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2013年2月 5日 (火)

浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社) を読み日銀白川総裁の辞任について考える

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誠に今さらながらなんですが、浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)を読みました。安倍政権のリフレ政策を知るための格好の1冊といえます。まず、やや長いんですが、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
ノーベル経済学賞に最も近いといわれる経済学の巨人、研究生活50年の集大成!!
日銀が政策を変更すれば、日本経済は今すぐにでも復活する!!

この救国の書は、東京大学での教え子、日本銀行総裁・白川方明に贈る糾弾の書でもある。20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するからだ。白川総裁は、アダム・スミス以来、200年間、経済学の泰斗たちが営々と築き上げてきた、いわば「水は高いところから低いところに流れる」といった普遍の法則を無視。世界孤高の「日銀流理論」を振りかざし、円高を招き、マネーの動きを阻害し、株安をつくり、失業、倒産を生み出しているのだ。
本書で解説する理論は、著者一人だけが主張するものではない。日本を別にすればほとんど世界中の経済学者が納得して信じ、アメリカ、そして世界中の中央銀行が実際に実行しているもの。実際に著者は、日米の学者・エコノミスト・ジャーナリストたちにインタビューを行い、すでに60人以上から聞き取りを行っているが、ほとんどすべての俊才が、潜在成長率のはるか下で運営されている日本経済を「ナンセンスだ」と考えている。たとえば教科書でも有名なグレゴリー・マンキュー、ウィリアム・ノードハウス、ベンジャミン・フリードマン、マーク・ラムザイア、デール・ジョルゲンソン、ロバート・シラー、黒田東彦、伊藤隆敏らだ。
世界から見れば常識となっている「日本経済の復活」を、著者50年間の研究成果をもとに、わかりやすく徹底解説!

続いて、章別の構成は以下の通りです。

序章
教え子、日銀総裁への公開書簡
第1章
経済学200年の常識を無視する国
第2章
日銀と財務省のための経済政策
第3章
天才経済学者たちが語る日本経済
第4章
それでも経済学は日本を救う
第5章
2012年2月14日の衝撃
第6章
増税前に絶対必要な政策
第7章
「官報複合体」の罠
終章
日本はいますぐ復活する

今夜のエントリーでは、このブログで展開して来た私自身の主張とも照らし合わせて、本書の内容と安倍政権のリフレ政策について、さらに、日銀白川総裁の辞任について考えたいと思います。ただし、私は正確に記述しているつもりなんですが、安倍政権の3本の矢を柱とする経済政策のうち、本書は金融政策のリフレ政策しか取り上げていません。安倍政権のほかの2つの分野の経済政策、すなわち、財政政策と成長政策は本書のスコープ外となっています。安倍政権の3本の矢の経済政策すべてを取り上げているわけではありませんので、その点には注意が必要です。
まず、本書のテーマは、p.103 の最後のパラをまるごと引用すると、「本書の大きなメッセージは、金融政策をうまく使えば、いま日本経済が苦しむデフレ、円高、不況、空洞化といった問題が解決できるのに、日本銀行が金融政策を独占しており、にもかかわらず金融政策を使うのを拒んでいるということだ。」ということになります。1点の曇りもなくリフレ派の主張そのものです。その意味で、3本の矢のうち、安倍政権の経済政策でもっとも重要なのは金融政策ということになるのかもしれません。当然ながら、浜田教授は為替相場についても金融政策を割り当てるべきという「世界の常識」を展開します。民主党政権の折に、為替相場に市場介入を用いるという政策割当ての疑問を何度もこのブログで主張したことは間違いではありませんでした。
さらに、本書では人口動態をデフレの原因とする説を痛烈に批判しています。逆に、生産年齢人口の減少はデフレではなく、インフレの原因になりうるとの説を展開しています。少し解説が必要かと思いますが、物価上昇率がGDPギャップに何らかの感応性を示すと仮定すれば、生産年齢人口の減少に伴う潜在成長率の低下はGDPギャップをプラス方向に、あるいは、マイナス幅を縮小させる方向に作用します。人口動態がデフレの原因であるとする説は、人口動態の経済的な意味合いを供給サイドではなく、需要サイドで展開しており、真逆の結論を導いています。これも浜田教授のお説が正しいことはいうまでもありません。これら以外にも、リアル・ビジネス・サイクル理論の破綻、あるいは、失業の発生や稼働率の低下を防止するという意味での生産資源の遊休を生じさせないような、私の解釈では、リベラルな経済理論が随所で展開されています。その他、記者クラブの制度とか、多岐に渡る主張が展開されていますが、基本的には前半の第3章130ページまでが主張の中心になろうかと思います。
また、日経新聞のサイトによれば、本日の経済財政諮問会議の後、日銀の白川総裁が2人の副総裁の任期が満了する3月19日付けで総裁を辞任する意向を安倍総理に伝えたと報じられています。私は従来から国民生活に重大な影響を及ぼす金融政策に国民の意見が反映されない現在のシステムに疑問を表明して来ましたが、本書の p.152 では「日銀総裁の責任が問われないまま、任期中の5年間、国民の意見がフィードバックされない日銀のシステムが、そもそも問題なのかもしれない。」と指摘されています。浜田教授は日銀総裁解任権の明文規定を日銀法に盛り込む主張を展開しているようで、私はそこまでは思わないものの、ここまでトラック・レコードの悪い中央銀行の総裁が何ら責任を取らないのも疑問でした。従って、人によっては、引責辞任と受け取る向きがあるかもしれません。

本書のあとがきでは、専門家だけが読むデフレの経済学ではなく、社会学を編集者から求められた、と書いてあり、さらに、「経済政策決定過程の『人間学』を描こうと思った」とも記されています。ただし、次作では「『経済学』を世に問う予定」とも表明されています。待ち遠しい気がします。

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