« 企業物価に見るデフレの現況やいかに? | トップページ | 榎田投手が打ち込まれてオリックスにボロ負けし交流戦は連敗スタート! »

2013年5月15日 (水)

労働力調査の詳細集計からデフレと賃金の関係を考える!

昨日午後、総務省統計局から労働力調査の詳細集計が発表されています。労働力調査といえば、毎月の失業率がおなじみなんですが、この詳細集計では正規・非正規雇用の統計が注目されています。今夜は正規・非正規の雇用とデフレの関係を論じたいと思います。まず、日経新聞のサイトからこの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。

仕方なく非正規、男性で3割超 労働力調査
総務省が14日発表した1-3月期の労働力調査(詳細集計)によると、非正規で働く男性に理由を聞いたところ、「正規の仕事がない」ことを挙げる人が31.1%と最も多かった。特に35-54歳の層では49.1%と半分近くを占めた。正社員に就けず、仕方なく非正規で働く人が多いようだ。
総務省は今年1月からこの調査を始め、今回初めて集計した。女性が非正規で働く理由は「家計の補助や学費のため」が27%、「都合の良い時間に働きたい」が24.8%と多かった。「正規の仕事がないため」とした人は14.8%で、男女で非正規を選んだ理由の違いが浮き彫りになった。
政府は不本意ながら非正規で働く人の処遇を改善するため、正社員や無期雇用に転換した企業への助成制度を今年から始めている。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。続いて、他の政府統計とともに雇用統計を取り上げた4月30日付けのエントリーでもお示ししましたが、役員を除く雇用者のうち、正規と非正規の雇用者の比率の推移は以下のグラフの通りです。この正規・非正規比率の調査は1984年から始まっており、1984年から1998年までは毎年1回で2月時点の調査、1999年から2001年は毎年2回で2月と10月時点の調査、2002年以降昨年2012年までは四半期調査、今年2013年からは月次調査として実施されています。下のグラフは切りのいいところで1985年からプロットしています。

photo

一目瞭然ですが、正規比率は30年近くに渡って低下を続けています。調査開始時点の2984年には正規比率が84.7%に上っていましたが、1990年調査では80%を割り込み、2002年10-12月期には70%を下回りました。1984年の84.7%から2001年2月の72.8%まで、17年間でほぼ▲12%ポイント正規比率は低下し、年間▲0.70%ポイントで正規比率が低下しており、2001年2月の72.8%から2013年1-3月期の63.7%まで、12年間でほぼ▲9%ポイント低下して、今世紀に入って年間▲0.76%ポイントとややテンポを上げて正規比率が低下しています。

photo

続いて、同じく統計局の労働力調査詳細集計から、上のグラフは男女別に非正規雇用となった理由をプロットしています。今回初めての調査結果です。時間的な自由度や補助的な収入目的、あるいは、家事等との両立などが女性で高い比率を占めており、非正規雇用の、いわば、本来的というか、決して否定的ではない理由が上げられている一方で、男女とも「正規の仕事がない」が無視できない比率を占めています。特に男性では30%を超えています。所得を得るための雇用としてばかりでなく、例えば、経済産業研究所の「非正規労働者の幸福度」の研究成果によれば、未婚、短い雇用契約期間などとともに非自発的な非正規雇用といった労働者の属性は主観的幸福度を引き下げる要因となっています。

photo

主観的幸福度もさることながら、マクロ経済における非正規雇用の問題は所得の低さに起因します。上のグラフは厚生労働省の毎月勤労統計の5人以上事業所における就業形態別の現金給与総額の前年比増減率をプロットしています。一見すると矛盾するような部分があります。すなわち、2003年と2004年はフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者のいずれも前年比で賃金が上昇しているにもかかわらず、この両者の加重平均であるトータルは前年比マイナスとなっています。シンプソン・パラドックスが生じているわけです。毎月勤労統計2013年3月速報では、月間の現金給与総額で見て一般労働者が350,688円であるのに対して、パートタイム労働者はわずかに93,305円にとどまっています。ですから、一般労働者とパートタイム労働者のいずれも賃金が上昇しても、一般労働者からパートタイム労働者へのシフトが生じれば、加重平均のトータルの賃金は下がってしまいます。毎月勤労統計の一般労働者とパートタイム労働者の区分が、統計局の正規・非正規雇用者の区分と厳密に一致するわけではないので、あくまで参考なんですが、非正規雇用の増加が日本国民全体の賃金所得に対する下押し圧力となっているわけです。逆から見て、雇用が非正規から正規にシフトすれば、正規と非正規のそれぞれの賃金水準が変わらなくても、マクロでの国民トータルの賃金所得は増加します。
なお、賃金とデフレの関係について、私は従来から物価が先行して賃金が後を追う、という第1次石油危機の当時の経験を引き合いに出し、賃金上昇はデフレ脱却の十分条件と主張していますが、今年の2月26日付けのエントリーで紹介した吉川洋教授の『デフレーション』が効率的賃金仮説を主張したため、デフレ脱却と賃金の関係は当然ながら大いに注目されています。特に、吉川教授の主張の後を追うように、リフレ政策に懐疑的な論者から「リフレ政策では賃金が上がらないからデフレから脱却できない」という主張がなされる可能性があります。別の観点ですが、ライシュ教授の『暴走する資本主義』にもある通り、賃金を所得として受け取る労働者からすれば賃金を上げる方向が望ましいんですが、資本主義の中で賃金をコストと考える投資家や消費者からすれば低賃金を求めがちになってしまいます。しかし、労働者が非正規から正規雇用にシフトすることによる国民トータルでの所得の増加の可能性があることは見逃すべきではありません。その意味でも、もちろん、主観的幸福度の観点からも、質の高い正規雇用、あるいは、ILOのいう decent work の増加は、もちろん、デフレ脱却の結果としてもたらされると多くのリフレ派エコノミストは考えていることと思いますが、デフレ脱却の観点からも重要になると考えるべきです。

photo

最後に、ついでながら、本日、内閣府から4月の消費者態度指数が発表されました。先週発表の景気ウォッチャーの現状判断DIが低下したので、私は大いに注目していたんですが、消費者態度指数は前月比+1.4ポイント上昇の44.5に上昇しました。上のグラフの通りです。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「改善に向けた動きがみられる」に据え置いています。なお、4月から調査方法が変更になり、従来との接続性は確保されていないようです。グラフでは「新系列」として緑色でお示ししてあります。調査方法の変更に関する詳細な情報は内閣府のサイトで提供されています。

|

« 企業物価に見るデフレの現況やいかに? | トップページ | 榎田投手が打ち込まれてオリックスにボロ負けし交流戦は連敗スタート! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/51639245

この記事へのトラックバック一覧です: 労働力調査の詳細集計からデフレと賃金の関係を考える!:

« 企業物価に見るデフレの現況やいかに? | トップページ | 榎田投手が打ち込まれてオリックスにボロ負けし交流戦は連敗スタート! »