川上未映子『愛の夢とか』(講談社) を読む
川上未映子『愛の夢とか』(講談社) を読みました。この作者の初めての短篇集だそうです。7編の短編から中編くらいの長さの作品が収録されています。まず、出版社の特設サイトから目次の画像を引用すると以下の通りです。
収録されている初めの方の作品は、この著者のデビュー作である『わたくし率 イン 歯ー、または世界』とか、『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』などのように、この作者独特の表現がありますが、最後の方の中編に近い長さの作品はよりジェネリックな表現を使っています。特に、私は最後の「十三月階段」がよかったです。そのひとつ前の「お花畑自身」はややブラックで、湊かなえの作品といっても通るような気もしないでもありません。なお、初出で出た文学雑誌はかなりバラけており、さらに、時期的に古い作品も含まれます。その点だけを取り上げると、昔の短編もいっしょに無理やり収録した、という趣がないでもないですし、例えば、2011年3月の震災について言及したりしなかったりするんですが、不思議とまとまりのある短篇集の作品に仕上がっています。表現力とともに、この作者独特の世界観が示されているためではないか、と私は受け止めています。ということで、従来からこのブログで表明している通り、まごうことなく私はこの作者のファンです。この短篇集で作者の新たな世界が開かれた気もします。
装丁は名久井直子さんで、上の画像に見る表紙のように、とても「乙女チック」なんですが、それほど内容は「乙女チック」ではないように感じました。私と同じく、この作者のファンであれば読んでおくべき1冊です。
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