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2013年3月18日 (月)

TPPの経済効果の試算を考える

先週の金曜日3月15日、安倍総理大臣のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加を表明する記者会見でも取り上げられましたが、TPP参加の経済効果の影響試算、すなわち、「関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算」が公表されています。広く報じられているので、多くのメディアで目にすることができると思います。今夜のブログでは、報じられた内容に少し私自身の経験も加えて、簡単にこの試算結果を振り返っておきたいと思います。
まず、試算の前提は、主要に、関税撤廃の効果のみを対象としており、逆から見れば、非関税障壁の削減やサービス・投資の自由化は含まないこととなっていて、国内的には、追加的な対策を計算に入れない、とされています。輸出+0.55%(+2.6兆円)、輸入▲0.60%(▲2.9兆円)、消費+0.61%(+3.0兆円)、投資+0.09%(+0.5兆円)、となり、差引きネットでGDPが+0.66%、+3.2兆円の増加と試算されています。もちろん、比較優位のない農産物には大きな打撃があり、農林水産物生産額は▲3.0兆円減少すると見込まれます。要するに、GDPへの影響はリポートから引用した以下のグラフの通りです。

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また、同時に公表された「農林水産物への影響試算の計算方法について」から、▲3.0兆円と見込まれる農林水産物の生産減少額を品目別に明示したグラフを引用すると以下の通りです。

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大雑把な経済効果としてはこんなもんだろうと私も思います。すなわち、2年半前の2010年10月の民主党政権下での試算「EPAに関する各種試算」でも、TPPに参加して100%自由化するマクロ経済効果は、実質GDPで見て+0.48-0.65%、+2.4-3.2兆円増と見込まれていましたので、マグニチュードの大きさはほぼ同じです。そして、農産物の生産減少についても、コメがもっともダメージ大きいというのも軽く予想されるところです。逆から見て、それだけ保護されているということです。
他方、PECC(太平洋経済協力会議)からはブランダイス大学のペトリ教授とジョンズ・ホプキンズ大学のプラマー教授による試算結果が昨年2012年10月に The Trans-Pacific Partnership and Asia-Pacific Integration: A Quantitative Assessment という本に取りまとめられて公表されています。この試算では関税撤廃に加えて、非関税障壁の削減、サービス・投資の自由化の効果も推計に加えており、日本のマクロ的な所得効果は、+1,050億ドル程度で、GDPの+2.0%程度に達すると結論されています。しかも、このリポートでは日本のTPP参加が世界経済の拡大効果を持ち、世界のGDPが+2200億ドル、+0.2%程度増加すると見込んでいます。
なお、これらの試算は政府統一試算にせよ、ペトリ教授とプラマー教授の試算にせよ、いずれもGTAPデータベースを基に、応用一般均衡モデルを用いて実施されています。政府統一試算ではモデルもGTAPを使っていると明記されています。GTAP とは Global Trade Analysis Project の頭文字を取った略称であり、データベースとモデルのいずれも米国のパーデュー大学でメインテナンスされています。公式サイトはコチラです。もともとが農遺産物貿易の分析のために開発されていますので、こういった自由貿易協定とか関税率の引下げや撤廃などの分析に適したジェネリックなシステムといえます。世界的な標準と受け止めてよさそうです。私も『APEC貿易自由化の経済効果』を取りまとめるプロジェクトチームに加わった際にGTAPデータを基に関税率のデータ作成を行った記憶があります。
なお、当然ながら、安倍総理のTPPへの参加表明は世間一般の評価も高くなっています。私がネットで見た限りですが、朝日新聞と読売新聞と毎日新聞が世論調査を実施しており、以下のサイトに結果を公表しています。

私なんぞから見れば、これらの経済効果の影響試算は、取り立てて何も新しく付加された情報はなく、当然ながら、学術的な価値はほとんどありません。でも、国民のコンセンサスを得るという作業はここから始まるのでしょう。私はGATTウルグアイ・ラウンドの当時をまだ記憶していたりします。農水産品のダメージに関する日本政府の試算結果の3兆円を超えるTPP対策費が用意されているんでしょうか?

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