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2013年3月21日 (木)

2月の貿易赤字から何を読み取るか?

本日、財務省から2月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる輸出入と貿易収支については、季節調整していない原系列の統計で、輸出額が前年同月比▲2.9%減の5兆2841億円、輸入額は▲11.9%増の6兆615億円、差引き貿易収支は▲7775億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易赤字、7775億円 8カ月連続の赤字
財務省が21日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7775億円の赤字だった。赤字は8カ月連続で、2月としての赤字額は比較可能な1979年以降で最大だった。円安と原油高で原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入が高止まりしたほか、2月に春節(旧正月)の大型連休があった中国への輸出が低水準だったことが影響した。
全体の輸出額は前年同月比2.9%減の5兆2841億円で、2カ月ぶりのマイナス。主に中国や英国向けの自動車や中国向けの金属加工機械、アジア向けの半導体など電子部品が落ち込んだ。ただ、季節調整済では前月比1.3%増と4カ月連続のプラスだった。
輸入額は前年同月比11.9%増の6兆615億円。4カ月連続の増加で、2月としては最大だった。原粗油やLNGに加え、中国やベトナムからの衣類、アジアからのスマートフォン(スマホ)など通信機が伸びた。
財務省関税局は「2月の輸出額は前月比で減少したが、1-2月をならすと前年同期比1.3%増で、今後の動向がどうなるか見ていかなければいけない」としている。

いつもながら、とてもよく取りまとめられた記事ですが、次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易収支については、引用した記事には8か月連続の赤字となっていますが、これは季節調整していない原系列の統計に基づいており、傾向を追うのに適した季節調整済みの統計では震災のあった2011年3月からちょうど2年間24か月連続で赤字が続いています。震災以降の電力制約などの供給サイドの構造変化に対応した比較優位の構造に実際の産業構造の転換が追いついていない可能性があると私は受け止めています。特に、季節調整済みの系列の貿易赤字は1兆円を超えて巨大な額に達しました。もちろん、主たる要因は輸入にあり、輸出の不振、少なくとも輸出額が原因ではないことは上のグラフの下のパネルから読み取れますが、数量ベースでは輸出も停滞していることは確かです。後述しますが、下のグラフの通りです。ただし、このあたりで少し長期的な比較優位の構造を考えることも必要そうな気がします。というのは、自動車のエコカー補助金や家電エコポイントなどの補助金政策が比較優位構造に即した産業構造の転換を阻害した可能性があるからです。もっとも、TPPへの参加はうまくすればショック療法的に構造転換を促進する可能性はありますが、それなりに痛みは伴いますし、今夜のところは、誠に申し訳ないながら、問題提起のここまでとします。

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季節調整済みの輸出額は最初のグラフに見られる通り、停滞を脱して上向きに転じた可能性があると私は受け止めていますが、季節調整していない原系列の輸出額を数量と価格で要因分解した上のグラフに示す通り、輸出額の増加は価格に起因し、数量では減少しています。要するに、最近の円高修正に伴って、典型的なJカーブ効果を示しているわけです。もちろん、2月の統計に関しては、中国の春節が昨年は1月で今年は2月にあった、というカレンダー要因も考える必要があります。中国要因というか、春節要因は2月限りですが、Jカーブ要因は昨年11月から始まって2-3四半期くらい継続し、円高修正の期間が長ければさらに長びく可能性も排除できません。

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最後に、上のグラフは輸入価格指数の推移をプロットしています。特に季節調整はしていませんが、最近時点で大きく上昇しているのが見て取れます。当然ながら、円高修正と原油価格などの商品市況の影響を受けています。さらに、価格が上昇している上に、原発停止の影響などにより、燃料輸入数量も増加しており、輸入額は数量と価格の両面から増加を示しています。季節調整済みの系列で見ても、輸出額が増加に転じているものの、輸入額はより以上に増勢を強めており、結果的に貿易収支は大きな赤字を記録しています。Jカーブ効果が続く今年年央から、ひょっとしたら、年内くらいまで、貿易収支はこの傾向が続く可能性が十分あると考えるべきです。

もしも、比較優位構造の変化に産業構造の転換が追いついていないのであれば、貿易赤字は円高修正のJカーブ効果もあり長期に継続する可能性があります。TPPに参加するとしても短期的な効果は望めませんし、いつまでも過去の栄光の産業の復活を夢見るのではなく、新しい比較優位構造にマッチするように資本ストックと労働のモビリティを高めることを目指すべきであると私は考えています。

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