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2013年5月27日 (月)

Pew Research Center の世界経済に関する意識調査結果

やや旧聞に属する話題ですが、先週木曜日の5月23日に Pew Research Center から「世界経済に関する意識調査結果」 Economies of Emerging Markets Better Rated During Difficult Timesが発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップロードされています。リポートに特にタイトルらしいタイトルが付されていないので何とも呼びづらいんですが、主として意識調査のソフトデータを中心に、いくつかハードデータも交えながら、リポートされています。リポートのサマリーというほどのことはありませんが、タイトルとなっている "Economies of Emerging Markets Better Rated During Difficult Times" のほかに、副題として "Global Downturn Takes Heavy Toll""Inequality Seen as Rising" といったところが調査結果の特徴として上げられるんではないかと思います。なお、世界経済は先進国と新興国と途上国の3カテゴリーに分類されていますが、詳細はリポートの付属別表にあります。調査期間は大雑把に今年の3月中ですが、調査対象国により小さなズレがあり、日本の場合は3月5日から4月2日となっています。今夜のエントリーでは、主として格差や不平等の問題にスポットを当てて、当然ながら日本に着目してこのリポートを取り上げたいと思います。

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まず、総論として、先行き経済の見通しにつき、12か月後の方向性に関する質問に対する回答は上のグラフの通りです。グラフのタイトルは "Advanced Economies Pessimistic" となっており、見れば明らかに、先進国では新興国や途上国に比べて「改善」の比率が小さく、「悪化」が大きくなっています。ただし、「先進国」でカテゴライズするよりも、明らかに欧州諸国で「悪化」比率が高いことは読み取るべきです。日米韓は新興国や途上国でも中位に位置するくらい「改善」の比率が高く、特に、日本は「悪化」の比率が小さい点は注目すべきです。アベノミクスの効果と私は受け止めています。

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次に、もうひとつの総論として、政府の課題に関する質問に対する回答は上のグラフの通りです。グラフのタイトルは "Government Should First Address..." となっています。質問票を見ると、回答の選択肢は、雇用、インフレ、格差・不平等と公的債務の4つとなっているようです。雇用に関しては各国ともスコアが高い一方で、インフレについては先進国よりも新興国・途上国で高いスコアを示しており、逆に、公的債務については新興国・途上国よりも先進国でスコアが高くなっています。また、格差・不平等については途上国でスコアが低い一方で、先進国と新興国では高い関心を集めています。なお、我が国では先進国の中で公的債務が高いスコアを弾き出しています。当然でしょう。

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ということで、総論から各論の格差・不平等に目を転じて、不平等が問題かどうかに関する質問に対する回答は上の通りです。グラフのタイトルは "Most Say Inequality Is a Problem" となっています。当然ながら、不平等は問題であると国民から捉えられているんでしょうが、わずかな差ながら、先進国では新興国や途上国よりもスコアが低いように見受けられます。特に、我が日本は豪州とともにとても低くなっています。この背景について、格差や不平等が経済的あるいは社会的な問題と考えられておらず、例えば、自己責任や自助努力の範囲内、と受け止められているのか、それとも、格差や不平等の水準が低くて問題となるに至っていないのか、この調査だけからは不明なんですが、どちらかといえば後者なのかもしれないと私は解釈しています。

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続いて、不平等が拡大しているかどうかに関する質問に対する回答は上の通りです。グラフのタイトルは "Most Say Inequality Has Increased" となっています。このグラフの印象では、新興国よりも先進国と途上国で不平等の拡大が進んでいるような印象を受けます。ここでも、我が日本は不平等の進行を感じている割合は低くなっています。もっとも、低いとはいえ、不平等が進んでいるとする割合が軽く50パーセントを超えている点は忘れるべきではありません。

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最後に、経済システムが富裕層に有利かどうかに関する質問に対する回答は上の通りです。グラフのタイトルは "Most Say Economic System Favors Wealthy" となっています。ここでも前のグラフと同じで、新興国よりも先進国と途上国でスコアが高いような印象を受けます。また、我が日本はアングロサクソン諸国に混じってスコアは先進国の中で低くなっています。というか、新興国や途上国と比較しても低い方だという気がします。逆から見て、現行の経済システムへの信頼性が相対的に高い、と解釈することも可能です。なお、このグラフと併せて、上の2枚のグラフ、すなわち、不平等が問題かどうか、不平等が拡大しているかどうか、についても先進国の中で欧州のスコアが高くなっていることが読み取れます。

全体として、新興国と途上国で先行き経済の楽観論は少なくない一方で、先進国、特に欧州では悲観論が根強く残る中、政府が取り組むべき経済的な課題としては、雇用は当然ながら、格差や不平等の問題があるものの、我が日本については他国と比較した相対的な位置づけながら、格差や不平等の問題認識は決して高くない、ということになるのかもしれません。世界の中における日本経済に関する意識調査として、とても興味深いと受け止めています。

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