずれも、学習院大学の岩田規久男教授の著作であり、『デフレと超円高』(講談社現代新書) と『日本銀行 デフレの番人』(日経プレミア新書) の2冊です。
要するに、リフレ派の岩田教授が書いた本なので、私のようなリフレ派の官庁エコノミストには分かり切った内容なんですが、政権が再び交代してインフレ目標が経済政策のひとつの柱になりそうなので、周囲に解説する目的も含めて改めて勉強した次第です。インフレ目標を明示して量的緩和を実施すればインフレ期待が生じ、貨幣の流通速度が上昇するので実際にインフレ率の上昇がもたらされる、さらに、円高も進むので産出の拡大を促す、という当然の理論的かつ実証的な枠組みが示されていますが、我が国の場合は期待インフレ率に対する偏微係数がかなり小さいので、思い切った金融緩和が必要であるという点については、昨年7月28日付けのエントリー「この夏休みのオススメ経済書は何か?」で取り上げたクルーグマン教授の『さっさと不況を終わらせろ』と同じです。今までの日銀による量的緩和がデフレに効果を示さなかったのは、時の総裁自身がインフレ期待に水を浴びせるような発言をしたこともひとつの理由ですが、端的には量的緩和の量が不足していたからです。マイナスのGDPギャップが続いていたり、生産年齢人口が減少していたり、中国をはじめとする新興国と貿易して安価な輸入品が入っていたり、ICTテクノロジで流通コストが大幅に合理化されていたりする先進国は日本以外にもいっぱいありますが、デフレに陥っているのは日本だけだという客観的事実をしっかり見つめるべきです。また、賃金と物価の時系列的な因果関係については物価が先であり、賃金が下がっているのでデフレになるのではなく、デフレのために賃金が下がっていることを理解すべきです。その意味で、このブログで私がかねがね主張している「賃金上昇はデフレ脱却の十分条件」という考えも理解していただきたいものだと受け止めています。それにしても、ここまでトラックレコードの悪い中央銀行に対する盲目的な信仰を持ち続ける日本国民について、私は不思議でなりません。おそらく、年齢構成の高齢化に伴うデフレの受容という国民的な選好の歪みと日本国民自身が大好きな「日本特殊論」の組合せなんだろうと思いますが、それにしても不思議です。昨年11月の解散以降に示された為替相場や株価の実績を見て、国民の見方が変化する可能性に期待したいと思います。公務員の端くれとして、長期には国民は正しい観点から正しい判断を下すと私が信じていることは何度かこのブログでも明らかにして来ました。

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最後に、昨夜のエントリーではすっかり忘れていたんですが、文庫本に戻って、堀辰雄『風立ちぬ ルウベンスの偽画』(講談社文芸文庫) もしっかり読みました。今夏にジブリから映画化されると発表されていますので、『横道世之介』や『黄金を抱いて翔べ』と同じ観点です。図書館で借りたんですが、どこからどう見ても文庫本ながら、税抜きで1300円の定価がついていました。

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