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2013年5月21日 (火)

2年後に消費者物価上昇率は2%に達するか?

先週木曜日の5月16日に今年1-3月期のGDP統計、いわゆる1次QEが発表された後、今年度から2014年度ないし2015年度くらいまでの短期経済見通しがシンクタンクなどから相次いで公表されています。いくつか、私も拝見しましたが、特に興味を持って注目したのは物価見通しです。日銀が2年後の消費者物価上昇率+2%を目標に金融政策運営をしていることから、ほぼ2年後の2015年1-3月期の消費者物価上昇率に着目してみました。四半期ベースの物価見通しを公表していない第一生命経済研を除いて、以下の表に取りまとめてあります。すべて、消費者物価 (CPI) の生鮮食品を除く総合であり、2014年4月に予定されている消費税率引上げの影響を含むベースです。いつもの通り、ニューズレターで届くようなクローズな情報ではなく、ネット上で公開している機関のみを取り上げています。ヘッドラインは私の趣味で物価に関するものを抜粋しました。ただし、日本総研のように、物価には何ら言及のないリポートもあり、その場合、ヘッドラインはブランクです。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2015年1-3月期
CPI上昇率見通し
ヘッドライン
日本総研+3.7%n.a.
みずほ総研+2.5%コアCPI前年比は夏場に小幅なプラスに転じると予測している。その後、米国基準コアCPIの持ち直しは続くものの、エネルギー価格の上昇が一服し、コアCPIの伸びが一段と高まる状況とはならないだろう。コアCPIは2013年度が前年比+0.1%、2014年度が消費税の影響を除くベースで同+0.2%(消費税含むベースで+2.3%)と、明確なデフレ脱却には至らない見通しである。
大和総研+3.1%フィリップス曲線を見ると、足下(2013 年1-3 月期)で観測されている期待インフレ率(+1.0%)が不変であった場合、日銀が目標とするCPI上昇率2%を達成するためには、GDPギャップが+8.5%となる必要がある。現状、GDPギャップは▲3%程度であるため、物価目標を達成するためにはGDPを10%以上増加させる必要があり、早期の達成は非常に困難だと言わざるを得ない。また、GDPギャップが大幅なプラスの状態を維持することは現実的ではないことから、持続的に2%の物価上昇率を維持することは難しいだろう。これに対して、期待インフレ率が上昇するケースを想定すると、仮に期待インフレ率が+4.2%まで上昇した場合、CPI上昇率2%達成に必要なGDPギャップは0%まで縮小する。
ニッセイ基礎研+2.5%景気回復基調が明確となり需給バランスが改善に向かうこと、各電力会社で電気料金の値上げが予定されていること、円安の影響が輸入物価の上昇を通じて国内物価に波及することなどから、2013年度入り後は下落幅が縮小し、夏場までにはプラスに転じる可能性が高い。2013年度中は高めの成長が続くことに伴い需給バランスの大幅な改善が見込まれること、円安に伴う輸入物価上昇による物価押し上げ圧力がさらに高まることにより、上昇率は2013年度末にかけて0%台後半まで高まることが予想される。しかし、2014年度に入ると消費税率引き上げに伴う景気減速によって、需給バランスの改善が足踏みとなるため、消費者物価の伸びは頭打ちとなる可能性が高い。
第一生命経済研n.a.消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の見通しは、2013年度が前年度比+0.3%、2014年度が+2.7%、2015年度が+1.7%である。14年4月、15年10月に実施予定の消費税率引き上げの要因を除けば、14年度が+0.7%、15年度が+1.0%となる。日本銀行が目標として掲げる「2%」のハードルは非常に高く、実現は困難だろう。
伊藤忠経済研+3.0%2015年1-3月期の日本型コアは消費税率引き上げの影響を除くベースで0.9%(消費税率の引き上げを含め3.0%)と予想している。経済主体のインフレに対する認識は変化し、期待インフレ率は徐々に上昇していくと判断している。しかし、それが日本の隅々に行き渡るには、時間を要し、そのため実際のインフレ率の上昇も、日本銀行が見込むほどの速さでは進まないと考える。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+4.2%安倍政権の経済政策、いわゆる「アベノミクス」を追い風に、日本経済がデフレから脱却する可能性は一段と高まった。名目GDP成長率が実質を下回る「名実逆転」減少は13年度中に解消し、14年度末には、日本銀行が目指すインフレ率2%に到達する見通しだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+2.1%2014年度は、消費税率引き上げ後の影響が、家計部門を中心に現れる。公共投資のプラス効果が剥落することも、成長率を押し下げることになろう。このため、実質GDP成長率は前年比0.0%と伸び率は急減速する見込みである。ただし、海外経済の拡大を背景に輸出の伸びが高まってくるため、景気が後退期に入ることは回避できるだろう。こうした状況下では物価に上昇圧力はかかりづらく、消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比+2.3%に上昇するが、消費税の影響を除けば同+0.3%にとどまり、日本銀行の目指すターゲットの達成は困難になってこよう。

ということで、特に物価上昇について詳細な分析結果を提供している大和総研とニッセイ基礎研を含めて、ただし、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所を除いて、各機関ともマイナスの物価上昇というデフレからは脱却できるものの、2年後に消費者物価上昇率が日銀の目標である2%に達することは難しいとの結論です。消費税率が2014年4月に現行の5%から8%に引き上げられる影響については、軽減税率の適用などの詳細が決まっていないものの、現在の非課税品目などを考慮して、消費者物価上昇率に対して+2%ポイント程度の押上げ効果を有すると各機関では見込んでいるように見受けられます。先行き物価見通しの典型的な一例として、ニッセイ基礎研のリポート p.7 のグラフを引用すると以下の通りです。

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ニッセイ基礎研とともに物価上昇を少し詳しく分析した大和総研のリポートでは、単純に日銀の物価上昇目標が2年後に達成できるかどうか、ではなく、期待物価上昇率を織り込んだフィリップス曲線を用いて、目標とする物価上昇率に対して、GDPギャップと期待物価上昇率の組合せを試算しています。テーブルにもある通り、物価上昇+2.0%を達成するためには、現状の+1.0%のインフレ期待ではGDPギャップが+8.5%となる必要がある一方で、期待インフレ率が+4.2%まで上昇すれば必要なGDPギャップは0%にとどまる、との結論です。実際に米国の連邦準備制度理事会がインフレ期待を上昇させるのに成功した例なども言及されています。なお、下のグラフは大和総研のリポート p.13 から引用しています。少し分かりにくいかもしれませんが、期待物価上昇率の上昇でフィリップス曲線が上方シフトすることがピンクの矢印で示されています。

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アベノミクスの中でも着実に成果を上げている金融政策について、大和総研のリポート p.9 では次のように表現されています。すなわち、「旧来の日銀擁護派がどういった理屈を並べたてようとも、大幅な円安・株高進行という『現実』の前では、黒田新総裁に対する『揚げ足取り』の様な批判はむなしく響くだけだ。」ということで、まったく同感です。吉川教授の『デフレーション』の尻馬に乗ったような「賃金が問題」という疑問や批判は続くでしょうが、リフレ派の理論と実証に基づいた現在の金融政策については、現実の日本経済が回答を出す段階に達しつつあると私は考えています。

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