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2013年4月25日 (木)

最近邦訳出版された社会科学の教養書を読む

今週月曜日の読書感想文は小説、しかも、日米の人気ミステリ作家のシリーズ最新作だったんですが、今夜は社会科学分野の教養書です。経済史とマックス・ウェーバーに関する本で、いずれもオリジナルの原書が刊行・出版されたのは決して最近ではないものの、邦訳は最近出たばかり2冊です。2冊とも図書館で借りましたが、学術書だからなのかどうか、ご参考まで、買えば2冊で税込み1万円を超えます。薄給の公務員をしていてはなかなか手が出なかったりします。

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まず、ダグラス C. ノース『経済史の構造と変化』(日経BPクラシックス) です。著者のノース教授は、経済史の分野での貢献を理由にフォーゲル教授とともに1993年のノーベル経済学賞を受賞しています。オリジナルの出版は1980年なんですが、現時点でも決して「古い」という感じはしません。決してノース教授の代表作とはいえませんが、経済史の大家の手になる学部レベルか、教養部レベルのテキストのようなものとなっています。学部レベルか教養部レベルかは、大学のレベルに依存します。どうでもいいことですが、私が地方大学に出向していたころ、「経済財政白書」について、私は学部レベルだと考えていた一方で、大学院レベルと主張する同僚がいたりしました。それはさておき、第1部が理論編、第2部が歴史編、そして、結論となる第3部が短く全体を取りまとめた理論と歴史編になります。第1部では、経済史の中核をなすべき制度構造の変化についての基本的な分析の枠組みを提供しています。すなわち、コース教授らの提唱した取引コストをノース教授が経済史に援用し、制度構造の変化を説明しようと試みています。しかし、いつも感じるんですが、何も限定を付さずに「経済史」といえば、西洋経済史を指します。基本的には、中国や日本は分析の枠外に置かれています。せいぜいが西洋との何らかの経済関係を持つ周辺諸国の一部としかみなされていないような気がします。

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次に、ヴォルフガング・シュヴェントカー『マックス・ウェーバーの日本』(みすず書房) です。コチラは1996-96年の冬学期にデュッセルドルフ大学へ提出されたシュベントカー教授の教授資格審査論文の邦訳です。シュヴェントカー教授の著書としては初めての邦訳だそうです。教授資格審査論文だけあって完全な学術書であり、一定のレベルに達していないと読み進むことすら難しいかもしれませんが、完全な理解に至らないまでも雰囲気を感じ取ることは可能であろうという気がします。副題は「受容史の研究 1905-1995」となっています。日本のアカデミズムにおいて、欧米以上にいかにウェーバー研究が盛んであるかを延々と記述していますが、どうしてそうなのかを分析しているわけではありません。基礎知識がないと難しい可能性はありますが、マックス・ウェーバーの業績に関して理解が深まりますし、明治末年から戦後までの我が国社会科学の発展にも触れることができます。もっとも、1970年代の東大では丸山教授の政治論、大塚教授の経済史、福武教授の社会学などの人気授業でマックス・ウェーバーが取り上げられていましたが、21世紀に入った現時点で近代というものを理解するウェーバーの理論や学識がどこまで必要とされるかは少し疑問が残る可能性はあります。でも、欧米以上に盛んな我が国の「ウェーバー業界」の歴史について、とてもよく取りまとめられています。

少しメインストリームの経済学からは距離を置いた教養書ですが、私もこういった本を読んで教養を高めようとする努力をしているんだということを示すために、また、この2冊とも図書館で借りて読んでおり、我が家の本棚に残らないので覚書的なものを残すために、今夜の記事では簡単に紹介を兼ねて取り上げてみました。なお、来年2014年はマックス・ウェーバー生誕150年ではないかと記憶しています。何かイベントがあるかもしれません。

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