« 今年の新成人の未来は明るいか? | トップページ | フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読む »

2013年1月16日 (水)

本日発表の機械受注と消費者態度指数から景気反転の兆しはうかがえるか?

本日、内閣府から11月の機械受注と12月の消費者態度指数が発表されました。民間設備投資の先行指標であるコア機械受注、すなわち、電力と船舶を除く民需は季節調整済の系列で前月比+3.9%増の7321億円となった一方で、消費者態度指数はもうひとつのマインド指標である景気ウォッチャーと異なり▲0.2低下して39.2となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注3.9%増、2カ月連続プラス
内閣府が16日発表した2012年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比3.9%増の7321億円となり、2カ月連続のプラスとなった。非製造業からの受注が好調だった。金額の水準は低く、機械受注の基調判断は「弱含み基調が続いている」と前月の表現を据え置いたが、今後、設備投資が上向く兆しも出始めている。
11月実績はエコノミストの予想(0.6%増)を上回った。非製造業(船舶・電力除く)は6.2%増の4757億円と4カ月連続で増加。水準としても2009年2月以来の高さとなった。100億円超の大型案件はなかったが、金融業・保険業からコンピューターの受注が伸びたほか、運輸業・郵便業から鉄道車両の注文が好調だった。
製造業は3.9%増の2870億円と2カ月ぶりにプラス。パルプ・紙・紙加工品や、化学工業、食品製造業が大きく伸び、減少傾向にあった製造業にも「下げ止まりの兆しが出ている」(内閣府)という。
民需以外では、外需が17%増の8020億円だった。鉄道車両など100億円を超える大型案件の受注で、9カ月ぶりの高い水準となった。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は先行きについて、「緊急経済対策に加えて円安への動きが続けば、設備投資の持ち直し傾向も強まってくる」と分析している。
消費者心理、4カ月連続で悪化 判断「弱い動き」を維持
内閣府が16日発表した12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.2と前月から0.2ポイント低下した。悪化は4カ月連続。雇用環境への不安がやや後退したものの、消費者の景気先行きへの不透明感が根強かった。内閣府は消費者心理の判断を前月と同じ「弱い動きがみられる」で維持した。
12月は指数を構成する4項目のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が悪化した。7-9月期の国内総生産(GDP)改定値や12月の日銀企業短期経済観測調査(短観)を受け、景気の弱さが意識された。冬のボーナスが前年に比べて減少したことも影を落とした。半面、「雇用環境」は4カ月ぶりにプラスへ転じた。11月の新規求人倍率の上昇や2013年春の大学新卒採用の増加見通しなどが好感された。
1年後の物価見通しを巡っては、生鮮食品の価格下落を背景に「低下する」と答えた割合が4カ月連続で増加した。「上昇する」は2カ月連続で減少したものの、内閣府は「依然として高水準にある」とみている。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は12月15日で、有効回答数は5032世帯(回答率74.9%)だった。同月16日の衆院選前にはほとんどの調査票を回収したという。

続いて、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。次の消費者態度指数のグラフに共通して、このブログだけのローカル・ルールですが、直近の景気循環の山は2012年3月であったと仮置きしています。

photo

機械受注は毎月の振れの激しい統計ですので、単月で確たることはいえませんが、11月のコア機械受注は市場の事前コンセンサスであるわずかなプラスの予想に対して+3.9%増とそこそこの増加を示しましたし、2か月連続の増加で、しかも、製造業も非製造業も外需も軒並み受注増でしたので、あるいは、減少に歯止めがかかって底入れに向かう動きを示しているのかもしれません。統計作成官庁である内閣府の基調判断は「全体としては弱含み基調が続いている」と弱含みに据え置かれましたが、9月統計発表時のコア機械受注の10-12月見通しでは前期比で+5.0%を見込んでいましたので、現在の円高修正や補正予算による景気浮揚策などを考慮に入れれば、今年1-3月期くらいから民間設備投資は上向く可能性があると考えられます。すなわち、わずかながら、機械受注と設備投資には明るい兆しを読み取ることが出来るといえそうです。

photo

消費者態度指数のグラフは上の通りです。消費者態度指数を構成する各消費者意識指標を見ると、「雇用環境」が上昇したものの、「収入の増え方」と「暮らし向き」が低下に寄与しました。雇用に対する不安感は後退しつつある一方で、景気の先行きに対する不透明感はまだまだ根強いようです。このため、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱い動き」で据え置いています。もうひとつのマインド指標として取り上げられる景気ウォッチャーと大きな違いを見せましたが、その差は調査日から生じている可能性があります。すなわち、景気ウォッチャーの調査日が12月25日から月末だったのに対して、この消費者態度指数は12月15日が基準日で、引用した記事にもある通り、12月16日にはほとんど回収を終えていたといわれていますので、時期が下るほどマインドが向上している可能性があります。12月の統計から明るい兆しは読み取れませんが、来月の消費者態度指数の公表を待ちたい気がします。

photo

最後に、昨日の15日、世銀から「世界経済見通し」 Global Economic Prospects 2013 が発表されています。上の画像はリポートの p.2 Table 1. The global outlook in summary を引用しています。クリックすると別タブで1ページだけのpdfファイルが開きます。世銀ですから、途上国の経済見通しが主なんですが、我が国の成長率はやや下方修正されたものの、2013年+0.8%、2014年+1.2%、2015年+1.5%と順調に上向くと見込まれています。

|

« 今年の新成人の未来は明るいか? | トップページ | フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 本日発表の機械受注と消費者態度指数から景気反転の兆しはうかがえるか?:

« 今年の新成人の未来は明るいか? | トップページ | フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読む »