トマス・レヴェンソン『ニュートンと贋金づくり』(白揚社) を読む
トマス・レヴェンソン『ニュートンと贋金づくり』(白揚社) を読みました。著者はマサチューセッツ工科大学 (MIT) でサイエンス・ライティングの教授をしています。同じ出版社から出た前著の『錬金術とストラディヴァリ』はそれなりに話題になりました。まず、出版社のサイトから本のあらすじを引用すると以下の通りです。
ニュートンと贋金づくり
欧州最高の知性 vs. 英国最悪の知能犯
17世紀のロンドンを舞台に繰り広げられた国家を揺るがす贋金事件。
天才科学者はいかにして犯人を追い詰めたのか?
膨大な資料と綿密な調査をもとに、事件解決にいたる攻防をスリリングに描いた科学ノンフィクション!
「SF小説」、すなわち、サイエンス・フィクションというジャンルがあります。この本はサイエンス・ノンフィクションといえます。引用にある通り、この本は17世紀末にイングランドの造幣局監事に就任したニュートンと贋金づくりの対決を取り上げています。もちろん、ニュートンの生い立ちから始まって、『プリンキピア』などの成果や、何といっても有名な万有引力の発見なども詳しく解説されています。科学的な業績だけでなく、錬金術に励んだり、晩年はかの南海泡沫事件で大損をしたりしたニュートンの人物像にも迫ります。そのニュートンに追求される贋金づくりのウィリアム・チャロナーもさまざまな角度から取り上げています。
本書はニュートンとチャロナーの対決を歴史的な評価に耐える正確に資料をふまえたノンフィクションとして再現するとともに、産業革命前夜のイングランドにおける犯罪者たちの社会史、拷問や処刑の歴史、賄賂や袖の下の作用などを包括的に明らかにしています。もっとも、警察制度が確立する100年近くも前のお話しで、造幣局監事たるニュートンが操作から裁判から、すべてに活躍する意外な歴史をひも解いています。なお、あえて「イングランド」と表記して「英国」としないのは、スコットランドは明らかに別の国としてストーリーが進むからです。
江戸時代の日本でも、ニュートンの時代のイングランドでも、贋金づくりは極刑に処せられます。歴史に名高い天才科学者と贋金づくりの息もつかせぬ対決が面白く展開されます。とてもオススメの5ツ星です。
| 固定リンク
コメント