景気ウォッチャーはさらに上昇して過去最高を記録し、経常収支はまたしても赤字に転じる!
本日、内閣府から3月の景気ウォチャー調査の結果が、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ発表されました。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月比+4.1ポイント改善の57.3となり5か月連続で上昇し、経常収支は季節調整済みの系列で見て▲1億円の小幅な赤字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
3月の街角景気、過去最高に並ぶ 5カ月連続で改善
先行きには懸念も
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.1ポイント上昇の57.3で、2006年3月に付けた過去最高水準に並んだ。改善は5カ月連続。株高を背景に消費者の購買意欲が改善したほか、円安を追い風に製造業など企業のマインドが上向いた。
一方、2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は0.2ポイント低下の57.5と、5カ月ぶりに悪化した。急速に進んだ円安を受けて原材料や燃料の価格上昇によるコスト増を懸念する声が増えてきた。内閣府は基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
現状判断指数は家計、企業、雇用の全ての分野で改善。家計動向については「株価の上昇に伴い、美術品や宝飾品などの高額商品が好調に売れている」(近畿の百貨店)、「株価上昇など景気浮揚が動機となった購入もみられた」(北陸の乗用車販売店)との指摘があった。企業動向に関しても「円安が値引きと同じ効果を生み、海外代理店や商社が積極的に販売活動するようになった」(東海の一般機械器具製造業)という。
先行き判断指数は企業動向関連が低下、家計動向関連が横ばいだった。「受注量にさほどの変化はないが、燃料コストアップが影響して、やや悪くなる」(四国の輸送業)、「鉄原材料価格は上昇傾向にあるため、コスト面では厳しくなる」(中国の金属製品製造業)などの声が聞かれた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は3月25日から月末まで。
経常収支4カ月ぶり黒字 2月は6374億円
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は6374億円の黒字だった。黒字は4カ月ぶり。円高是正などで所得収支の黒字幅が拡大し、液化天然ガス(LNG)など燃料輸入の増加による貿易収支の赤字を補った。
ただ、季節調整済みの経常収支は1億円の赤字で、統計として連続性のある1996年以降では、昨年9月以来の2度目の赤字となった。他の月より少ない2月の日数を他月同様に平準化した結果、貿易収支の輸入増分が増幅された。
貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支べースで、6770億円の赤字。中国や欧州連合(EU)向けに輸出が減少した一方、LNGなど燃料を中心に輸入が増加したため、8カ月連続の赤字となった。
一方、所得収支は1兆4074億円の黒字で、黒字幅は前年同月に比べ13.1%増えた。海外企業による配当金・配分済み支店収益の支払いが減り直接投資収益が増えたうえ、円高是正で配当金や利子などの受け取りが増えた。
旅行や輸送動向を示すサービス収支は536億円の赤字で、赤字幅は縮小。中国の春節など訪日外国人旅行者が前年同月より増えて旅行収支が赤字幅を縮小したほか、特許使用料や仲介貿易の受け取りなどその他サービス収支が黒字幅を拡大した。
財務省国際局は経常収支の先行きについて「内外の経済情勢、為替、LNGや原油価格の動向等、特に貿易収支の影響が大きい。今後の動向等を注視する必要がある」としている。
いつもながら、どちらの記事もとてもよくまとまっているという気がします。続いて、景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIのグラフは以下の通りです。影をつけた部分は景気後退期ですが、いつものお断りで、このブログのローカル・ルールとして直近の景気の山と谷は2012年3月と2012年11月と仮置きしています。
現状ではアベノミクスの効果によるハードデータのエビデンスはそう多くないんですが、マインドの改善によるソフトデータは大いに改善を示しています。その典型が来週発表の消費者態度指数と上のグラフで示した景気ウォッチャーです。グラフを見て明らかな通り、現状判断DIはさらに大きくジャンプしています。家計にとって重要な収入源のひとつである雇用判断DIが改善し、それが消費者の購買意欲に結びつく形で全体的に景気判断DIが改善しています。もちろん、円高修正が企業収益の改善につながる効果がバックグラウンドにあります。他方、意外だったのは先行き判断DIが低下に転じた点です。仕入価格や電気料金の上昇等によるコスト増への懸念があって、家計動向部門では横ばいにとどまりましたが、企業動向部門では低下しました。
続いて、経常収支は季節調整値で見てわずかに赤字で、特に貿易収支については上のグラフの黒い棒グラフで読み取れるように大きな赤字を記録しました。財の輸出が季節調整済み前月比▲2.7%減少した一方で、輸入は+5.6%の増加を示し、貿易赤字は▲1兆1,414億円に拡大しています。基本的には、円高修正に伴うJカーブ効果なんですが、商品市況の高止まりに伴う燃料価格による赤字圧力も依然として根強いものがあります。ただし、サービス収支の赤字は1月統計から半減しており、円高修正の赤字圧縮効果が出始めている可能性も否定できません。なお、経常収支はこのブログではいつも季節調整済みの系列で見ていますので、引用した記事とは少し印象が異なります。毎月の統計はどうしてもそうなりますが、下のグラフに示したように、大きな傾向として季節調整済みの系列と原数値は、当然ながら、同じ方向を向いています。すなわち、2010年年初を経常黒字のピークとして、ゆっくりと黒字幅を縮小させる方向にあります。
このブログではいつも国際収支のうちの経常収支だけに着目しているんですが、資本収支のうちの株式投資収支は季節調整していない原系列の統計ながら、昨年10月から5か月連続の黒字、すなわち、海外からの資本流入を記録しています。外国人投資家の活発な買いが株高をサポートしているのかもしれません。
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