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2013年5月 6日 (月)

ジャレド・ダイアモンド『昨日までの世界』(日本経済新聞出版社) を読む

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ゴールデンウィークにおける読書の目標のひとつにしていたジャレド・ダイアモンド『昨日までの世界』(日本経済新聞出版社) を読みました。一応、念のためですが、未読だったので同じダイアモンド教授の前作『銃・病原菌・鉄』と『文明崩壊』も『昨日までの世界』の前にこの順で読んでおきましたので、出来る範囲で併せて論じると、結論として、ダイアモンド教授の専門分野であるニューギニアなどの伝統的社会の研究から現代社会のさまざまな問題を考察するのは、少なくとも決定的な結論を引き出すことは困難としかいいようがない一方で、当然ながら、それなりの意味があることは評価すべきです。肯定的な面と否定的な面とどちらに着目するかは読者次第なんでしょうが、現代社会の経済問題を解き明かし何らかの改善策を模索しようとするエコノミストにとっては、迂遠な印象を持ちましたが、示唆に富む議論で汲み取るべき部分は少なくないと肯定的に評価しています。もう少しちゃんと敷衍すると、伝統的社会の行動様式は別にして、その背景となる考え方は現代社会にも通ずるものがあると私は考えています。例えば、マルサス的な貧困を回避するために、いくつかの伝統的社会が取る嬰児殺害という行動は我々には何ら参考に値しないものの、その背景にある人口の急激な増加を抑制するべきであるという考え方は理解すべきではなかろうかと受け止めています。もちろん、21世紀を生きるサラリーマンの教養という意味では、読んでおいて損はない、というか、3冊とも大いに意味がある本です。
結論を先に書いてしまいましたので、以下は付け足しですが、第1に、伝統的社会におけるさまざまな問題への対処、すなわち、戦争、子育て、高齢化、危険への対応、健康、宗教、などについては、私の印象ですが、単純な現象、別の表現をすれば、人間というよりも動物に近い本能的な行動、例えば、危険への対応、健康などは本書がより参考になる気がする一方で、その反対の事項、例えば、宗教などについては逆の印象を持ちます。対になっているわけではありませんが、子育てと高齢化については前者の方が本書の得意分野といえます。第2に、ダイアモンド教授のこの3作については、『銃・病原菌・鉄』、『昨日までの世界』、『文明崩壊』の順で私は興味深く読みました。また、何らご参考までなんですが、『銃・病原菌・鉄』、『昨日までの世界』の倉骨博士の翻訳が、『文明崩壊』の楡井さんの訳よりも読みやすいと受け止めています。私から見て翻訳が一番分かりやすいのは本作『昨日までの世界』です。ですから、決してオススメしませんが、『文明崩壊』はパスすることも一案かもしれません。でも、『銃・病原菌・鉄』はこの3作の中ではオススメのリストのトップに位置します。第3に、部族の固有名詞はある程度まで理解できずに無視する傾向があるのは止むを得ませんが、場所の固有名詞は無視するとしても気候との関係で何らかの把握に努めるべきです。出来れば、地図帳なんぞが手近かにあればいいような気もします。

すべてが上下巻で、3冊というよりも計6冊を読み進まねばなりませんが、世間一般の評価なりによく出来た本ばかりです。多くの公立図書館に所蔵されていることと思いますので、ニューギニアや伝統的社会に何ら興味ない向きにも、読んでおいて損はない書物といえます。

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