« 景気動向指数に見る景気の先行きやいかに? | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス - 米国経済は堅調な回復軌道に戻ったか? »

2013年3月 8日 (金)

2012年10-12月期GDP統計2次QEはほぼゼロ成長に上方修正、ほかに景気ウォッチャーと経常収支も

本日、内閣府から昨年2012年10-12月期のGDP速報2次QEが発表されました。季節調整済の前期比で+0.0%、前期比年率で+0.2%と1次QEから上方修正され、日本経済は3四半期ぶりにプラス成長に転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP、3期ぶりプラス成長 10-12月0.2%増
内閣府が8日発表した2012年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.04%増、年率換算で0.2%増となった。2月に公表した速報値(0.1%減、年率0.4%減)を上方修正した。プラス成長は3四半期ぶり。設備投資や公共投資が速報値を上回ったためで、内需主導の景気底入れを裏付けた格好だ。
改定値は、速報値の公表後に明らかになった法人企業統計などのデータを使って推計し直したもので、民間調査機関の予測値(年率換算0.2%増)と同じだった。マイナスの速報値が改定値でプラスに転じるのは04年10-12月期以来、8年ぶり。
生活実感に近い名目GDPは前期比で0.3%減、年率換算で1.3%減となり、速報値の0.4%減、1.8%減から上方修正した。
実質GDPを項目別にみると、設備投資は前期比1.5%減と速報値(2.6%減)と比べて減少率が縮小した。運輸業など非製造業で投資が伸びた。個人消費も0.5%増と速報値(0.4%増)から上方修正した。自動車の販売持ち直しが主因だ。公共投資も1.8%増と0.3ポイント上方修正した。
一方、輸出は速報値と同じ3.7%減。外需の弱さが残るなか、堅調な内需がけん引して景気が底入れした構図が鮮明になっている。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.7%と、速報値(マイナス0.6%)から拡大した。民間在庫品のデフレーターが改定されたため。
同時に発表した12年暦年のGDPは実質で2.0%増。速報値の1.9%増から上方修正した。生活実感に近い名目は475兆8679億円と1.1%増えた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2011/
10-12
2012/
1-3
2012/
4-6
2012/
7-9
2012/10-12
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+0.1+1.5▲0.2▲0.9▲0.1+0.0
民間消費+0.5+1.2▲0.0▲0.5+0.4+0.5
民間住宅▲0.9▲1.7+2.2+1.7+3.5+3.5
民間設備+8.0▲2.5▲0.1▲3.3▲2.6▲1.5
民間在庫 *▲0.4+0.3▲0.4+0.2▲0.2▲0.2
公的需要▲0.4+2.7+1.5+0.8+0.7+0.8
内需寄与度 *+0.8+1.3+0.0▲0.2+0.1+0.2
外需寄与度 *▲0.7+0.2▲0.3▲0.7▲0.2▲0.2
輸出▲3.1+3.4+0.0▲5.1▲3.7▲3.7
輸入+1.7+2.1+1.7▲0.5▲2.3▲2.3
国内総所得(GDI)+0.1+1.3▲0.1▲0.7▲0.3▲0.1
名目GDP▲0.1+1.4▲0.5▲1.0▲0.4▲0.3
雇用者報酬+0.5+0.1▲0.2+0.6▲0.5▲0.5
GDPデフレータ▲1.5▲1.0▲1.0▲0.8▲0.6▲0.7
内需デフレータ▲0.3▲0.2▲0.7▲0.9▲0.7▲0.7

さらに、テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済み系列の前期比成長率に対する寄与度で、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2012年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がほぼゼロであるとともに、マイナスに寄与しているのが黒の外需と水色の設備投資などであり、逆にプラスで経済を下支えしているのが赤の消費と黄色の公的需要であるのが見て取れます。

photo

事実関係であるデータさえ示せば話が終わるような気がして、特段の追加情報もないんですが、ほぼ予想通りのゼロ近傍の成長率でした。相変わらず、昨年の段階では企業部門に弱さが見られますが、すでに過去の数字だろうと思います。昨年2012年10-12月期に景気は底を打ち、今年に入って回復局面の様相を示していることは明らかです。明らかでないのは、景気局面の変更、すなわち、山谷をつけるかどうかだけです。この先、希望的観測も含めて、円高修正と海外経済の持直しが輸出の回復につながり、復興需要などの公共投資とともに企業業績を改善させて、業績を改善した企業から家計に所得が回り、現在でもすでにかなり底堅い消費の本格的な増加がさらに景気回復を力強いものに導く、といったカンジでしょうか。

photo

現状ではアベノミクスの効果によるハードデータのエビデンスは多くないんですが、マインドの改善によるソフトデータは大いに改善を示しています。その典型が来週発表の消費者態度指数と上のグラフで示した景気ウォッチャーです。本日、2月の統計が内閣府から発表されています。グラフを見れば明らかですが、大きくジャンプしています。足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.7ポイント上昇の53.2、2-3か月後の景気を見通す先行き判断指数は1.2ポイント上昇の57.7となりました。現状・先行きとも4か月連続で上昇を示し、アベノミクスによる円高修正や株高により、消費者が支出意欲を向上させるとともに、企業業績の改善に対する期待感が一段と高まっています。現状判断指数は2006年4月以来、6年10か月ぶりの高水準でした。

photo

最後に、今日は財務省から1月の経常収支も公表されています。上のグラフは季節調整済の経常収支を青い折れ線でプロットし、その内訳を積上げ棒グラフで示しています。色分けは凡例の通りです。メディアでは季節調整していない原系列の統計で経常収支が3か月連続の赤字を記録した点が強調されているように受け止めていますが、円高修正の進展に伴う貿易収支のJカーブ効果が一巡した段階で、もう少し詳しく考えたいと思います。

|

« 景気動向指数に見る景気の先行きやいかに? | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス - 米国経済は堅調な回復軌道に戻ったか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2012年10-12月期GDP統計2次QEはほぼゼロ成長に上方修正、ほかに景気ウォッチャーと経常収支も:

« 景気動向指数に見る景気の先行きやいかに? | トップページ | 米国雇用統計のグラフィックス - 米国経済は堅調な回復軌道に戻ったか? »