ブランコ・ミラノヴィッチ『不平等について』(みすず書房) を読む
明日も含めて、この週末は熱心に読書に取り組む予定だったりするんですが、まず、ブランコ・ミラノヴィッチ『不平等について』(みすず書房) を読みました。上の表紙に見られる通り、原題は The Haves and the Have-Nots ですから、「持てる物と持たざる者」といったところでしょうか。著者は世銀の研究部門のリードエコノミストであり、メリーランド大学教授でもあります。まず、出版社のサイトからこの本の紹介文を引用すると以下の通りです。
不平等について: みすず書房
史上最高のお金持ちはだれか? グローバリゼーションで世界は不平等になったのか? 現代のアメリカと古代ローマ帝国の所得格差はどれほど違うのか? などなど、数多くの思い込みを数字で覆し、精確に理解するための必修知識を与えてくれる一冊。
章別構成は3章から成り、国内の個人間の不平等、世界の国家間の不平等、そして、グローバルな世界市民の不平等となっています。副題は「経済学と統計が語る26の話」となっており、第1章に10、第2章に7、第3章に9の合計26のコラムが収録されています。なお、第1章の冒頭には当然ながら、p.20 でいくつかの不平等指標について解説が加えられており、たとえな、厚生あるいは効用アプローチ、セン的な潜在能力アプローチ、ロールズ的なアプローチが簡単に紹介されています。
特に興味深かったのは、p.84 で貧困研究と不平等研究について概観されていて、貧困研究が大きな重点を持って進められている一方で、公平の問題がつねについて回ることから、不平等については貧困に関する研究ほどの熱意を持って取り組まれていない現状が明らかにされています。私自身は国際開発学会にも属しており、開発経済学に関する見識もそれなりにあるんですが、実は私の研究もその通りでして、地方大学に単身赴任して出向していた際に、貧困指標を紀要論文に取りまとめて、ごくついでに不平等指標にも触れたものの、ボリュームは圧倒的に不平等ではなく貧困に偏っていたりしました。痛いところを突かれた気がします。
26も収録されたコラムについては、いずれも不平等について深い洞察を加えたものばかりなんですが、特に、最後の2編、すなわち、3-8 「なぜ、ロールズはグローバルな不平等に無関心だったのか」と3-9 「グローバル経済と地政学」はオススメです。後者では南欧や東アジアの成功は援助に依存する部分が小さくないことが明らかにされています。
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