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2013年1月17日 (木)

フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読む

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フレデリック・ロルドン『なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?』(作品社) を読みました。マルクス主義に立脚するフランス人エコノミストがスピノザの視点から新自由主義資本主義社会における支配と隷属を解き明かそうと試みています。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

なぜ私たちは、喜んで"資本主義の奴隷"になるのか?
「"やりがい"搾取」「"自己実現"幻想」を粉砕するために。

"ポスト近代の奴隷制"と化した新自由主義社会 - マルクスの"構造"分析とスピノザの"情念"の哲学を理論的に結合し、「意思的隷属」というミステリーを解明する。欧州で熱狂的支持! 最先鋭の資本主義論。

繰返しになりますが、マルクス主義に立脚するフランス人エコノミストですから、レギュラシオン学派であり、私が昨年読んだものの中ではロベール・ボワイエ『金融資本主義の崩壊』(藤原書店) に近い印象を受けます。異なるポイントは、引用にあるように、スピノザの「コナトゥス」=自存力、すなわち、おのおのの存在が自らを維持す続けるために繰り広げる努力、という概念から解き明かそうとしている点です。ただし、邦訳のタイトルでは新自由主義が強調されているんですが、原著にはそのような表現はありませんし、内容からも新自由主義に限定せずに資本主義一般が論じられているような気がします。
マルクス主義的な歴史観からすれば、奴隷による奴隷制、農奴による封建制、自由な賃金労働者による資本主義と歴史が進み、さらに、社会主義から共産主義に進むとされています。社会主義以降はさて置くとしても、奴隷から農奴、さらに自由な賃金労働者と自由度が増すに従って、直接的な支配と隷従の階級関係が希薄になり、欲望を喚起することによる間接的な「意思的隷属」に進む、とするロルドン教授の見方はある程度理解できなくもありません。ただし、それをスピノザ的な情念というまったく唯物論的でない概念で解き明かすのはムリがあるような気がします。少なくとも、マルクス主義的ではあり得ません。従って、本書の内容も現実を理論により解き明かすというよりも、お題目を並べることに終始している印象があります。
本書はロルドン教授の著書の初めての邦訳だそうですが、フランス人経済学者としてはティロル教授のような定評あるエコノミストと違って、とても最近になって頭角を現した人物です。万人にオススメできるわけではないものの、ロルドン教授は格差社会への抗議や抵抗運動をしている若者から大きな支持を受けており、この著作がそれらの運動のバイブルというわけではありませんが、バックボーンを知るために有益と見なす人がいるかもしれません。

最後に、決してトンデモ本という並びではないんですが、実は、北野一『デフレの真犯人』(講談社) も読みました。第1章でデフレは日銀の金融政策のせいではないと主張し、第2章で1980年代末のバブル経済まで金融政策は関係ないとまで言い放ち、結局、ROE重視経営というか、企業金融、コーポレート・ファイナンスが「デフレの真犯人」と結論しています。学習院大学の岩田教授の説の受売りで、日銀は「デフレの真犯人」を日銀以外に求める論調、例えば、中国などの新興国からの安価な輸入品、人口減少、特に労働力人口の減少、構造改革の不徹底、成長戦略の失敗、などありとあらゆる日銀以外の「デフレの真犯人」説に同調して来ましたが、この説はいかがでしょうか。さすがに、ためらわれるものがあったりするんでしょうか。

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